YouTuberのための法律講座 第2章 物申す系編

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1 物申す系とは

「物申す」という言葉には、要求をしたり文句を言ったりするという意味があります。物申す系のYouTuberは、人や事件に対しアレコレ言う動画を中心に動画をつくります。たとえば、何か事件が起きたときに、「あいつの言い分は正しい」と意見を述べたり、「あの事件の真相はこうだ!」と分析をしたりします。また、「まだ公表されていないけどこんなスキャンダルがあった!」などと事実を知らせる動画(いわゆる暴露動画)も物申す系の動画に位置づけられています。

物申す系の動画としては、たとえばこんな動画が挙げられます。

女子高生YouTuberフリー〇っぱい動画とよりひとに思う事
(PROWRESLING SIBATAR ZZ)
https://www.youtube.com/watch?v=P7c2J2_P9nY

物申す系のメリットとしては、知名度がなくても再生数が伸びやすい傾向にあります。なぜなら、誰の動画であるかを問わずに、事件自体に興味をもって動画をみる方がいらっしゃるからです。その場合の視聴者は「ヒト」ではなく「コト」に興味を持っているというわけですね。

他方で、物申す系のデメリットは、反感を買いやすいという点にあります。特に、人気YouTuberに対しアレコレ物申す動画を出した場合には、そのYouTuberのファンから総叩きにあう可能性すらあります。特に、こうした物申す動画が法律に違反しているとなれば大惨事が起きかねません。そんなわけで、物申す動画をつくるときに気をつけたい法律をしっかり学ぶことにしましょう。

2 物申す動画をつくるときに気をつけたい法律

<特に気をつけたい法律>
・名誉毀損罪(刑法230条1項)
・侮辱罪(刑法231条)
・偽計業務妨害罪・信用棄損罪(233条)
・不法行為(民法709条)

(1)他人の名誉に配慮しよう

他人に対してアレコレ言う動画をつくるときは、その人の名誉に配慮する必要があります。このような犯罪が定められています。

(名誉毀損)
刑法第230条1項 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

要するに、他人の名誉を傷つける発言は、名誉毀損罪として罰せられる可能性があるということです。この条文には、みなさんに注目してほしいところが2つあります。

まず、一つ目は、「事実を適示し」というところです。たとえば、「A市の市長であるXは、建築業者からワイロを受け取っている。」と述べたのであれば事実を適示したことになります。他方で、「Xは頭が悪い。優先すべき政策をわかっていない。」と述べたのであれば、それは発言者のXに対する評価を意見という形で述べただけですので、事実を適示したことにはなりません。このように、評価を述べただけであれば、名誉毀損罪として罪に問われることはありません。

そして、二つ目は、「その事実の有無にかかわらず」というところです。たとえば、先程のように、「A市の市長であるXは、建築業者からワイロを受け取っている。」と述べた場合、Xがワイロを受け取っているというのがウソかホントかを問わずに犯罪が成立しますという意味です。

なお、「公然」というのは不特定または多数の人が認識できる状態という意味です。ですので、井戸端会議で愚痴を言っても名誉毀損罪にはなりません。

(2)ホントの情報でも処罰される!?

でも、早とちりしてはいけません。ホントの情報に関してはこんな条文があるのです。

(公共の利害に関する場合の特則)
刑法第230条の2第1項 前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
第2項 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
第3項 前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。

要するに、230条の2第1項は、3つの要件を満たす場合には、名誉毀損罪により処罰されないことを定めています。その3つの要件というのが、①適示された事実が公共の利害に関係すること、②適示の目的が専ら公益を図ることにあると認められること、③適示された事実が真実であることの証明に成功したことです。このように、ホントの情報であっても、名誉毀損罪により処罰されるかどうかは、証拠によって裁判官を説得できるかどうかにかかってきます

難しい単語がいくつも出てきましたので、少し補足しておきます。①の公共の利害に関係するというのは、たとえば、重大事件の重要参考人の写真が掲示されているところを思い浮かべてみてください。この場合、重要参考人として写真を掲示された人にとっては大変不名誉ではありますが、重大事件の解決という公共の利益のために、写真を掲示することは欠かせないときがあります。

