自己破産とは? 自己破産をするとどうなるの? 弁護士がわかりやすく解説します

1 自己破産とは?

自己破産とは、支払不能状態にある人が裁判所を通じて借金の全部の支払いを免除してもらう手続きです。原則としてすべての借金がなくなりますが、自分が持っている高価な財産を手放す必要があります。

支払不能とは、正確には、「債務者が弁済能力の欠乏のために即時に弁済すべき債務を一般的かつ継続的に弁済することができない客観的状態」をいいます。難しいですね。簡単にいえば、借金を支払っていくための資金不足が続いている状態のことです。このような支払不能状態にある人が、裁判所に対して破産を申し立てて、裁判所から免責許可決定がでれば、借金から解放されます。

 免責 借金などの義務がなくなることです。

2 自己破産するとどうなる?

(1)借金がなくなる

自己破産をすると、原則としてすべての借金がなくなります。返済の責任を免れて新たにゼロからのスタートが可能になるのです。

ただし、注意が必要なのは、免責されないものもあるということです。以下のものについては、自己破産で免責が認められてもなお支払わないといけません。

租税等の請求権

住民税や自動車税などの税金、国民健康保険料や国民年金保険料などの社会保険料については、自己破産をしても免除されません。

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

他人をだまして財産を奪ったり、他人にケガを負わせたりした場合には民法上の不法行為(709条)とされることがありますが、その場合には、被害者に対して損害賠償責任(=お金を支払う義務)が発生します。このような不法行為を「悪意」で、つまり積極的な加害の意思を持っておこなった際に生じる損害賠償責任については、自己破産をしても免除されません。

家族間の請求権

子どもに対する養育費や夫婦間の生活費などの家族の間の請求権については、自己破産をしても免除されません。

雇用主が労働者に払うべき給与等の請求権

個人で事業をおこなっている場合に、その従業員への未払いの給与や従業員からの預かり金については、自己破産をしても免除されません。

破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権

自己破産の手続きの中で、債権者の氏名・住所・借金の額などを記載した債権者名簿を裁判所に提出しなければなりませんが、その債権者名簿に記載されていない債権者に対する借金については自己破産をしても免除されません。

 債権者 金を貸した人や損害賠償の権利を持っている人など、特定の人に対して権利を主張できる人のことです。

罰金等の請求権

刑事裁判を通じて科される刑罰としての罰金・科料や行政から課される過料については、自己破産をしても免除されません。

(2)財産を手放すことに

自己破産をすると、原則として財産を手放すことになります。ただし、手放す必要がない財産もありますので、以下に一例を示します。

手放す必要のない財産(一例)
・99万円までの現金

・残高が20万円以下の預貯金

・見込額が20万円以下の生命保険解約返戻金

・買取価格が20万円以下の自動車

・居住用家屋の敷金債権

・支払見込額が160万円以下の退職金債権

・家財道具

これを見て「財産を隠して自己破産しよっかな…」という考えが浮かんだ人もいるかもしれません。財産を隠すのは絶対におやめください。自己破産の手続きで財産を隠すことは詐欺破産罪(破産法265条)という犯罪行為です。借金がなくなるどころか、刑務所に入ることになりかねません。

(3)「この人にだけは返済したい!」ができない

たとえば、消費者金融だけではなく友人からもお金を借りていて、自己破産をする前に「友人にだけはお金を返したい」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それをすると免責不許可となってしまいます。自己破産の手続きでは、債権者を平等に扱わないといけないとされております。特定の人にだけ返済をするということは認められないのです。

(4)ブラックリストへの掲載

自己破産をすると、信用機関に事故情報が登録されます。いわゆるブラックリストに掲載されるのです。その結果、借り入れができない、クレジットカードの審査に通らない、住宅や車のローンが利用できない、携帯電話の購入の際に分割払いを選べないなどの制限が生じます。基本的に現金での生活になるというイメージですね。5年から10年経つと事故情報が抹消されますので、再びローンを組んだり、クレジットカードの審査に通ることができるようになります。ちなみに、日本の信用機関は①全国銀行個人信用情報センター、②株式会社日本信用情報機構、③株式会社 シー・アイ・シーの3つです。

(5)官報への掲載

自己破産をすると、官報に氏名や住所が掲載されます。官報とは、政府が発行する新聞をいいます。破産者の氏名や住所がこの新聞に載ることで、周りの人に破産をしたことを知られる可能性がないとは言い切れません。しかし、普段から官報を読んでいる人は少ないので、周りの人に破産をしたことを知られる可能性は限りなく低いといえるでしょう。

なお、2019年3月に、「破産者マップ」という全国の自己破産者を地図上に表示するサイトが公開され話題になりました。このサイトは名誉やプライバシーなどの法的な問題点が多く、公開から4日後に閉鎖するに至りました。

