【ワンピース】「宝払い」は法律的に有効?【第1話】

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1 問題のシーン

小さな港町にて、村の少年モンキー・D・ルフィは、町に滞在していた海賊とともに村の酒場にいました。そこで、ルフィは、今回問題となる発言をしました。

(出典:「ONEPIECE」尾田栄一郎・集英社・第1巻15頁より)

酒場の店主マキノ「ルフィ あなたも何か 食べてく?」

ルフィ「“宝払い”で食う」

この「宝払い」が現在の日本の法律ではどのような扱いになるのかを解説します。

2 「宝払い」ってどういう意味?

そもそも、宝払いというのはどういう意味なのでしょうか。これに関連して、ルフィは、次のような発言をしています。

「ちゃんと おれは 海賊になって 宝を見つけたら金を払いに来るんだ!!」

つまり、宝払いというのは、宝の発見を条件に支払いをするという後払い方式の支払方法だということがわかります。

3 飲食料金の支払いと契約内容

さきほどみたように、宝払いは支払方法に関する合意です。ということは、宝払いの合意の際には支払いの対象となる何かがあるはずです。問題のシーンにおいては、マキノとルフィの間で、ルフィが酒場で飲食をするというやりとりがありました。

日本の法律上、飲食店において飲食をするという合意は売買契約(民法555条)と請負契約(民法632条)の混合契約であるとされます。

民法第555条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
民法第632条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

要は、飲食をするという合意は、料理を完成させて、それを提供することに対して対価を支払うという内容の契約なのです。

4 宝払いは有効?

こうした契約には、条件を付けることができます。条件というのは、法律行為の効力を発生するか否か不確実な事実にかからせる特約をいいます。もう少し簡単にいえば、条件を達成した場合に契約などの効力が発生したり、消滅するような約束をいいます。

条件には停止条件(民法127条1項)と解除条件(民法127条2項)とがあります。

民法第127条第1項 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
民法第127条第2項 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。

停止条件とは条件を達成した場合に契約などの効力が発生するものをいいます。他方で、解除条件とは条件を達成した場合に契約などの効力が消滅するものをいいます。

今回は、飲食料金の支払いを宝の発見まで待ってもらっている状態、すなわち、支払いをするかどうかを「宝の発見」という不確実な事由にかからせているという停止条件の事例にあたるといえそうです。なお、このような契約も有効です。

細かいことをいえば、未成年者だと思われるルフィがする契約は取消可能です(民法5条1項・2項、120条1項)。取り消されるまでは契約は一応有効として取り扱われます。

5 似ている事例との比較検討―出世払い

現在の日本において、宝払いと似た事例としては、「出世払い」があります。会社や団体で出世できるかどうかは不確実ですが、支払いをそうした不確実な事実にかからせています。

出世払いについては、停止条件か不確定期限のいずれかであると考えられています。既に出世の可能性がない人が出世払いを選択する場合には、それが停止条件ではなく不確定期限だと解釈されることで、その場での支払義務を負うことがあります。

大審院大正4年3月24日【要旨】
(出世払いの債務につき)後日到来不確定の事実でも、それが債務の効力発生を制限するものでなく、その到来の時既に発生した債務の履行を為すべき趣旨であれば、それは不確定期限を付したものである。

期限というのは、法律行為の効力の発生,消滅または債務の履行を将来到来することが確実な事実にかからせる特約をいいます。確定期限と不確定期限とがありますが、不確定期限とは、「次に雨が降ったとき」など、その時期は不明だけど将来必ず到来する事実に契約などの効力を先送りにすることを意味します。

ワンピースの世界においても、海賊になり宝探しをすることはとても危険で苛酷なことだとされています。仮に、宝を発見できたとしても、また島まで戻ってくることができるとは限りません。ここでは、完全成果方式の会社における出世くらいの可能性の低さと見積もることができるのではないでしょうか。このように考えた場合、宝払いは不確定期限だと考えられます。

6 考察と結論

今回、ルフィとマキノとの間で、「将来宝を見つけたらお金を払う。でも宝を見つけられなかったらお金を払わない。」という趣旨の合意があると考えれば、停止条件となります。他方で、同人間で「将来宝を見つけたらそのときにお金を払う。でも宝を見つけられないことが明らかになったらそのときすぐにお金を払う。」という趣旨の合意があると考えれば、不確定期限となります。

今回の宝払いについてはどう考えるべきでしょうか。次のシーンをご覧ください。

(出典:「ONEPIECE」尾田栄一郎・集英社・第1巻15頁より)

マキノの「ふふふ!期待して待ってるわ」という発言は、本心から期待を抱いている発言にはみえず、店主であり、かつ、大人であるマキノのリップサービスにみえます。そうすると、マキノとしては、宝を見つけるのは困難であることを前提に、もし宝を見つけて支払ってくれたらラッキーという程度の気持ちでルフィに食べ物を提供したといえるのではないでしょうか。そうすると、今回の宝払いは停止条件とみることができます。

というわけで、宝払いは停止条件として有効で、ルフィは宝の発見を条件にマキノに対して支払い義務を負うことになるというのが結論です。