②の目的が専ら公益を図ることというのは、「専ら」と定められてはいますが、主たる目的が公益目的であればいいと考えられています。たとえば、選挙やリコール活動に役立つ情報を提供するために、地方議員の汚職の事実についてきちんと調べて丁寧に述べた場合には、公益目的が認められるはずです。他方、罵詈雑言を並べながら憶測で地方議員の汚職について述べた場合には、ただの私怨ですので、専ら公益目的とは言い難いでしょう。

ちなみに、先程のように、「A市の市長であるXは、建築業者からワイロを受け取っている。」と述べた場合、それは公務員に関する事実ですので、③の要件を満たせば名誉毀損罪による処罰を免れることができます。

(3)事実じゃなくても…

ここまで見てきた通り、評価だけを述べた場合、名誉毀損罪となることはありません。しかし、評価だけを述べた場合でも侮辱罪により処罰される可能性があります

(侮辱)
刑法第231条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

結局、事実を適示しようが適示しまいが犯罪自体は成立して、あとはその犯罪が重いか軽いかだけの話だということですね。

(4)実際に処罰されることがあるの?

ここでふと疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。「そうはいっても、インターネット上にはあちこちで侮辱的発言が転がっているじゃないか。でも、あまり処罰された話を聞かないよね。」と。その通りです。これに関しては以下のようなルールがあります。

(親告罪)
刑法第232条1項 この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

すなわち、名誉毀損罪や侮辱罪は、被害者等が告訴という手続をとらなければ、刑事裁判をすることができません。なお、告訴は被害届とは異なります。被害届は「こんな犯罪がありました」と申告するにとどまりますが、告訴はそれに加えて「だから犯人を処罰するための手続を進めてね」という意思表示を含みます。

刑事裁判ができないということは、名誉毀損や侮辱行為をした人を処罰することができません。そして、名誉権を侵害された被害者は、告訴をすることで被害が広まる可能性があるので、実際には<告訴をせずに騒ぎがおさまるのを待つ>という選択をすることが多いのです。だから、侮辱的発言の数と比べると、実際に名誉毀損罪や侮辱罪で処罰される事例はそれほど多くはありません。

これに対して、業務妨害罪や信用毀損罪は親告罪とされておりません。ですので、これらの犯罪は、被害者からの告訴がなくても処罰を受けることがあります。

(5)業務を妨害したり、信用を傷つけたりしないようにしよう

業務妨害罪と信用毀損罪の話が出てきましたので、ここで条文を確認しておきましょう。

(信用毀損および業務妨害)
刑法第233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

読み方が少し難しいですね。この条文は4つのことを禁止しています。それは、①虚偽の風説を流布するという手段で人の信用を傷つけること②偽計を用いるという手段で人の信用を傷つけること③虚偽の風説を流布するという手段で業務を妨害すること④偽計を用いるという手段で業務を妨害することです。

信用毀損罪や業務妨害罪は、名誉毀損罪とは異なり、人の経済的な側面だけを保護しています。ですので、ホントの情報を視聴者に伝える動画をアップして、その結果として人の信用を傷つけたり業務を妨害したとしても、信用毀損罪や業務妨害罪にはなりません

難しい単語について少しだけ説明をしておきます。「虚偽の風説を流布」とは、真実に反する噂や情報を不特定または多数の人に伝えることをいいます。たとえば、「ある会社が倒産しそうだ」というウソの情報の動画を公開したとすると、真実に反する情報を不特定の人に対して伝えたことになりますので、虚偽の風説を流布したことになります。また、「偽計」とは、人をあざむいたり、人の勘違いや知らないという状態を利用することをいいます。たとえば、店の入り口付近に休業と書かれたビラを貼った場合には、営業していることを知らないお客さんの<知らない>という状態を利用しているので、偽計にあたります(この場合は偽計業務妨害罪となります)。