(6)職業が制限される

自己破産の申立てをすると、裁判所の免責許可がおりて借金がなくなるまでは、就ける仕事について制限を受けることになります。この間に就けない仕事としては、たとえば、以下の職業があります。

士業関係弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、司法書士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、行政書士、通関士、宅地建物取引士、中小企業診断士
公務員関係公証人、人事院の人事官、都道府県公安委員会、公正取引委員会、教育委員会
一定の業種貸金業者の登録者、質屋を営む者、旅行取扱の登録者や管理者、生命保険募集人、警備業者の責任者や警備員、建設業を営む者、下水処理施設維持管理業者、風俗業管理者、廃棄物処理業者、調教師や騎手、測量業者
企業や団体等の役員商工会議所、金融商品取引業、信用金庫、日本銀行、労働派遣業、割賦あっせん業者
民法上の制限代理人、後見人、後見監督人、保佐人、補助人、遺言執行者

現在、就けない仕事についている場合は、破産の申立てをする際にいったん仕事をやめなければなりません。その後、免責許可または免責不許可の決定が出たときには、再び上記の職業に就けるようになります。

3 自己破産の流れ

(1)おおまかな流れ

自己破産のおおまかな流れは以下の通りです。

裁判所に対して、「破産をしたい」との申立てをしなければなりません。通常は、同時に免責許可の申立てもします。
破産手開始決定の申立てを見た裁判所が破産手続きを開始します。
裁判所に呼び出されて、裁判官から質問を受けます。
これまでの手続きの結果を踏まえて、裁判所が免責許可決定か免責不許可決定をおこないます。

※高価な財産をお持ちの方の手続きは別です。

(2)破産の申立て

破産手続きは、破産手続開始の申立書を裁判所に提出するところからはじまります。申立書は「破産手続開始・免責許可申立書」という形式で免責許可の申立書もセットになっているひな形が多いので、それを使用すれば免責許可の申立ても一緒にできます。そのほか、たくさんの添付書類が必要となります。以下、一例を示します。

添付書類(一例)
・住民票

・戸籍謄本

・陳述書

・債権者一覧表

・財産目録

・家計状況の報告書

・給与明細コピー

・ローン残高証明書

ここに記載したもの以外でも、たとえば、不動産の所有している場合には不動産登記事項証明書が必要だったりと、人によって必要な書類が変わってきます。自己破産の申立てだけでも実は結構大変なのです。

(3)破産手続開始決定・同時廃止決定

無事、自己破産の申立てを終えると、後日に審尋といって裁判所で裁判官から破産するに至った経緯などの質問を受けることがあります。そして、裁判官が破産申立書の内容や審尋の結果を踏まえて、支払不能と判断すれば、破産手続開始決定をおこないます。支払不能とは、借金を支払っていくための資金不足が続いている状態のことでしたね。破産手続開始決定の際には、身分証明書と認印をもって破産手続開始の決定書を受け取りに行かなければなりません。

(4)免責審尋

裁判官が債権者に対して意見を聞いたり、破産者を裁判所に呼んで事情を聴いたりします。破産申立書に間違いがないかの確認にとどまり、数分で終わることも多いです。しかし、免責をするかどうかの判断材料になりますので、「適当でいいや」などと安易に考えてはいけません。

(5)免責許可・不許可の決定

免責が不許可となる事情がなければ、免責許可決定がおこなわれることになります。また、免責が不許可となる事情があったとしても、免責許可決定がおこなわれることもあります。免責が不許可となる事情はたくさんありますので、問題となりやすい事情をあげておきます。

ギャンブルや浪費

パチンコ・パチスロ・競馬・競艇・競輪などのギャンブルによって借金をした場合、株取引・FX・先物取引・仮想通貨取引などの投機によって借金をした場合、趣味やキャバクラや風俗などで浪費してしまった場合は、免責が不許可となる事情があります。

破産手続を妨害した

財産を隠したり壊したりした場合、特定の人にだけ返済をした場合、破産手続で虚偽の説明をした場合は、免責が不許可となる事情があります。

破産手続前後の借り入れ

破産手続きの申立日の1年前から破産手続開始決定の日までの間に、すでに借金の返済ができないことを知りながら、ウソをついてお金を借りたり、クレジットカードで物を買ったりした場合は、免責が不許可となる事情があります。

過去の自己破産

過去7年以内に自己破産で免責許可の決定を受けた場合は、免責が不許可となる事情があります。

4 自己破産を検討中のあなたに伝えたいこと

借金を理由に自殺を選ぶ人はいますが、自己破産をしたことを理由に自殺をする人はいません。自己破産のデメリットは今後の生活が若干不便になる程度のものです。借金で苦しむくらいなら、一度、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。