YouTuberのための法律講座 第5章 レビュー・料理・子ども編

0 動画で解説をみる

1 レビュー系動画とは

レビュー系動画は、物の評価を述べる動画を指します。よく見かけるのは、レビュー対象となる物を開封するところからはじまり、実際にその物を使用する様子を撮影し、同時に使用方法等を説明する動画です。レビュー対象となる物は商品が多いことから、商品紹介とも呼ばれています。

レビュー系の動画としては、たとえばこんな動画が挙げられます。

父に新車購入!新型ヴェルファイア2018がキター!(カズチャンネル/Kazu Channel)
https://www.youtube.com/watch?v=lUNkGxYIJ8Y&t=579s

レビュー系のメリットとしては普段から商品を紹介していることから、企業案件であっても違和感が少なく、視聴者に受け入られやすい点にあります。また、詳細なレビュー動画をあげていれば、「この人のレビューなら間違いない」と感じることから、固定ファンがつきやすい点もメリットとして挙げることができます。
他方、レビュー系のデメリットとしては、企業案件出ない限り自費でレビュー対象となる商品を購入しなければならないため、動画制作コストがかさみやすい点にあります。また、大物動画クリエイターでない限り、商品知識が全くない状態でのレビューにはあまり需要がないので、レビュー動画を制作する際にはあらかじめ知識を入れておく必要があるので、動画制作に要する時間的コストも大きいと言えるでしょう。

一言でいえば、レビュー系動画は動画クリエイターの腕が試されやすいのだと思います。そんなレビュー系動画クリエイターが法律に違反しているということになれば大変なことになりかねません。そんなわけで、レビュー系動画をつくるときに気をつけたい法律を学んでいきましょう。

2 レビュー動画をつくるときに気をつけたい法律

(1)レビュー対象の商品をしっかりと調査しよう

レビュー動画をつくる際には、レビュー対象となる商品についてしっかりと調査をする必要があります。ウソの情報を流してしまった場合にはこのような犯罪が定められています。

(信用毀損及び業務妨害)
刑法第233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

要するに、ウソの情報を流して信用にキズをつけたり業務を妨害した場合に、信用毀損罪や業務妨害罪が成立するということなのです。これらの犯罪はわざとウソの情報を流した場合に成立するものです。うっかりとウソの情報を流してしまった場合には適用されません。

とはいえ、その動画を見た人からは、わざとウソの情報を流したかそれともうっかりとウソの情報を流したかの見分けがつかないこともありますので、うっかりとウソの情報を流してしまった場合であっても捜査機関による捜査が行われる可能性を完全に否定することはできません。

また、うっかりとウソの情報を流してしまった場合でも、民事上の不法行為責任を問われる可能性があります。

(不法行為による損害賠償)
民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(2)レビューをするにあたって気をつけたい商品

この世にはたくさんの商品がありますが、その中には日本で使用してはいけないものもあります。みなさんがよくご存知のところですと、たとえば、拳銃は原則として所持および使用が禁止されております。

(所持の禁止)
銃砲刀剣類所持取締法第3条1項 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、銃砲又は刀剣類を所持してはならない。
一 法令に基づき職務のため所持する場合
(二号以下省略)

他にも、大麻や覚せい剤等の違法薬物を所持してはいけないことはご存知かと思います。

他方で、これはご存知の方が少ないと思いますが、電波を利用する商品の中には電波法に違反するものがあります。無線機の場合、技適マークがついているかどうかで判断するのがてっとり早いでしょう。以下は総務省のQ&Aです。

Q5
技適マークが付いていない無線機を使用したらどうなりますか?
A:
一部の無線機を除いて、技適マークが付いていない無線機を使用すると、電波法違反になる恐れがあります。
また、技適マークが付いていても無線局を開設するためには総務大臣の免許を受けなければならない無線機(アマチュア無線、パーソナル無線など)がありますので、使用には十分ご注意下さい。
(免許を受けずに無線局を開設若しくは運用した場合は電波法違反となり、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金の対象となります。また、公共性の高い無線局に妨害を与えた場合は、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金の対象となります。)
※http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/monitoring/summary/qa/giteki_mark/
また、技適マークがついているからといって、必ずしも適法というわけではありません。

Q7
技適マークが付いていればそれだけで大丈夫ですか?
A:
次の場合が考えられます。
1 特定小電力のトランシーバー、家庭で使用する無線LAN、コードレス電話などは、技適マークが付いていれば無線局の開設のための総務大臣の免許を受けないで使用できます。2 上記以外の無線機(アマチュア無線、パーソナル無線など)は、無線局の開設のための総務大臣の免許が必要となります。(免許を受けずに無線局を開設若しくは運用した場合は電波法違反となり、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金の対象となります。)
3 無線機を改造すると技適マークを抹消しなければいけませんが、抹消できてないものも考えられます。この場合、無線機を使用できない恐れがあります。
詳しくは、最寄りの総合通信局へお問い合わせ下さい。
※http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/monitoring/summary/qa/giteki_mark/

