いじめって犯罪? いじめ防止対策推進法などいじめに関連する法律を弁護士が詳しく解説します

1 いじめとは?

(1)いじめの定義

「いじめとはなにか」ということについては、いじめ防止対策推進法に以下の通り定められています。

2条1項 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。

このルールの特徴としては、いじめた人といじめられた人との間に、「学校が同じ」とか「クラスが同じ」とか「部活動が同じ」とかそういった何らかのつながりがあることを要求していることです。また、集団無視やからかいなどの心理的な影響を与える行為についてもいじめの対象としています。さらに、学校内で行われることだけでなく、インターネットを通じて行われるものを含んでおり、LINEのグループからはずす「LINEはずし」などのいわゆる「ネットいじめ」に対応したルールとなっています。

(2)いじめの具体例

いじめの一例として集団無視やからかいについて記載しましたが、いじめの具体的な例については文部科学省が公開している「いじめの防止等のための基本的な方針」に以下の通り記載されています。

冷やかしやからかい,悪口や脅し文句,嫌なことを言われる
仲間はずれ,集団による無視をされる
軽くぶつかられたり,遊ぶふりをして叩かれたり,蹴られたりする
ひどくぶつかられたり,叩かれたり,蹴られたりする
金品をたかられる
金品を隠されたり,盗まれたり,壊されたり,捨てられたりする
嫌なことや恥ずかしいこと,危険なことをされたり,させられたりする
パソコンや携帯電話等で,誹謗中傷や嫌なことをされる

もちろん、すべての「いじめ」が網羅されているわけではありませんが、非常に参考になります。身に覚えのある方は、この記事を最後まで読んでみてくださいね。

2 いじめは法律違反です

(1)いじめを禁止する法律

いじめ防止対策推進法には、以下のようにいじめを禁止する条文があります。

4条 児童等は、いじめを行ってはならない。

わかりやすい条文ですね。いじめは法律で禁止されているのです。ただし、このルールは訓示規定であると解釈されておりまして、違反しても何かペナルティがあるわけではありません。そういう意味では不十分なルールになっています。

(2)いじめ=犯罪ではない

これは勘違いをしている方もいらっしゃると思いますが、いじめ=犯罪というわけではありません。いじめの中には犯罪となるものも含まれているということにとどまります。すなわち、殴ったりカツアゲしたりと犯罪となるようないじめもあれば、集団無視したり仲間はずれにしたりと犯罪にはならないいじめもあるのです。ただし、一般的な傾向でいうと、多くのいじめは犯罪行為を伴います。

文科省が公開しているいじめの具体例を1(2)で確認しましたが、それをもとにどんな法律の問題が生じているかをみておきましょう。

冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる

脅し文句の内容によっては脅迫罪(刑法222条)にあたります。また、程度によっては不法行為(民法709条)にもあたります。

仲間はずれ,集団による無視をされる

残念ながら犯罪にはあたりません。

軽くぶつかられたり,遊ぶふりをして叩かれたり,蹴られたりする

わざとおこなっている場合には暴行罪(刑法208条)にあたります。また、程度によっては不法行為(民法709条)にもあたります。

ひどくぶつかられたり,叩かれたり,蹴られたりする

わざとおこなっている場合には暴行罪(刑法208条)にあたります。その結果として傷害を負った場合には傷害罪(刑法204条)にあたります。また、不法行為(民法709条)にもあたります。

金品をたかられる

暴行や脅迫を手段として金品をたかっている場合には恐喝罪(249条)にあたります。また、不法行為(709条)にもあたります。

金品を隠されたり,盗まれたり,壊されたり,捨てられたりする

盗まれた場合には窃盗罪(刑法235条)にあたります。それ以外の場合は器物損壊罪(刑法261条)にあたります。また、いずれの場合も不法行為(民法709条)にあたります。

隠された場合にも器物損壊罪にあたるというのは不思議な感覚かもしれません。器物損壊罪にいう「損壊」は物の効用を失わせる行為だと理解されています。要するに、使えないようにするというのがここでいう「損壊」でして、物を隠された場合にもその物が使えなくなりますから、「損壊」にあたるということなのです。

嫌なことや恥ずかしいこと,危険なことをされたり,させられたりする

暴行・脅迫を手段としてさせられたりする場合には強要罪(刑法223条1項)にあたります。また、不法行為(709条)にもあたります。

パソコンや携帯電話等で,誹謗中傷や嫌なことをされる

内容次第では名誉毀損罪(230条1項)や侮辱罪(231条)にあたります。

(3)いじめの対策を定める法律

いじめ防止対策推進法では、いじめの対策をする責任のある学校に対し(7条参照)、以下の通りいじめに対する措置を義務付けています。ちょっと長いですし小難しいので、とりあえずここは読み飛ばして(4)を読んでも構いません。

23条1項 学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係る相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとるものとする。

1項は通報その他適切な措置を講じる義務を定めています。つまり、学校の先生や保護者は、いじめの相談を受けたときに学校に通報するなど適切な行動をとらなければなりません。

23条2項 学校は、前項の規定による通報を受けたときその他当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、速やかに、当該児童等に係るいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるとともに、その結果を当該学校の設置者に報告するものとする。

2項は、確認・報告義務を定めています。つまり、学校がいじめの通報を受けたときやいじめと疑われる行動を発見したときは、学校はいじめ被害を受けていると思われる児童に対していじめがあるのかどうかを確認して、その結果を国・都道府県・市町村などの学校を設置している者に対して報告します。

