YouTuberのための法律講座 第6章 共通事項編

0 動画で解説をみる

1 はじめに

この編では、動画クリエイターの多くに共通する事柄について解説します。加えて、動画に通行人が映った場合の注意点について、便宜上ここで触れておきます。さらに、人気クリエイターとなった場合の注意点についても解説します。

2 サムネイルの注意事項

動画共有サイトを用いる場合、多くの動画クリエイターが自作のサムネイルを使用します。サムネイルとは、タイトルとともに表示されている縮小画像を指します。

目立つ画像とともに「衝撃の結果に!」などと興味をそそる文字が記載されているサムネイルをよくみかけます。誇張気味な表現を用いているタイトルやサムネイルを指して「タイトル詐欺」や「サムネ詐欺」と呼ぶことがありますが、そのようなタイトル等により法律上の詐欺罪が成立するものではありません。

サムネイルで気をつけたいのは、他人の撮影した写真やイラストを使用する場合です。他人の撮影した写真には撮影者に、イラストにはイラスト作成者に著作権が発生しています。こうした写真やイラストを使用するには、撮影者やイラスト作成者の許諾を得る必要があります。許諾を得ずに他人の撮影した写真やイラストを使用した場合には、不法行為に基づき損害賠償請求が認められたり、不当利得返還請求が認められたりすることがあります。

民法
(不当利得の返還義務)
第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

また、他人の容ぼうが映った写真には、その他人の肖像権に注意しなければなりません。他人の目の部分だけを黒塗りして顔写真を使用したり、あるいは顔写真全体にモザイク加工をした上で使用したりするサムネイルをよく見かけますが、そうした処理をしても不法行為と評価される可能性があるのでご注意ください。基本的に、他人の容ぼうの写真は、その他人の許諾を得た場合に限って使用するようにしましょう。肖像権については、4で触れるのでこの程度にしておきます。

3 動画内BGMの注意事項

動画にBGMをつけることは、視聴者を飽きさせないようにするためにも、固定ファンを増やす上でも有用です。多くの動画クリエイターがBGMを駆使して見せ場を演出しています。自作のBGMを用いるのであれば、そのBGMが他人のつくったBGMと酷似している場合を除いて特に問題はありません。他方、他人のつくったBGMを用いる場合には、原則としてその人の承諾が必要です。

DOVA-SYNDROMEなど無料のBGMをまとめているサイトを利用する動画クリエイターも多いのではないかと思います。その際には、BGMの作者が定めた利用条件をよく読むようにしましょう。作者によっては、動画内や概要欄でのクレジット表記(この場合は作者名の表示)を求めていることがあります。利用条件に反する動画を公開すると、著作権法違反を理由とする動画の削除申請がなされることがありますので、十分に注意しましょう。

4 動画に通行人が映った場合の注意事項

動画に通行人が映ってしまった場合には、その人の肖像権に注意する必要があります。肖像権というのは、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を意味します。肖像権の侵害は不法行為となります。不法行為の条文はもう大丈夫ですよね。

肖像権を侵害されたかどうかは、以下の基準で判断されます。

最判平成17年11月10日(和歌山カレー事件判決)
「ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。」

すなわち、さまざまな事柄を考慮した上で、ガマンの限界を超えると言える場合に不法行為となるのです。とはいえ、個別的に判断されるので、「この程度ならガマンの限界を超えるとは言えないだろう」と安易に考えて、通行人が映りこんだ動画をそのまま公開するのは非常に危険です。

ではどうすればよいでしょうか。2つの対策法が考えられます。1つ目は、映り込んでしまった人の承諾を得ることです。2つ目は、映り込んでしまった人が誰であるかを特定できない程度にまでモザイク等の編集を加えることです。特殊な服装であれば、顔だけでなく衣服にもモザイク等の編集を加えるのが賢明です。

以上のような対策を施せば、肖像権で問題となることはほぼありませんのでご安心ください。

5 ゴミの処理について

動画クリエイターも事業者ですので、動画をつくるにあたって生じたゴミは家庭系廃棄物ではなく事業系廃棄物に該当します。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第3条1項 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
第16条 何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。
第25条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
十四 第16条の規定に違反して、廃棄物を捨てた者

そのため、動画をつくるにあたって生じたゴミを家庭ゴミとしてゴミ出ししていると、産業廃棄物処理法違反で取調べ等の捜査を受け、最悪の場合には刑務所に入らなければならない可能性があります。ただ、実際上問題となるのは、やってみた系の動画で大量購入した物品を処理する場合と料理系動画で捌いた魚や肉の処理をする場合とDIYをする動画の余った材料くらいでしょう。なぜなら、それ以外の動画で出るゴミは家庭ゴミと大差がないからです。とはいえ、動画をつくるにあたって生じたゴミは事業系廃棄物として適正に処理するのが望ましいです。

