著作物とは?著作権法の保護を受ける著作物の意味について解説します

1 著作権法の保護を受けるためには

絵を描いた、写真を撮った、曲を作った、小説を書いた…など、みなさんが制作した作品は著作権法の保護を受けるのでしょうか。実は、著作権法によってみなさんの作品が保護されるためには、みなさんの作品が著作権法にいうところの「著作物」にあたらなければなりません

では、著作物とはどういったものを指すのでしょうか。それは、著作権法2条1号に書かれています。確認してみましょう。

著作権法2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
1号 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

いかがでしょうか。思想…?創作的…?といった、わかったような、わからないような微妙な感覚に陥ったのではないでしょうか。

2 著作物にあたるには―「著作物」の要件

(1)条文の整理

先ほど見た条文を整理すると以下のようになります。

  • 思想または感情の表現であること
  • 表現に創作性があること
  • 外部に表示されていること
  • 表現が文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものであること

これらの要件をすべて満たす場合にみなさんの作品が著作物にあたるということなのです。③については、条文で直接触れられているわけではありません。しかし、心の内にとどまっている作品を保護するのは現実離れしていることや、「表現したもの」という条文の文言から、外に向けて表示していることが求められています。

さて、著作物にあたるための要件はお分かりになったと思います。とはいえ、この時点でみなさんの作品が著作物にあたるかどうかを判断することができるかといえば、そうでないこともあるでしょう。簡単に判断ができる場合と判断が難しい場合とがあります。判断が難しい場合にはひとつひとつの要件を紐解いていくほかありません。

あらかじめ著作物でないものをまとめておくと以下の通りとなります。

①事実やデータは著作物ではありません
②契約書や規約などの書式は原則として著作物ではありません
③アイデアは著作物ではありません
④自然科学上の法則や学説(思想)は著作物ではありません
⑤発見や仮説、自然科学上の知見は著作物ではありません
⑥数学的解法は著作物ではありません
⑦ありふれたものは著作物ではありません
⑧他に適切な表現方法がないようなものは著作物性が否定されます

(2)思想または感情の表現であること

まず、一つ目の要件です。「思想または感情の表現」といっても難しいですが、この要件は、人間の精神活動の結果として生み出されたものであることを要求していると理解してください。

事実やデータは著作物ではない

単なる事実やデータの羅列に過ぎないものは「思想または感情の表現であること」という要件を満たさないため著作物ではありません。事実は思想や感情ではありませんし、データの羅列についても事実を並べたものですので思想や感情ではありません。そのため、たとえば、次のような表現には著作物性が認められません。

  • 200X年X月X日の天候は晴れだった。
  • 江戸幕府は1603年に創設された。
  • 201X年の宅建試験の合格者数は〇〇〇〇人だった。
  • アメリカ同時多発テロ事件により〇〇〇〇人の死傷者がでた。

裁判例でも、以下の通り述べられています。データについて、著作物性を否定した裁判例です。

名古屋地裁平成12年10月18日
本件データは、自動車部品メーカー及びカーエレクトロニクス部品メーカー等の会社名、納入先の自動車メーカー別の自動車部品の調達量及び納入量、シェア割合等の調達状況や相互関係のデータをまとめたものであって、そこに記載された各データは、客観的な事実ないし事象そのものであり、思想又は感情が表現されたものではないことは明らかである。
原告は、本件データは原告が独自に取材、調査し、それを総合的に判断し研究した結果であり、そこには原告の思想が創作的に表現されていると主張する。しかし、原告が主張していることは、原告の一定の理念あるいは思想のもとに本件データの集積行為が行われたということにすぎないのであって、集積された客観的データ自体が思想性を帯びることはないから、原告の右主張は失当というべきである。