というわけで、安全に無線機のレビューを行うためには、最寄りの総合通信局に確認を行うのがよいでしょう。

3 料理系とは

料理系動画とは、実際に料理をつくる過程を動画化したものです。大きな分類で言えば、やってみた系動画の1つなのですが、今や料理系動画は一大ジャンルを築いております。いろんな魚を手際よく捌く動画や、要所要所のみを見せる動画、見せ方にこだわってカッコいい感じに仕上げている動画など、同じ料理系動画クリエイターでも動画の雰囲気は大きく異なります。

料理系の動画としては、たとえばこんな動画が挙げられます。

すき焼き(自家製豆腐)(JunsKitchen)
https://www.youtube.com/watch?v=OdNqWcUdm6I

料理系のメリットとしては同じ動画を何度も再生してもらいやすい点にあります。視聴者が自分で料理をつくる際にレシピ本代わりに動画を視聴することがあるからです。また、料理系動画は炎上することが少なく、安定してファンの獲得が期待できる点もメリットの一つとして挙げることができます。

他方、料理系のデメリットとしては、ある程度料理がうまくないと動画をつくりにくい点にあります。実際に、料理系動画クリエイターのほとんどはもともと料理がうまかった人です。

さて、そんな料理系ですが、動画をつくるにあたって気にしなければならない法律があるのかどうか見ていくことにしましょう。

4 料理系動画をつくる際に気をつけたい法律・条例

料理系動画をつくる際に気をつけたい法律は、お酒をつくる場合の酒税法とふぐを捌くときのふぐ調理師免許に関する各地の条例です。

(1)酒税法

まず、お酒をつくる場合ですが、酒税法には以下の定めがあります。

(酒類の製造免許)
酒税法第7条 酒類を製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造しようとする酒類の品目(第三条第七号から第二十三号までに掲げる酒類の区分をいう。以下同じ。)別に、製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長の免許(以下「製造免許」という。)を受けなければならない。ただし、酒類の製造免許を受けた者(以下「酒類製造者」という。)が、その製造免許を受けた製造場において当該酒類の原料とするため製造する酒類については、この限りでない。

要するに、基本的に酒類の製造免許を受けなければお酒をつくってはいけないということです。ただ、自家醸造については、以下の通り国税庁の見解が示されています。

Q1 消費者が自宅で梅酒を作ることに問題はありますか。

A 焼酎等に梅等を漬けて梅酒等を作る行為は、酒類と他の物品を混和し、その混和後のものが酒類であるため、新たに酒類を製造したものとみなされますが、消費者が自分で飲むために酒類(アルコール分20度以上のもので、かつ、酒税が課税済みのものに限ります。)に次の物品以外のものを混和する場合には、例外的に製造行為としないこととしています。
また、この規定は、消費者が自ら飲むための酒類についての規定であることから、この酒類を販売してはならないこととされています。
1 米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでん粉又はこれらのこうじ
2 ぶどう(やまぶどうを含みます。)
3 アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす
※国税庁ホームページより引用(https://www.nta.go.jp/taxes/sake/qa/06/32.htm)

要するに、自分が飲む分としてつくるお酒については、1~3のものを混ぜない限りは酒税法に違反しないということです。たとえば、梅酒はお酒と梅を混ぜてつくりますが、梅は1~3に挙がっていないため、自分で飲む分の梅酒をつくっても酒税法に違反しません。

料理系動画クリエイターとしては、1~3に挙がっているお酒をつくってはいけないことを理解しておく必要があるでしょう。

(2)ふぐ条例

次に、ふぐを捌く場合ですが、たとえば東京都では「東京都ふぐの取扱い規制条例」というものが以下の通り定められております。

(従事の制限等)
条例第10条 ふぐ調理師以外の者は、ふぐの取扱いに従事してはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 ふぐ加工製品(処理の終わつたものであつて、規則で定めるものをいう。以下同じ。)を販売し、又は販売の用に供するために貯蔵し、加工し、若しくは調理する場合
二 ふぐ取扱所において、ふぐ調理師の立会いの下にその指示を受けてふぐの取扱いを行う場合
三 食品の貯蔵を業とする者が食用のふぐを貯蔵する場合
要するに、ふぐ調理師免許を持っていなければ原則として「ふぐの取扱い」をしてはならないということですね。では、「ふぐの取扱い」とはなんでしょうか。これについては、次のような定めがあります。
条例第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 処理 食用に供することができる種類のふぐとして東京都規則(以下「規則」という。)で定めるもの(以下「食用のふぐ」という。)について、卵巣、肝臓その他人の健康を損なうおそれがある部位として規則で定めるもの(以下「有毒部位」という。)を除去し、又は塩蔵処理等を行うことにより人の健康を損なわないようにすることをいう。
二 ふぐの取扱い 食品として食用のふぐを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために貯蔵し、処理し、加工し、若しくは調理することをいう。