(6)名誉の毀損と損害賠償

ここまでは刑事のお話をしました。次に民事のお話をします。他人に対してアレコレ言う動画をつくるときには、それが他人に対する不法行為にならないように気をつける必要があります。

(不法行為)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

インターネットに動画をアップロードする場合、その動画内での発言が名誉毀損となるかどうかは、「一般の視聴者の通常の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべきである」とされています(東京地裁平成23年4月22日)。動画サイトならその動画サイトの使用者が普通に視聴した場合に人の社会的な評価を下げるものかどうかを判断すればいいということですね。とはいえ、ケースバイケースの判断となりますので、実際に不法行為となるかどうかの判断をするのはなかなか難しいです。他人に対してアレコレ言う動画をつくるにあたっては、人の社会的な評価にかかわる発言はできる限り控えたほうがよさそうですね
ちなみに、民事においても、真実性の証明の3要件を満たせば、損害賠償責任を免れることができます。

なお、刑事の名誉毀損罪とは異なり、評価を述べた場合でも名誉を毀損したとして不法行為となることがあります。そして、評価自体はそれが真実であるとの証明ができませんので、評価に関する真実性の証明をする場合には、前提とする事実が真実であることの証明をおこなうことになります。すなわち、評価についての発言が他人の名誉を傷つける場合であっても、①論評が公共の利害に関する事実にかかること、②論評の目的が専ら公益を図ることにあること、③その前提としている事実が重要な部分において真実であることの証明があるか、または真実と信じるについて相当の理由があること、④人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでないことの4要件を満たせば、損害賠償責任を免れることができます。

(7)プライバシーと損害賠償

他人に対してアレコレ言う動画をつくるときには、他人のプライバシーにも配慮する必要があります。他人のプライバシーを侵害すると、それは不法行為と評価され、損害賠償責任を負う可能性があります。とはいえ、ある動画がプライバシー侵害にあたるかどうかを判断するのは難しいことです。一応、ベースとなる判断基準は以下の通りです。

①私生活上の事実または事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること、②一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合公開を欲しないであろうと認められる事柄であること、換言すれば一般人の感覚を基準として公開されることによって心理的な負担、不安を覚えるであろうと認められる事柄であること、③一般の人々に未だ知られていない事柄であること、④このような公開によって当該私人が実際に不快、不安の念を覚えたことの4要件です。

ただし、すべての要件を満たした場合に限ってプライバシー侵害となるわけではなく、①②のみでプライバシー侵害を認めた裁判例や、②③のみでプライバシー侵害を認めた裁判例があります。たとえば、人の前科に関する情報を公表することはプライバシー侵害となります。ですので、人の前科について述べる動画は控えるべきでしょう。

(8)損害賠償の額はどれくらい?

裁判によって他人の名誉権やプライバシー権を侵害したと認められた場合、損害賠償の額がどれくらいになるか気になる方がいらっしゃるのではないかと思います。一般人が名誉を毀損された場合の慰謝料額の中央値が50万円であるとされています。加えて、たとえば、名誉が傷つけられたことにより取引先を失ったのであれば、それにより失った利益分を請求することができます。さらに、弁護士に裁判業務を委任したのであれば、弁護士費用の一部を損害として賠償請求することができます(だいたい請求認容額の1割程度です)。

ひとつの動画で50万円もの収益を上げることは難しいですが、ひとつの動画で他人の名誉権やプライバシー権を侵害することは容易いので、動画をつくる際には十分に気をつけましょうね。

3 こんな動画は大丈夫?

