Q&A フィクション作品は名誉毀損になりますか?

1 解説を読む

フィクション作品は名誉毀損になりますか?
名誉毀損になることがあります。
フィクションとは、想像によって架空の筋や事柄をつくることを意味しますが、フィクション作品においては実在の人物がモデルとなっていることがあります。そのような場合には、そのモデルとされた人物について、プライバシーや名誉毀損の問題になることがあります
フィクション作品の名誉毀損では、フィクションとして登場したキャラクターや起こった事件が、モデルとされた人物と結び付けることができるのかどうかという点が問題となります。これは同定可能性の問題といわれております。次の裁判例をご覧ください。
大阪高裁平成20年10月31日
特定の書籍の一定の記述が他人の名誉を毀損するか否かを判断するに当たり、当該記述が当該他人の客観的な社会的評価を低下させるものであるか否かが問題になるのは、先に判示した法的基準に照らして明らかである。そして、当該記述が当該他人の客観的な社会的評価を低下させるためには、当該記述が当該他人若しくはこれを含む一定の人的集団等(以下、便宜上、この項において「当該他人」というに止める。)とが結びつくことが必要であることもいうまでもない。
もとより、その記述が、ある事件を基礎に記載されているものの、具体的事件内容が文学的に昇華されるなどして、当該事件と当該他人とを結びつけることが困難な場合には、名誉毀損を論ずることはできないけれども、問題となる記述が、ある事件をそのままに題材とし、当該他人の氏名等の特定情報を明示していなかったとしても、当該事件がかつて大きく報道され、その後の入手可能な文献等にも、氏名等の特定情報が記載されているような場合、その報道に接し若しくは文献等を読み記憶を止めている者やその記述に接して改めて当該文献等を読んだ者などにとってみれば、当該記述と当該他人とが結びつけることは困難であると言い難い。したがって、後者の場合においては、当該記述は、他の公開された情報と結びつくことにより、当該他人の客観的な社会的評価を低下させることは十分にあり得ることである。
モデルとされた事件について記憶している人が問題となった書籍を読んだ場合に、書籍内の記述とモデルとなった事件に登場した人物とを結びつけることができるかを問題としています。つまり、一般読者の認識に従ってモデルとされた人物を特定できるか、それとも架空のキャラクターに過ぎないのかという判断がされるのです。
また、一般読者の基準に従って、その内容が著者の創作(=虚構)であると受け取られるのでれば、名誉毀損とはなりません。次の裁判例をご覧ください。
東京地裁平成7年5月19日
実在の人物を素材としており、登場人物が誰を素材として描かれたものであるかを特定できるような小説のうち、いわゆる暴露小説、実録小説のように、実在する、あるいは実在した特定の人物の私行を探り出し、これを公開しようとする意図の下に書かれたものや、小説の筋又は骨格が終始実在人物の行動や性格に沿って展開され、しかも、作者が、一般読者をして実在人物を想定し得ないよう、あるいは実在人物を想定しても実在人物とは異なる人格であると認識し得るような配慮をすることなく、実在の人物に依拠し、その知名度等を利用する場合(いわゆる伝記小説、ノンフィクション小説はこれに属する。)には、一般読者が容易に実在人物を特定でき、その人物の行動や性格を如実に描いた物語として受け取ることが明らかであるから、その小説に実在人物の名誉を毀損し、あるいはそのプライバシーを侵害するような描写がある限り、直ちに不法行為としての名誉毀損ないしプライバシー侵害の問題を生ずることは明らかである。
しかし、実在の人物を素材としており、登場人物が誰を素材として描かれたものであるかが一応特定し得るような小説であっても、実在人物の行動や性格が作者の内面における芸術的創造過程においてデフォルム(変容)され、それが芸術的に表現された結果、一般読者をして作中人物が実在人物とは全く異なる人格であると認識させるに至っている場合はもとより、右の程度に至っていなくても、実在人物の行動や性格が小説の主題に沿って取捨選択ないしは変容されて、事実とは意味や価値を異にするものとして作品中に表現され、あるいは実在しない想像上の人物が設定されてその人物との絡みの中で主題が展開されるなど、一般読者をして小説全体が作者の芸術的想像力の生み出した創作であって虚構(フィクション)であると受け取らせるに至っているような場合には、当該小説は、実在人物に対する名誉毀損あるいはプライバシー侵害の問題は生じないと解するのが当然である。けだし、右のような場合には、一般読者は、作中人物と実在人物との同一性についてさほどの注意を払わずに読み進むのが通常であり、実在人物の行動ないし性格がそのまま叙述されていて、それが真実であると受け取るような読み方をすることはないと考えられるからである。
ただし、事実と創作が織り交ざっている場合には、事実部分と創作部分の区別がつかないことがありますので、それによりモデルとされた人物の社会的評価が下がり、よって名誉毀損となることがあります
さて、ここまで述べてきたことをまとめると、以下の通りです。
  • フィクションとして登場したキャラクターとモデルとなった人物とが結びつく場合に名誉毀損となりうる
  • 一般読者が虚構であると受け取る場合には、名誉毀損にはならない
  • 事実と虚構が混ざっている場合には名誉毀損となることがある

名誉毀損についてもっと詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

民事上の名誉毀損とは? 慰謝料の金額はどれくらい?弁護士が詳しく解説します