しかしながら、事実やデータに関する表現物であっても、思想または感情を表現したものであるとされる余地があります。たとえば、以下の2つの裁判例をご覧ください。

東京地裁平成10年11月27日
歴史的事実に関する記述であっても、数多く存在する基礎資料からどのような事実を取捨選択するか、また、どのような視点で、どのように表現するかについては、様々な方法があり得るのであるから、歴史的事実に関して叙述された作品が、思想又は感情の創作的に表現したものではないといえないことは明らかである。また、翻訳や要約の対象が、裁判記録・新聞記事・契約書であったとしても、筆者の個性を発揮した創作的な表現になり得るのであり、個性的な表現の余地がある。さらに、翻訳・紹介・引用・要約については、翻訳者ないし筆者の見識に基づいて、どのように表現するか等に創意工夫を伴うものであって、個性的な表現の余地がある。
したがって、原告著作物は、表現上の創意、工夫の発揮される余地のある部分については、二次的著作物として、著作権法上の保護の対象となるというべきである。
知財高裁平成17年5月25日
実験結果等のデータをグラフとして表現する場合,折れ線グラフとするか曲線グラフとするか棒グラフとするか,グラフの単位をどのようにとるか,データの一部を省略するか否かなど,同一のデータに基づくグラフであっても一様でない表現が可能であることは確かである。
しかしながら,実験結果等のデータ自体は,事実又はアイディアであって,著作物ではない以上,そのようなデータを一般的な手法に基づき表現したのみのグラフは,多少の表現の幅はあり得るものであっても,なお,著作物としての創作性を有しないものと解すべきである。なぜなら,上記のようなグラフまでを著作物として保護することになれば,事実又はアイディアについては万人の共通財産として著作権法上の自由な利用が許されるべきであるとの趣旨に反する結果となるからである。

事実やデータであっても、そこに創作の余地があるものについては、思想または感情を表現したものであるとして著作物性が認められることがあるのです。

アイデアは著作物ではない

アイデア自体は思想または感情の「表現」ではなく、思想そのものなので、「思想または感情の表現」という要件を満たしません。

東京地裁平成11年12月21日
原告漫画のキャラクターと被告イラストのキャラクターは、本を擬人化したという点は共通しているが、それ自体はアイデアであって、著作権法で保護されるものではない。
なお、数学的解法についても、それはアイデアにすぎないという理由により、著作物性が否定されています。

(2)表現に創作性があること

次に、二つ目の要件です。「表現に創作性があること」という要件ですが、これは、著作者の個性があらわれていることを必要とする要件です。他人の作品の単なる模倣や盗用であってはいけないという趣旨ですので、素人や幼児の作ったものでも創作性が認められることがあります。

以下の裁判例は、創作性について述べています。

東京地裁平成11年1月29日
著作権法の保護の対象となる著作物については、思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である。ところで、創作的に表現したものというためには、当該作品が、厳密な意味で、独創性の発揮されたものであることは必要でないが、作成者の何らかの個性の表現されたものであることが必要である。文章表現に係る作品において、ごく短いものや表現形式に制約があり、他の表現が想定できない場合や、表現が平凡、かつありふれたものである場合には、筆者の個性が現われていないものとして、創作的な表現であると解することはできない。

表現が平凡かつありふれたものである場合には、創作性が否定されると述べています。

契約書や規約などの書式は原則として著作物ではない

契約書や規約などの書式は、あらかじめ定型化された内容を通常の方法で表現したものが多く、こうした契約書などはありふれた表現として創作性の要件を満たさないため著作物ではありません。ただし、契約書などの内容によっては、創作性が認められることもあります。次の裁判例をご覧ください。