23条3項 学校は、前項の規定による事実の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとする。

3項は被害児童等または保護者への支援と加害児童への指導、加害児童の保護者に助言をすべき義務を定めています。つまり、学校はいじめの被害を受けた児童やその保護者に対してアドバイスをしたり、いじめをした児童やその保護者に対して指導やケアをおこないます。いじめをした児童のケアをおこなうのは、いじめをした児童も心に問題を抱えていたりすることが多いからです。

23条4項 学校は、前項の場合において必要があると認めるときは、いじめを行った児童等についていじめを受けた児童等が使用する教室以外の場所において学習を行わせる等いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を講ずるものとする。

4項は安心して教育を受けられるよう措置を講じる義務を定めています。つまり、いじめをした児童を別室に隔離して授業をするなどの対策をして、いじめを受けた児童が安心して授業を受けられるようにします。

23条5項 学校は、当該学校の教職員が第三項の規定による支援又は指導若しくは助言を行うに当たっては、いじめを受けた児童等の保護者といじめを行った児童等の保護者との間で争いが起きることのないよう、いじめの事案に係る情報をこれらの保護者と共有するための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。

5項はいじめに係る情報を保護者と共有するための措置を定めています。つまり、いじめをした児童の保護者といじめを受けた児童の保護者との間での争いが起きないように、いじめについての情報を学校と保護者との間で共有したり、学校を間に入れて話し合いをしたりします。

23条6項 学校は、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときは所轄警察署と連携してこれに対処するものとし、当該学校に在籍する児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは直ちに所轄警察署に通報し、適切に、援助を求めなければならない。

6項は警察との連携義務を定めています。つまり、学校は、いじめが犯罪行為であると判断した場合には、警察と連携して対応します。

3 いじめを受けた人がとるべき行動

大事なことなのでもう一度記載しますが、多くのいじめは犯罪行為を伴います。犯罪行為に対して自分ひとりで対処するのは、ゲームのラスボスに対して丸腰で挑むようなものですので、あまりオススメができません。それよりは、いじめについて親や先生などの身近な人に相談する、警察に相談する、弁護士に相談するといった方法のほうがいじめの解決につながることが多いです。

「警察や弁護士に相談だなんて…」と思ったかもしれません。そんな方は、以下の私の体験談を読んでみてください。

私が中学3年生の頃、掃除の時間にクラスのやんちゃな男子生徒(Aとしておきます。)がちょっかいをかけてきて、それに対して怒ってホウキを投げたことがあります。すると、Aが逆上して、私は40発ほど顔を殴られ、鼻の軟骨が折れました。その後、事が収まってから先生に「訴訟もできるけどどうする?」と聞かれましたが、そのときは「訴訟なんてそんな大ごとにするのは…」と思って「大丈夫です。」と答えました。しかし、今考えれば、訴訟をしてしっかりと被害を回復すべきだったと思います。訴訟を通じて、やったことに対する償いをしてもらうことは、正当な権利の行使なのです。

ここからは、いじめが受けた人にできることをパターン別に記載します。

(1)いじめが犯罪行為を伴う場合

親に相談した上で、親と一緒に弁護士に相談した方がいいです。なぜなら、いじめが犯罪行為を伴う場合には、ただの「いじめ」で片づけられるものではなく法律に従った解決を必要とするからです。法律の問題に対しては法律の専門家に、ということですね。この場合、相談を受けた弁護士としては、①被害届や告訴状を警察署や検察庁に提出し、少年事件として捜査を進めてもらう、②いじめをした児童の親に対して損害賠償請求する、③学校に対して内容証明郵便を送って対策を進めてもらう、④学校に対して損害賠償請求をするなどといった方法の中から、事案の内容に応じた適切な方法や今後の対策を模索することになります。

いじめが犯罪行為を伴う場合には対策の必要性が高いです。いろんな人を巻き込んでいじめを解決することは決して恥ずかしいことではありません。むしろ、勇気のある行動といえます。一人で悩まないで踏み出す勇気を持ってください。親でも先生でも警察でも弁護士でもいいので、まずは誰かに打ち明けることが大事だと思います。周りに相談できる人がいないという方でも、24時間子供SOSダイヤルという文部科学省の運営する窓口がありますので、紹介しておきますね。

「24時間子供SOSダイヤル」について 文部科学省

24時間子供SOSダイヤルの電話番号は0120-0-78310です。

(2)いじめが犯罪行為を伴わない場合

いじめが犯罪行為を伴わない場合でも、一度弁護士に相談してみるのはよいことです。なぜなら、いじめられた本人は犯罪行為を伴っていないと思っていても、実は犯罪行為を伴っている場合があるからです。ただし、本当にいじめが犯罪行為を伴っていない場合には、弁護士にできることは限られています。この場合は、親や先生に相談し、一緒に解決に向けて取り組んでいきましょう。担任の先生が動いてくれない場合はほかの先生・校長先生・教育委員会にも相談してみてください。いずれにせよ、いじめの解決に向けて取り組むことは勇気が必要です。一人で悩まないで踏み出す勇気を持ってくださいね。また、(1)に記載しましたが、24時間子供SOSダイヤルはこの場合にも利用できますので、周りに相談できる人がいないという方は是非利用してみてください。

4 さいごに

「いじめられるほうも悪い」などと言われることもありますが、圧倒的にいじめるほうが悪いです。しかし、だからといって、いじめの加害者に対して何をしてもいいというわけではありません。いじめられた人が新たな加害者にならないためにも、法律の定めには違反しないようにしながら、いじめの解決に向けて勇気ある第一歩を踏み出してください。その際に、この記事に書いたことが少しでも役に立てれば幸いです。