(1)あいつは詐欺師

Q 私はある人気YouTuberのファンです。そのYouTuberは有料のファンクラブを設けています。私はそのYouTuberが「有料ファンクラブに入れば優先的にオフ会に参加できる」と言っていたことから、そのYouTuberに会ってみたいという気持ちでそのファンクラブに入りました。しかし、私がファンクラブ入会してまもなく1年経ちますが、一向にオフ会を開きません。もうそのYouTuberを応援する気も失せたので、「あいつは詐欺師だ」という動画を制作・公開しようと考えています。このような動画に何か法的な問題はありますか。
A 刑事的には、名誉毀損罪または侮辱罪が成立する可能性があります。民事的には、不法行為に基づく損害賠償責任が発生する可能性があります。

<解説>

1 そう呼ばれるのは大変不名誉だけども…

みなさんは詐欺師と呼ばれたことがありますか?もしかしたら、何かウソをついたときにそのように呼ばれたことがあるかもしれません。いずれにせよ、そのように呼ばれることは大変不名誉なことだと思います。ただ、法律上の名誉毀損にあたるかどうかは、そういった一般的な感覚を頼りにするのではなく、法律の要件にあてはまるのかどうかを考えなければなりません。

2 刑事責任について

まず、名誉毀損罪についてみてみましょう。名誉毀損罪の要件は以下の通りです。

①名誉毀損行為
②公然性
③事実の適示

それを本件にあてはめるとこうなります。

①「あいつは詐欺師だ」という動画を見た人としては、「あいつは人をだましたりする人なんだ…」という印象を受けます。そうしますと、その動画での発言は「あいつ」の社会的評価を下げるものとして、名誉毀損行為要件に該当します。
②インターネットで公開された動画は不特定かつ多数人がみることができるため、公然性要件に該当します。
③詐欺師というのは詐欺を常習とする者という意味であり、「あいつ」が詐欺を常習としているという事実を示すことになるので、事実の適示要件に該当します。もっとも、前後の文脈次第では、たとえば「ウソつき」と相手の性格をおとしめる意味しか持たないこともあり、その場合には事実の適示要件に該当しません。

そんなわけで、名誉毀損罪に該当する可能性があります。もちろん、上記の要件に該当しても、真実性の証明をすることによって、処罰を免れることができます。

ところで話が変わりますが、みなさんはクロサギという作品をご存知でしょうか。原作は漫画ですが、ドラマにもなっています。一言で詐欺といっても、その手段は多種多様です。この作品は、詐欺師をエサにする(=だます)詐欺師を主人公とする一見変わった作品ですが、いろいろな詐欺事例を豊富に取り上げていて、とても勉強になります。騙されないためにはまず知ることが大切ですので、良かったら一度ご覧になってみてはいかがでしょう。こんなことを書いていたら、私もクロサギを再度読んでみたくなりました。

次に、侮辱罪についてみてみましょう。侮辱罪の要件は以下の通りです。

①侮辱行為
②公然性

それを本件にあてはめるとこうなります。

①「あいつは詐欺師だ」という表現は、「あいつ」をはずかしめる表現ですので、侮辱行為要件に該当します。ただし、事実を適示している場合には名誉毀損罪の問題となるので、侮辱行為要件に該当しません。
②インターネットで公開された動画は不特定かつ多数人がみることができるため、公然性要件に該当します。

そんなわけで、侮辱罪に該当する可能性があります。侮辱罪については、割と一般的な感覚で判断できそうですね。

そういえば、私が子供の頃、他人にあだ名をつけてからかう行為をたくさんしている方がいました。そんな方の表現の中には侮辱罪に該当するものがあると思います。もちろん、14歳未満は刑事未成年ということで犯罪となりませんけども。ちなみに、その方は教職員になり、今では生徒に「先生」と呼ばれる立場にあります。過去の行いを反省して、立派な先生になってほしいものです。

3 民事責任について

民事責任について別途検討しましょう。不法行為に基づく損害賠償請求の要件は以下の通りです。

①権利・法益侵害
②故意・過失
③損害
④因果関係

それを本件にあてはめるとこうなります。

①「あいつは詐欺師だ」という動画を見た人としては、「あいつは人をだましたりする人なんだ…」という印象を受けます。そうしますと、その動画での発言は「あいつ」の社会的評価を下げるものとして、名誉権を侵害します
②「あいつは詐欺師だ」と意図的に発言するものですから、そうした言葉を発することにより「あいつ」の社会的評価を下げることを認識・認容しているといえますので、故意に該当します。
③慰謝料等の損害が発生します。
④「あいつは詐欺師だ」という心ない言葉によって傷つけられ、たとえば精神的苦痛を負ったりするわけですから、故意行為と損害との間に因果関係が認められます。

