採用や内定についての労働法の基礎知識を解説します

1 会社には採用の自由がある

会社には採用の自由があります。すなわち、会社は、どのような募集方法で、どれだけの人数を、どのような基準で誰を選択して採用するかについて、原則として自由に決定できるのです。このことは、判例でも認められています。

最高裁昭和48年12月12日
憲法は、思想、信条の自由や法の下の平等を保障すると同時に、他方、二二条、二九条等において、財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由をも基本的人権として保障している。それゆえ、企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであつて、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできないのである。

もっとも、判例がいうように「法律その他による特別の制限」を受けることがあります。たとえば、労働組合法は、労働組合に加入しないことや労働組合を脱退することを採用条件とすることは不当労働行為として禁止しています(労働組合法7条1号後段)。また、男女雇用機会均等法は、性別を理由とする募集・採用差別を禁止しています(男女雇用機会均等法5条)。

2 内定は法律的にはどう扱われている?

(1)採用内定の法的性質

会社への採用が決定して、正式に入社するまでの間を採用内定と呼んでいます。ひとことで内定といっても、採用の実態が会社ごとにまちまちですので、その法的な性質については事案ごとに検討する必要があります。新規学卒者の一般的な採用プロセスの場合は、次の判例の通り、採用内定時点で労働契約が成立していると認定されることになるでしょう。

最高裁昭和54年7月20日
以上の事実関係のもとにおいて、本件採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかつたことを考慮するとき、上告人からの募集(申込みの誘引)に対し、被上告人が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する上告人からの採用内定通知は、右申込みに対する承諾であつて、被上告人の本件誓約書の提出とあいまつて、これにより、被上告人と上告人との間に、被上告人の就労の始期を昭和四四年大学卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の五項目の採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解するのを相当とした原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。

つまり、解約権の留保付きではあるものの、採用内定通知によって労働契約が成立していると述べたのです。

(2)内定期間中の研修に参加義務はある?

内定期間中には、研修の参加やレポートの提出を求められることがあります。これらの要求に応じる義務があるかどうかについても、結論を出すためには、事案ごとに当事者間でどのような合意があったのかという契約の解釈をする必要があります。当事者間でそのような合意があれば、内定者は、学業に支障が及ばないなどの合理的な範囲で、これらの要求に応じる義務があることになります。もっとも、基本的には、入社日までは出社を義務づけないことのほうが多いと思いますので、参加義務があるとされるケースは少ないと思います。

3 内定取消しはどんな場合に違法になる?

2(1)で触れた採用内定の法的性質にもよりますが、新規学卒者の一般的な採用プロセスを前提に、採用内定時点で解約権留保付きの労働契約が成立したといえる場合には、「採用内定の取消しが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合」(最高裁昭和54年7月20日)に内定取消しが適法となります。逆に言えば、客観的に合理的とはいえない場合や、社会通念上相当とはいえない場合には、内定取消しが違法となるのです。以下では、違法となりやすいケースと適法となりやすいケースについて挙げておきます。

違法となりやすいケース

  • 客観的な裏付けを欠く悪いウワサを理由とする内定取消し
  • 採用内定時に既に判明していた理由での内定取消し
  • 経営状態の悪化を理由とする内定取消し

適法となりやすいケース

  • 卒業できなかったことを理由とする内定取消し
  • 虚偽申告が判明したことを理由とする内定取消し
  • 健康状態の悪化を理由とする内定取消し
  • 非違行為を理由とする内定取消し

4 内定取消しを争うには?

会社の恣意的な内定取消しについては、大きく分けて2つの争い方があります。

1つ目は、労働者としての地位の確認を求める形で争うというものです。内定取消しというひどい目にあったけども、それでもその会社に入社して働きたいという人がこの方法を選択することになります。

2つ目は、損害賠償請求という形で争うものです。ひどい目にあったのでその会社への入社はやめて、他の会社に再就職をする場合にはこの方法を選択することになります。

いずれの方法によるとしても、会社との争いになった場合には、一人で戦い抜くことは困難を極めます。不当な内定取消しにあったとお感じの方は、一度、弁護士に相談してくださいね。