削除請求とは?どういう場合に書き込みや投稿を削除できる?

1 削除請求とは?

削除請求とは、インターネット上の情報発信によって、何らかの権利が侵害されている場合に、その権利侵害状況を除去するために、当該情報の発信をやめるように求めることをいいます。

削除請求は、法的には差止請求の一種です。一言で差止請求といってもわかりづらいですが、たとえば、週刊誌の出版停止や看板の撤去などを求めることなど権利侵害行為をやめるように求めることが差止請求です。

2 どういう場合に削除請求できる?

(1)削除請求の要件

さきほど、削除請求は法的には差止請求の一種であることを記載しました。差止請求権については、著作権法や商標法などの一部を除いて法律の条文がなく、判例上認められている権利です。以下の判例をご覧ください。

最高裁昭和61年6月11日
人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉を違法に侵害された者は、損害賠償(民法七一〇条)又は名誉回復のための処分(同法七二三条)を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。けだし、名誉は生命、身体とともに極めて重大な保護法益であり、人格権としての名誉権は、物権の場合と同様に排他性を有する権利というべきであるからである。

以上の判例の通り、差止請求権の根拠は、人格権が侵害されていることにあります。そのため、削除請求をするには、人格権が違法に侵害されているという要件を満たす必要があります。そして、「違法に」侵害したかどうかの判断の際に、表現の自由との調整をします。情報発信行為は表現の自由(憲法21条)により保障されている権利なので、差止請求をする側の権利(名誉権など)と情報発信者側の権利(表現の自由)を比較しながらの判断が必要となるのです。

(2)差止請求をする側の権利

インターネット上の情報発信によって発生する権利侵害の代表的なものが名誉権侵害(名誉毀損)プライバシー権侵害侮辱行為の3つです。他にも、アイデンティティ権、氏名権、肖像権、平穏生活権、脅迫行為などその他の人格権侵害、営業権侵害、著作権侵害の場合に差止請求が可能となることがあります。以下では、代表的な3つ権利侵害について補足しておきます。

名誉権侵害(名誉毀損)

名誉権侵害を理由とする差止請求については、(1)でも引用した判例が次の通り述べています。

最高裁昭和61年6月11日
「その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ、有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから、かかる実体的要件を具備するときに限つて、例外的に事前差止めが許されるものというべきであ」る。

つまり、名誉毀損が認められる場合に、

①その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白である
②被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞がある

の2つの要件を満たすことにより、差止請求が可能となるのです。

なお、名誉毀損について、詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

民事上の名誉毀損とは? 慰謝料の金額はどれくらい?弁護士が詳しく解説します

プライバシー権侵害

プライバシー権侵害を理由とする差止請求については、まずプライバシー権の侵害が認められる必要があります。その要件は、①私事性、②秘匿性、③非公知性の3つです。詳しく知りたい方は下記の記事をご参照ください。

そして、発信した情報を差し止められた場合の投稿者の不利益と、情報発信による被害者の不利益を天秤に載せて比較して、差止請求を認めるかどうかが判断されます。

プライバシーとは?侵害されたら法律上なにができる?

侮辱行為

「バカ」「キチガイ」などの他人の名誉感情を害する発信については、度が過ぎたものについては人格権侵害が認められることがあります。もう少し正確にいうと、「侮辱行為の違法性が強度で、社会通念上許容される限度を超えた場合」(最高裁平成22年4月13日)に発信した情報の削除が認められます。

3 削除の範囲

削除請求ができるとして、削除を請求できる範囲はどんな範囲でしょうか。削除請求は表現の自由(憲法21条)で保障されている表現行為を抑制するものですので、必要最小限の範囲に限られます違法な部分だけを取り除くことができるなら、その違法な部分だけを削除できるということになります。

そのため、原則的にはWEBページ全体の削除であったり、SNSアカウントの削除などの全部の削除というのを請求することはできません。もっとも、たとえば、SNSのなりすましにより人格権侵害が生じているような場合に、アカウント全体を削除しなければ被害を回復できないようなときには、アカウント全体の削除請求が認められることもあります。

GoogleやYahooといった検索エンジンに対する削除請求が認められることもありますが、これについては最新の判例がありますのでご紹介しておきます。

最高裁平成31年1月31日
検索事業者による検索結果の提供行為の性質等を踏まえると、検索事業者が、ある者に関する条件による検索の求めに応じ、その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは、当該事実の性質及び内容、当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度、その者の社会的地位や影響力、上記記事等の目的や意義、上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化、上記記事等において当該事実を記載する必要性など、当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので、その結果、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。

つまり、

当該事実の性質及び内容
当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度
その者の社会的地位や影響力
記事等の目的や意義
記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化
記事等において当該事実を記載する必要性

を天秤にのせて比較して判断するのですが、その結果、当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索会社に対してURL等の情報を検索結果から削除するように求めることができるといっています。

しかしながら、この判例の事件に対する結論としては、以下の通り述べて削除を認めませんでした。

最高裁平成31年1月31日
児童買春をしたとの被疑事実に基づき逮捕されたという本件事実は,他人にみだりに知られたくない抗告人のプライバシーに属する事実であるものではあるが,児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており,社会的に強い非難の対象とされ,罰則をもって禁止されていることに照らし,今なお公共の利害に関する事項であるといえる。また,本件検索結果は抗告人の居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると,本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる。以上の諸事情に照らすと,抗告人が妻子と共に生活し,前記1(1)の罰金刑に処せられた後は一定期間犯罪を犯すことなく民間企業で稼働していることがうかがわれることなどの事情を考慮しても,本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。

この通り、検索エンジンに対する削除請求は結構厳しいということを知っておいていただければと思います。