そんなわけで、不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性があります。

ちなみに、誰かのことを「詐欺師」と表現して民事訴訟になっているケースは少なくありません。問題となった表現は週刊誌やブログ等さまざまな媒体でおこなわれています。動画での発言はその動画を公開している限り残り続けますので、簡単に証拠化されます。ですので、動画での発言には慎重になりたいところですね。

(2)あの店はクソマズイ

Q ネット上でレビュー評価の高い中華料理屋に行ったのですが、料理はマズイし価格は高いし散々でした。悔しいので「××店はゲロマズ料理しか出さない」というタイトルの動画を制作・公開しようと思っているのですが、何か法的な問題はありますか。
A 刑事的には業務妨害罪や名誉毀損罪が成立する可能性があります。民事的には不法行為に基づく損害賠償責任が発生する可能性があります。

<解説>

1 レビューサイトのカキコ(書き込み)にも責任がある

このサイトを閲覧されているようなみなさんであれば、普段からインターネットを使いこなしているのではないかと思います。そんなみなさんは、おそらく、普段何気なく他人のレビューを目にしているのではないでしょうか。もしかすると、他人のレビューを読むことにとどまらず、自分でレビューを書いているかもしれませんね。

いま、世の中にはたくさんの飲食店があります。「とてもおいしい!」と思えるようなお店もあれば、「なんでこんな料理にお金を払わないといけないのか…」と思ってしまうようなお店もあります。後者の場合、人によっては憤りを感じる方もいらっしゃることでしょう。そんなときに、レビューサイトで感情のままに意見を書き込む方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、こうした書き込みにも法的な責任があります。ちなみに、レビューにおいて名前を出しているか、それとも匿名であるかは関係ありません。だから、こうした書き込みが法律に違反しないように注意しなければなりません。

2 刑事責任について

偽計業務妨害罪が成立するかどうかをみてみましょう。偽計業務妨害罪の要件は以下の通りです。

①業務
②虚偽の風説の流布or偽計
③業務妨害行為

それを本件にあてはめるとこうなります。

①飲食店を営業することは、職業として継続して行う事業に該当するため、業務要件に該当します。
②「××店はゲロマズ料理しか出さない」というのは動画制作者の感想であって、真実に反する噂を公表しているものではないので、虚偽の風説を流布したことにはなりません。また、人を欺き、誘惑し、あるいは人の錯誤または不知を利用したものでもないため、偽計にあたりません。ただし、たとえば動画内で「××店は客の食べ残しを再利用して料理を出している」などと事実無根の発言をしたような場合には、そういった事実はないことを知らないという状態を利用したといえますので、偽計にあたります。
③「××店はゲロマズ料理しか出さない」というレビューを書き込むとそのレビューを見た人が××店を避けるおそれがありますので、妨害するに足りる行為が行われているとして、業務妨害行為要件に該当します。

そんなわけで、②虚偽の風説の流布or偽計の要件が微妙なところはありますが、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。単に「マズイ」など個人の感想を述べるだけであれば犯罪とはなりませんが、それを超えて事実に反するような内容の発言をしてしまうと業務妨害罪となり得るのです。

ちなみに、最近、本件と似たような事件がありました。とある市の議員が、投稿サイトで「ゴキブリ入りの料理がまずい」や「消費期限切れを提供」などと中傷する書き込みを数十件ほど投稿したところ、こうした書き込みが名誉毀損罪にあたるとして、罰金30万円の略式命令が下されたのです。こうした書き込みの対象となったお店は、結果として閉店しました。書き込みが閉店の直接の原因になったかどうかはわかりませんが、自分の書き込みが店をつぶしてしまうこともあるというのは十分に自覚しておきたいものです。