ちょっとわかりずらいかもしれませんので、とりあえず、他人におすそ分けをするような場合に免許なしでふぐを捌いたり貯蔵しちゃダメだと理解しておけば足りるでしょう。

料理系動画クリエイターとしては、ふぐ調理師免許を持っていない限りはふぐを捌く動画をつくらないのが賢明かと思われます。

5 子ども系とは

子ども系動画は、おおよそ小学校低学年までの子どもが主役となって、主におもちゃを用いて遊ぶ動画を指します。動画の編集は出演する子どもの親がおこなっていることが多いです。

子ども系の動画としては、たとえばこんな動画が挙げられます。

アニア 合体! ジャングルツリー 大冒険!! 恐竜から助けてくれたのは… おゆうぎ こうくんねみちゃん(キッズライン♡Kids Line)
https://www.youtube.com/watch?v=LoO9L58r5gg

子ども系のメリットとしては、一旦注目されてしまえば再生数を稼ぎやすい点にあります。私も詳しいことはわからないのですが、子ども系動画の視聴者は出演者同様におおよそ小学校低学年までの子どもで、何度も同じ動画を視聴する傾向にあるようです。ですので、動画の再生数が高いところで安定する傾向にあります。

子ども系のデメリットとしては、子どものモチベ―ションを維持しないといけないところです。また、おもちゃを用いて遊ぶ動画をつくる場合には、おもちゃを購入しなければなりませんので、動画制作コストがかさみやすいです。

私は、近い将来の再生回数およびチャンネル登録者数の日本一は子ども系動画クリエイターとなるのではないかと予想しております。それくらいの勢いがあるのが子ども系動画です。では、そんな子ども系動画をつくる際に気をつけたい法律を見ていくことにしましょう。

※2019年現在、チャンネル登録者を非公開にされてはいますが、日本一の登録者数を誇るのは某子ども系クリエイターであることを確認しています。

6 子ども系動画をつくる際に気をつけたい法律

子ども系動画では、親が自分の子どもを動画に出演させているところ、児童労働の問題と収益分配の問題があります。

(1)児童労働

子どもが嫌がっているにもかかわらず「出演しないとご飯をあげない」などのプレッシャーを与えて無理やり動画に出演させることは児童虐待にあたるおそれがあります。

児童虐待の防止等に関する法律
(児童虐待の定義)
第2条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。第十六条において同じ。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
(児童に対する虐待の禁止)
第3条 何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。

また、13歳未満の者に対価を与えて義務的に動画に出演させることは、児童労働にあたる可能性があります。

労働基準法
(最低年齢)
第56条1項 使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない。
第56条2項 前項の規定にかかわらず、別表第一第一号から第五号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満十三歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満十三歳に満たない児童についても、同様とする。
第118条 第六条、第五十六条、第六十三条又は第六十四条の二の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

そんなわけで、子どもの意思に反して動画に出演させるようなことは控えるべきでしょう。いずれにせよ、嫌がっている子どもを無理やり出演させたところでいい動画を撮ることは難しいと思いますので、子どもを動画に出演させたいなら上手にその気にさせる必要があるのでしょう。

(2)利益の分配 特別代理人

動画によって得た収益は全部親のものなのでしょうか。確かに、動画の収益は親の銀行口座に振り込まれるはずなので、一見すると全て親のお金ということになりそうです。しかし、子どもと親との間に何かしらの収益分配契約があると場合にはその契約に基づく権利が、仮にそれがないとしても不当利得返還請求権(民法703条)が子どもには発生していると思われます。あとあともめごとにならないように、あらかじめ収益の分配について親子間で契約をしておくのが無難だと思われます。ただし、次の規定に注意が必要です。

民法
(利益相反行為)
第826条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

つまり、子どもと契約する際に親は子どもを代理することができません。かといって、未成年者は単独で契約をすることができません。そのため、親子間で収益分配契約をするにあたっては子どもの特別代理人を選任する必要があるのです。

相続をきっかけとして親族が分断されるケースが絶えないように、お金が絡むと家族であっても埋まらない溝が生じる可能性があります。動画の収益は親が独り占め…ではなく、子どもの将来のために一部は子どもの銀行口座に預けておくことが後々の紛争を未然に防ぐことにつながります