では、どのように処理すればよいのでしょうか。それは、次の条文に書かれております。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第6条の2第6項 事業者は、一般廃棄物処理計画に従つてその一般廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合その他その一般廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第七条第十二項に規定する一般廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する一般廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。

すなわち、事業系廃棄物は一般廃棄物処分業者に依頼して回収してもらうことになります。その際には、家庭ゴミとは異なり、費用が発生しますのでご注意ください。

また、ゴミの種類によっては産業廃棄物にあたることもあります。その場合には産業廃棄物処理業者に依頼して回収してもらうことになります。汚泥や廃油・廃プラスチック類などが産業廃棄物に該当しますが、より詳しく何が産業廃棄物にあたるかは、以下のサイトをご確認ください。

公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター
(http://www.jwnet.or.jp/waste/knowledge/bunrui.html)

6 人気クリエイターになったときに気をつけたい法律

人気の動画クリエイターになると、人気になる前と比較して状況が一変します。当然のことながら、動画に広告をつけている場合には動画から得ることのできる収益は激増します。また、企業から動画作成の依頼(いわゆる企業案件)がきたり、講演の依頼がきたり、YouTuber事務所からのスカウトを受けたりすることがあります。

このように、人気の動画クリエイターとなると可能性がどんどん広がります。一方で、動画以外の面でも法律に気をつける必要が生じます。ここでは、人気の動画クリエイターになった際に気をつけたい法律について見ていきましょう。

(1) 人気クリエイターになったときに気をつけたい法律

<特に気をつけたい法律>
民法
商法
刑法
著作権法

(2)所属事務所との権利関係

特定の事務所に所属する場合には、その事務所との間で契約を締結することになるはずです。その場合、通常、契約書を交わすことになります。人気動画クリエイターといえど、法律については事務所の方が詳しいことでしょうから、とても不利な契約を結ばされてしまうこともありえます。

特に注意しておきたいのは次の3つです。それは、①動画の権利に関する条項、②違約金に関する条項、③収益配分に関する条項です。

①動画の権利に関して、契約書上、誰が権利を持つのかを確認する必要があります。動画の所有権や知的財産権を動画クリエイターが持つ契約になっていない場合(事務所がこれらの権利を持つ契約の場合)には、契約をするかどうかを考え直す必要があると思います。

②違約金に関して、高額の違約金が定められている場合には注意が必要です。違約金の定めがあると、それだけの損害が実際に発生していなくても、定められた額の請求をすることが可能となります。

③収益分配に関して、動画の収益を所属事務所に対して分配しなければならない契約になっている場合には注意が必要です。たとえば、動画であげた収益の10%を所属事務所に対して分配する契約になっている場合、人気クリエイターだと月に数万円から数十万円を所属事務所に分配することになります。事務所に所属することにそれだけのメリットを見い出せるかがポイントとなります。

(3)あやしい企業案件に注意

人気の動画クリエイターが企業から動画作成の依頼を受ける際には、多額の報酬を約束されます。そうすると、クリエイター側もその依頼を受けたくなることでしょう。しかし、一歩踏みとどまって考えるべきことがあります。

まず、依頼先の企業について調べるようにしましょう。おおよそ、①インターネット上での企業名やサービス名での検索、②登記簿謄本の取得、③所在地調査をすれば十分かと思われます。

まず、①インターネット上で企業名やサービス名を検索したときに、その企業やサービスが詐欺等の犯罪にかかわっているというような評判があるかどうかをチェックします。そのような評判がある場合には、その企業からの依頼は受けないほうが無難でしょう。

次に、②登記簿謄本を取得し、実在する会社であるかどうかをチェックします。各地の法務局で取得することができますが、登記情報提供サービスを利用することによってインターネット上でチェックすることもできます。そもそも登記が存在しない場合や登記簿上に不審点(商号を頻繁に変更しているなど)がみられる場合には、その企業からの依頼は受けない方が無難です。

そして、③企業の所在地に赴き、実際にその企業が所在しているかどうかをチェックします。既にお分かりだと思いますが、実際にその企業が所在していない場合には、その企業からの依頼は受けない方が無難です。

私もこれまでいくつかの企業案件を受けたことがありますが、その際には、上記の3つのことをおこないました。さすがに、「普段えらそうに講釈を垂れ流している弁護士がだまされた」となっては不名誉極まりないですからね(笑)。みなさんもあやしい企業案件には十分に注意してくださいね。