東京地判平成26年7月30日
一般に,修理規約とは,修理受注者が,修理を受注するに際し,あらかじめ修理依頼者との間で取り決めておきたいと考える事項を「規約」,すなわち条文や箇条書きのような形式で文章化したものと考えられるところ,規約としての性質上,取り決める事項は,ある程度一般化,定型化されたものであって,これを表現しようとすれば,一般的な表現,定型的な表現になることが多いと解される。このため,その表現方法はおのずと限られたものとなるというべきであって,通常の規約であれば,ありふれた表現として著作物性は否定される場合が多いと考えられる。
しかしながら,規約であることから,当然に著作物性がないと断ずることは相当ではなく,その規約の表現に全体として作成者の個性が表れているような特別な場合には,当該規約全体について,これを創作的な表現と認め,著作物として保護すべき場合もあり得るものと解するのが相当というべきである。
これを本件についてみるに,原告規約文言は,疑義が生じないよう同一の事項を多面的な角度から繰り返し記述するなどしている点(例えば,腐食や損壊の場合に保証できないことがあることを重ねて規定した箇所がみられる原告規約文言4と同7,浸水の場合には有償修理となることを重ねて規定した箇所が見られる原告規約文言5の1の部分と同54,修理に当たっては時計の誤差を日差±15秒以内を基準とするが,±15秒以内にならない場合もあり,その場合も責任を負わないことについて重ねて規定した箇所がみられる原告規約文言17と同44など)において,原告の個性が表れていると認められ,その限りで特徴的な表現がされているというべきであるから,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号),すなわち著作物と認めるのが相当というべきである。

規約であっても、「その規約の表現に全体として作成者の個性があらわれているような特別な場合には」思想または感情の表現であることという要件を満たすとしつつ、問題となった規約についてもこの要件を満たすと述べています。

自然科学上の法則や学説は著作物ではない
自然科学上の法則はその性質上みんなの自由利用が許されるべきものです。特定の個人が創作したものとすべきではありません。
大阪地裁昭和54年9月25日
次に、自然科学に関する論文中、単に自然科学上の個々の法則を説明した一部分については、同一の事柄でも種々の表現方法のある一般の文芸作品とは異なり、その性質上その表現形式(方法)において、個性に乏しく普遍性のあるものが多いから、当該個々の法則の説明方法が特に、著作者の個性に基づく創作性のあるものと認められる場合に限つて著作者人格権・著作財産権保護の対象になる……。
なお、発見や仮説、自然科学上の知見についても、自然科学上の法則と同様の理由で著作物性が否定されています。
他に適切な表現方法がないようなものは著作物性が否定される
他に適切な表現方法がないようなものについて著作権の保護を与えてしまうと、思想やアイデアの独占を許すことになっていまいます。他に適切な表現方法がないようなものについては、特定の個人が創作したものということができません。

東京地裁平成6年4月25日
本件定義は、原告が長年の調査研究によって到達した、城の学問的研究のための基礎としての城の概念の不可欠の特性を簡潔に言語で記述したものであり、原告の学問的思想そのものと認められる。そして、本件定義のような簡潔な学問的定義では、城の概念の不可欠の特性を表す文言は、思想に対応するものとして厳密に選択採用されており、原告の学問的思想と同じ思想に立つ限り同一又は類似の文言を採用して記述する外はなく、全く別の文言を採用すれば、別の学問的思想による定義になってしまうものと解される。また、本件定義の文の構造や特性を表す個々の文言自体から見た表現形式は、この種の学問的定義の文の構造や、先行する城の定義や説明に使用された文言と大差はないから、本件定義の表現形式に創作性は認められず、もし本件定義に創作性があるとすれば、何をもって城の概念の不可欠の特性として城の定義に採用するかという学問的思想そのものにあるものと認められる。
ところで、著作権法が著作権の対象である著作物の意義について「思想又は感情を創作的に表現したものであって、……」と規定しているのは、思想又は感情そのものは著作物ではなく、その創作的な表現形式が著作物として著作権法による保護の対象であることを明らかにしたものと解するのが相当であるところ、右に判断したところによれば、本件定義は原告の学問的思想そのものであって、その表現形式に創作性は認められないのであるから、本件定義を著作物と認めることはできない。
学問的思想としての本件定義は、それが新規なものであれば、学術研究の分野において、いわゆるプライオリティを有するものとして慣行に従って尊重されることがあるのは別として、これを著作権の対象となる著作物として著作権者に専有させることは著作権法の予定したところではない。