3 民事責任について

民事責任について別途検討しましょう。不法行為に基づく損害賠償請求の要件は以下の通りです。

①権利・法益侵害
②故意・過失
③損害
④因果関係

それを本件にあてはめるとこうなります。

①「××店はゲロマズ料理しか出さない」という動画は、その内容次第では、××店の名誉権または営業上の利益を侵害することになります。たとえば、動画内で「ゴキブリ入りの料理がまずい」と述べている場合には、営業活動を妨害するものとして、法的侵害の要件に該当します。
②「××店はゲロマズ料理しか出さない」という動画をわざわざつくるわけですから、そうした言葉を発することにより名誉権や営業上の利益を侵害することを認識・認容しているといえますので、故意に該当します。
③たとえば、売上の減少などの損害が発生することがありますので、損害の要件に該当することがあります。
④動画の公表後に売上が減少した場合には、故意行為と損害との間の因果関係が認められることがあります。

そんなわけで、不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性があります。とはいっても、普通の感想程度の動画でしたら、①権利・法益を侵害したとまではいえないでしょうし、④因果関係が認められないでしょうから、普段からレビュー活動をおこなっている方もその点はご安心ください(そんな場合はなかなか訴訟にまで発展しないと思います)。

(3)誰と誰は実は不倫している

Q 私は信用できる情報筋から有名YouTuberのAとBが実は不倫中であることを知りました。これを動画にすれば視聴回数がうなぎ上りになりそうです。だから、AとBが不倫をしていることを暴露する動画を制作・公開したいのですが、何か法的な問題はありますか。
A 刑事的には名誉毀損罪が成立します。民事的には不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性があります。

<解説>

1 加熱する不倫報道

TV報道や週刊誌では有名人の不倫が話題としてよく取り上げられます。私は、「有名人の誰と誰が不倫をしている」といった話に全く興味がないので、そうした話題がよく取り上げられることについて疑問に思います。ただ、そうした話題に興味関心を持っている方が少なくないということなのでしょう。しかし、視聴者の関心事項であることをもって法的責任を免れることができるわけではありません。では、どういった責任が発生するかを検討していきましょう。

2 刑事責任

名誉毀損罪が成立するかどうかをみてみましょう。(1)でも確認しましたが、名誉毀損罪の要件は以下の通りです。

①名誉毀損行為
②公然性
③事実の適示

それを本件にあてはめるとこうなります。

①有名YouTuberが不倫中であることを公表すれば、視聴者はそのYouTuberに対して不快感や嫌悪感を抱き、もってそのYouTuberに対するイメージダウンにつながります。そのため、その公表行為はそのYouTuberの社会的評価を低下させるものとして、名誉毀損行為要件に該当します。
②インターネットで公開された動画は不特定かつ多数人がみることができるため、公然性要件に該当します。
③不倫中であることの公表は、婚姻関係にある者の一方が他方以外の者と性的関係をもったという事実の指摘です。

そんなわけで、名誉毀損罪が成立します。ですので、不倫していることを暴露する動画の制作・公開は控えたほうがよいでしょう。

3 民事責任

民事責任について別途検討しましょう。不法行為に基づく損害賠償請求の要件は以下の通りです。

①権利・法益侵害
②故意・過失
③損害
④因果関係

不倫中であることの暴露は、プライバシー侵害かどうかが問題となりますので、①権利・法益侵害として検討すべき事項は以下の通りです。

a 私生活上の事実または事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること、
b 一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合公開を欲しないであろうと認められる事柄であること、換言すれば一般人の感覚を基準として公開されることによって心理的な負担、不安を覚えるであろうと認められる事柄であること
c 一般の人々に未だ知られていない事柄であること
d このような公開によって当該私人が実際に不快、不安の念を覚えたこと

それを本件にあてはめるとこうなります。

①不倫は私生活上の事実であり(a)、不倫中の当事者の立場に立った場合、一般に不倫の公開を望みません(b)。また、不倫はひそかに行うものですから、不倫を暴露する時点で一般の人々に知られていることは少なく(c)、公開されることによる社会的なダメージを受けますので、不倫中の当事者は公開により不快・不安の念を覚えるといえます(d)。そのため、プライバシー権の侵害が認められます。
②AとBが不倫をしていることを暴露する動画をわざわざつくるわけですから、そうした事実を暴露することによりプライバシー権を侵害することを認識・認容しているといえますので、故意に該当します。
③不倫の暴露により仕事を失ったり、精神的苦痛を負ったりすることで、損害が発生することがあります。
④不倫の暴露後に仕事を失ったり、不倫の暴露により精神的苦痛を負った場合には、故意行為と損害との間の因果関係が認められることがあります。

