Q&A パワハラを受けた被害者は法律上なにができますか?

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パワハラを受けた被害者は法律上なにができますか
民事訴訟、仮処分、労災申請、告訴状・被害届の提出などができます。

民事訴訟

民事訴訟をすることで、加害者に対して、パワハラを原因として発生した治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料、弁護士費用などを請求することができます。実際にあった事例や慰謝料の額は以下の記事の真ん中あたりを参考にしてくださいね。

パワハラとは?どこからがパワハラ?パワハラの判断基準を弁護士が解説します

民事訴訟では、①労働者側がパワハラだと主張する行為があったのかなかったのか、②その行為を違法と評価することができるのかという2点がよく争いになります。①は証拠の問題です。パワハラの事案では証拠が少ないことが多く、少ない証拠の中でどのようにして裁判所を説得するのかという観点が重要です。②は行為の違法性の問題です。ただの指導なのか、それとも指導を超えたパワハラなのかという問題です。暴力を伴うものはパワハラを認定されやすい傾向にありますが、他方で精神的な攻撃にとどまるものはそれが悪質でない限りパワハラを認定されにくい傾向にあります。

仮処分

労働者の人格権などを守るべき権利として、暴力や脅迫などを内容とするパワハラをやめるように求める仮処分の申立てをすることができます。「職場は気に入っているけど、あのパワハラ上司だけはどうしても…」という方に検討していただきたい手続きです。

労災申請

パワハラにより精神障害が発症した場合には、労働者災害補償の申請をするという選択肢があります。申請をした場合には、以下の要素を総合的に検討することで判断が下されます。

・おこなわれたパワハラの言動自体のひどさや厳しさ
・パワハラ行為が行われた状況
・パワハラ行為がおこなわれた後に業務への支障が出たか
・パワハラ行為が継続したり、執拗に繰り返されたかどうか

たとえば、「上司から【死んでしまえ】と言われた」「会議中に【私はウソつきです】と黒板に書かせた」といった事案で、人格を否定されるような言動があったということで、心理的負荷が強いものと評価された例があります。労災申請も訴訟と同様に一人でするには大変な手続きになりますので、検討中の方は一度弁護士に相談されることをオススメします。

告訴状・被害届の提出

パワハラの内容が暴行、傷害、脅迫といった犯罪行為にあたる場合には、告訴状や被害届を警察署や検察庁に提出することができます。告訴状であれば、たとえば、こんなイメージの書面になります(氏名・住所・宛先などは省略しています)。

第1 告訴の趣旨

 被告訴人の下記所為は、刑法208条(暴行罪)に該当すると思料しますので、被告訴人の厳重な処罰を求めるため、告訴をします。

第2 告訴事実

 被告訴人は、令和元年9月2日午前9時30分ころ、〇〇県〇〇市〇〇丁×丁目×番×号に所在する株式会社××の第3会議室において、告訴人の営業成績が芳しくないことに腹を立て、告訴人に対し、右手拳で告訴人の左頬部を3回殴打する暴行を行ったものである。

第3 告訴の事情

 告訴人及び被告訴人はいずれも株式会社××に勤める会社員で、被告訴人は告訴人の直属の上司にあたります。株式会社××では、月初の午前9時頃に同社の営業部所属社員の営業成績の報告会を開催します。令和元年9月2日も同様に、月初の報告会が開かれました。同日の報告会で、告訴人が、先月の営業成績について告げたところ、被告訴人は「なんだその成績は。やる気あんのか。」などと語気を強めて言いながら、立ち上がって告訴人のほうに向かってきました。私が「やる気はあります。」と言ったところ、被告訴人は、「だったらなんだこの数字は、なめてんのかこの野郎。」と怒鳴った後、右手で告訴人の右頬を3回殴りつけたのです。
 突然の出来事に、告訴人はその場で立ち尽くすしかありませんでしたが、会議に同席していた同僚が被告訴人を抑えつけたことにより、その場が収まるに至りました。
 
第4 立証方法

参考人 Z(告訴人の同僚)

こうした書類を提出することで、警察や検察といった捜査機関が犯罪の事実を知り、捜査が進むことになります。捜査が進めば、パワハラの加害者は取り調べを受けたり、逮捕されたりする可能性がでてきます。

パワハラがどんな犯罪行為になりうるのかを知りたい方は以下の記事をご参照ください。

Q&A パワハラが法律上の犯罪となることはありますか?

2 関連情報―法律以外の方法

窓口相談

勤務先の会社にハラスメントの窓口がある場合には、その窓口に相談するのは一つの手段です。また、ハラスメントの窓口がない場合でも、コンプライアンスに関する窓口や、苦情処理窓口などの窓口に相談するのもよいと思います。ただし、必ずしも解決に結びつくわけではありませんので、これらの窓口に期待をしすぎるのは禁物です。

労働局に相談

労働局では、労働基準法や雇用契約法以外の労働者が抱える法的な問題についてアドバイスを受けることができます。そのため、パワハラの被害者がパワハラについて労働局に相談することも可能です。他方で、労働局は被害者が受けた行為がパワハラだという認定をしてくれるわけではありません。パワハラだとの認定を受けたい場合には、それは裁判所の仕事ですので、民事裁判を提起することになります。

SNSなどで公表

最近は「〇〇社の××さんからパワハラを受けました」などと何か起こった場合にSNSで公表する方が目立っています。公表により注目が集まって事態が改善することもあるのですが、自分自身が名誉毀損やプライバシー権侵害などの加害者になってしまうおそれもあります。法的なリスクの大きい行為ですので、弁護士の私からすると、絶対にやめたほうがいいと思います。