(3)外部に表示されていること

さらに、三つ目の要件です。「外部に表示されていること」という要件ですが、これは外部に表示されてはじめて著作物になることを意味します。あくまで、内心で思っている段階では著作物とはありません。

外部に表示されているかどうかが争いになった裁判例があります。

大阪地裁平成12年3月30日
原告は、積算くんを用いて積算を行った後の出力(印刷)結果である、部屋別計算表、積算集計表、部屋別集計表及び工種項目別の部屋別集計表を原告の著作物であると主張する。
しかしながら、証拠(甲3)によれば、右各表のうち大部分は、積算くんを使用する者が、あるデータを入力して初めて印刷されるものであって、積算くんの著作者は、右各表のような表現で印刷できるような機能を積算くんに具備させているにすぎず、いまだ積算くんの著作者の表現行為があったとは認められない。
……以上より、原告が著作物と主張する、積算くんを用いて積算を行った後の出力(印刷)結果である、部屋別計算表、積算集計表、部屋別集計表及び工種項目別の部屋別集計表は、いずれも著作権法上保護される著作物であるとは認められないから、その余の争点について検討するまでもなく、これらが著作物であることを理由とする原告の請求は理由がない。
アプリケーションソフト積算くんの出力結果について、外部に表示されていることを否定しました。

(4)表現が文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものであること

最後に、四つ目の要件です。「表現が文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものであること」という要件ですが、技術的、実用的作品を除外するための要件です。

この要件が問題となり、著作物性が認められたものとしては以下のものがあります。

昆虫挿し絵の原画(東京地判昭和36年10月25日)
空港案内図(東京地判平成17年5月12日)
大阪市地下鉄路線案内図(大阪地判平成21年2月24日)

他方で、この要件が問題となり、著作物性が認められなかったものとしては以下のものがあります。

オリンピックの五輪マーク(東京地裁昭和39年9月25日)
ホームページアドレスの表記(大阪地裁平成11年6月17日)
個人住宅の建築設計図面(東京地裁平成14年12月19日)

3 著作物の具体例

ここまで著作物の要件をみてきましたが、やはりなかなか判断をするのは難しいという印象を受けたのではないでしょうか。そこで、著作権法は、著作物について例示をしています。

著作権法10条1項 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物

1から9号までに例示されたものの多くは著作物にあたります。もう少し詳しくみておきましょう。

言語の著作物

言語の著作物は、小説、脚本、論文などの文書による著作物と講演、講義などの口述による著作物の2つに分かれます。

音楽の著作物

歌詞や楽曲が音楽の著作物となります。

舞踊または無言劇の著作物

踊りそのものは実演であって、著作物ではありません。踊りの振付けやダンスのステップが著作物にあたります。ただし、社交ダンスのステップに著作物性が認められるには強い独創性が必要となります。

美術の著作物

美術の著作物には、絵画、版画などの平面的な著作物と、彫刻などの立体的な著作物の2つがあります。漫画や劇画は美術の著作物にあたります。家具、衣装、道具、機械、器具のデザインについては、応用美術とされ、著作物にはあたらず、意匠法で保護されるのが原則です。

建築の著作物

建築された建物自体が著作物となります。ただし、一般住宅は建築の著作物にあたらないことが多いです。

図形の著作物

地図は、山地や河川がそこにあるという事実を示すものですが、情報の取捨選択や表示方法に創作性が認められることにより、著作物となります。図形については、設計図に著作物性が認められることがあります。

映画の著作物

映画、テレビドラマ、テレビゲームなどがDVDなどの物に固定されている場合に映画の著作物となります。

写真の著作物

創意工夫のある写真は著作物にあたります。

プログラムの著作物

ソースプログラムは著作物にあたります。

いずれにせよ、各号にあたる場合でも2で述べた著作物の要件を吟味する必要がありますので、著作権の侵害なのではないかとお考えの方は、一度、弁護士にご相談されることをオススメします。