そんなわけで、不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性があります。さらに、人格権としての名誉権侵害を理由として、不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性もあります。そうすると、プライバシー権と名誉権の両方を侵害していると認められることがありますが、その場合に損害賠償額が2倍になるというものではありません。あくまで、被害者が被った損害の範囲で賠償すべき責任を負うのみです。

(4)〇〇社はブラック企業だ!

Q 私はつい先日まで東証一部に上場しているA社で働いていましたが、連日の長時間残業と上司のパワハラでうつ病となり、とうとう離職することになりました。私がうつ病になった原因はA社の組織としての気質にあると思います。そこで、A社の内部事情を公表し、A社がブラック企業であり、改善が必要であることを社会に訴えかける動画を制作・公開したいのですが、何か法的な問題はありますか。
A 刑事的には名誉毀損罪に該当する可能性があります。また、民事的には不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性があります。ただし、刑事的にも民事的にも、真実性の証明が認められ、責任を問われないこともあるでしょう。広く社会の利益のために動画を制作・公開したのであれば、責任を免れる可能性が高まります。

<コメント>

上記のような法的リスクがあることを承知の上で、仮にA社のブラック気質を社会に訴えかける動画を制作・公開するのであれば、その動画に関しては収益が入らないように設定しておくのが無難です。主として収益目的の動画であると認定されることによって、真実性の証明における公益目的要件が認定されないという事態を防ぐためです。

(5)あの会社はもうすぐ倒産しそう

Q 私は長年株取引をおこなっています。現在に至るまで順調に資産が増え、私の取引手法に興味を持つ方が増えてきました。そこで、株取引に関する情報を動画にして、ファンを増やしたいと考えています。まず手始めに、A社がもうすぐ倒産しそうであることを指摘することで、注目を浴びたいと思っています。このような動画に何か法的な問題はありますか。
A 刑事的には、A社が倒産しそうであることがウソであれば、信用毀損罪が成立する可能性があります。また、民事的には、株価下落や取引先喪失等による損害について不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性があります。

<コメント>

もしA社が倒産しそうであることを指摘する動画を制作・公開するのであれば、キチンと調べた上で、証拠に基づいて話をする必要があります。

ちなみに、2016年の一年間で負債総額1000万円以上で倒産した会社は8446社のようです(※)。我々の知らないところで日々たくさんの会社が終わりを迎えています。不安をあおるつもりではありませんが、この本を読んでいるあなたがもし会社勤めでしたら、自分の会社は経営状態をしっかりと把握しておきたいところですね。

※東京商工リサーチ社の調査によります。詳細は下記URLを参照してください。
http://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2016_2nd.html

(6)単なるネタなのに…

Q 私は普段から物申す動画を制作しています。順調にファンを獲得していたので調子に乗ってしまったのかもしれません。「あいつは強盗の前科持ちだ」「ついでに詐欺もしている」などと動画内で発言し、炎上しました。私としてはこれらの発言はすべてネタでして、本心からの発言ではありません。ネタであっても法的に問題があるのでしょうか。
A 上記発言は、刑事的には名誉毀損罪となります。また、民事的には名誉権侵害を理由とする損害賠償請求が認められる可能性があります。こうした法的責任は、仮に発言がネタであっても生じます。

<コメント>

ネタであるというだけで法的責任が発生しないとなると、裁判では「ネタでした」の反論があふれることになりそうですね。しかし、ネタであっても法的責任が発生しますので、実際の裁判は「ネタでした」では済まされません。物事が思うように進むとついつい調子に乗りがちですが、自分のひとつひとつの発言にはしっかりと責任を持ちたいものですね。