肖像権とは?どんな場合に肖像権侵害になる?

1 肖像権とは

(1)肖像権の意味

肖像権(Portrait rights)とは、みだりに容ぼう・姿態を撮影されない権利のことをいいます。ここでは、撮影となっていますが、肖像権は撮られた写真をみだりに利用・公表されない権利を含みます。このような権利を侵害した場合には、不法行為(民法709条)が成立し、損害賠償責任を負う可能性があります。

(2)判例のいう肖像権

肖像権に関しては、以下の最高裁判例が重要です。

最高裁昭和44年12月24日
個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されない自由を有するものというべきである。これを肖像権と称するかどうかは別として、少なくとも、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法十三条の趣旨に反し、許されないものといわなければならない。

この判例は「肖像権」と呼ぶかどうかについては留保しています。しかしながら、中身を見ると、肖像権についてそれが権利であることを認める内容になっています。

上記判例は、警察官による撮影が問題になったケースでしたが、週刊誌の撮影が問題となったケースとして、最高裁平成17年11月10日は、「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」とした上で、「人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当であ」るとも述べています。こうして、一般人の撮影・公表であっても不法行為となりうることが最高裁の判決においても明らかとなりました。

(3)肖像権の類型

肖像権は、次の3つの権利を内容としています。

  • みだりに撮影をされない権利
  • 撮影された写真、作成された肖像を利用されない権利
  • 肖像の利用に対する本人の財産的利益を保護する権利

上の2つは人の人格を保護していますが、3つ目は人や物の財産的な側面を保護しています。3つ目はパブリシティ権と呼ばれるものでして、別の記事で解説することにします。

2 肖像権の要件

(1)判例による要件

肖像権を侵害するかどうかの判断については、以下の判例があります。

最高裁平成17年11月10日
ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。

要するに、様々な事柄を考慮した上で、受忍限度を超える場合に肖像権侵害が認められるということです。受忍限度というのがわかりにくければ、“ガマンの限界”と置き換えるとわかりやすくなると思います。ただ、そのときのガマンの限界というのは、肖像権が侵害された自分のガマンの限界ではなくて、社会一般的にみたときのガマンの限界をいいますのでご注意ください。次に、判例が挙げている考慮要素についてもみておきましょう。

被撮影者の社会的地位

公的な地位であれば適法の方向に傾きます。逆に、一般人であれば違法の方向に傾きます。

撮影される人の活動内容

公的な活動であれば適法の方向に傾きます。逆に、私的な活動であれば違法の方向に傾きます。

撮影の場所

公共の場所であれば適法の方向に傾きます。逆に、家などのプライベートな場所については違法の方向に傾きます。

撮影の目的

公益を図る目的であれば適法の方向に傾きます。お金儲けなど私益を図る目的であれば違法の方向に傾きます。

撮影の態様

他のものを撮影していてたまたま映り込んだなど通常の態様の場合には適法の方向に傾きます。隠し撮り等の場合には違法の方向に傾きます。

撮影の必要性

撮影の目的との関係で必要性があれば適法の方向に傾きます。逆に、撮影の目的との関係で必要性がなければ違法の方向に傾きます。

(2)肖像権侵害の具体的事例

以下では、肖像権侵害について判断をした裁判例を挙げておきます。

私的生活空間における姿の撮影
部屋のキッチンにいる姿を撮影ところで、人が自己の容貌・姿態をその意に反して撮影され、広く公表された場合、羞恥、困惑などの不快な感情を強いられ、精神的平穏が害される結果を招くことは、通常予想されるから、こうした不利益を受けないことは個人の人格的利益として法的保護の対象とされるベきである。殊に人が自己の居宅内において、他人の視線から遮断され、社会的緊張から解放された形で個人の自由な私生活を営むことは、人格的利益として何よりも尊重されなければならないから、居宅内における容貌・姿態を第三者が無断で写真撮影し、広く公表することは、被撮影者に一層大きな精神的苦痛を与えるものであり、不法行為を構成することはいうまでもないところである。これを本件についてみると、前記のとおり本件写真は、夕刻、相当程度の高さのある塀の外側から撮影者が背伸びをした姿勢で、居宅の一室であるダイニングキッチン内の原告の姿態を被写体として、原告から気付かれないままに撮影を敢行してできあがったものであり、しかも、それが原告の容貌・姿態を捉えたものであると容易に判明するような形で承諾なしに多数の発行部数を有する雑誌に掲載されたものであるから、その撮影及び掲載はともに原告の人格的利益を侵害する行為とみざるを得ない(東京地裁平成元年6月23日)。
入院加療中の姿病院の中は、患者が医師に身体を預け、秘密ないしプライバシーの細部まで晒して、その診療を受ける場所である。そして、患者が病院内において自らの秘密ないしプライバシーを細部まで開示するのは、病院の唯一の目的である患者の診療に必要不可欠であるからであり、これをおいて他に理由はない。そして、開示された秘密ないしプライバシーは、相互の信頼に基づき診療の目的にのみ使用され、他の目的に使用されないことが、法的にも社会的にも承認され、保証されているのである。したがって、病院の中における患者の生活自体は、それが診療と関係がないと認められる特段の事情がない限りは、他から侵害されてはならないものというべきである。そして、患者の肖像権についても同様というべきである。これを要するに、一般に、病院内は、完全な私生活が保証されてしかるべき私宅と同様に考えるべきである。

また、報道する側からいえば、Xにつき四〇度近い熱があり入院したが、原因が簡単には分からず転院したこと、車椅子に座って移動するような状態であることなど事実を丹念に摘示していけば、Xの健康状態について真実がどうであるかを報道することは可能であり、本件であえてXの写真を撮影し掲載しなければならない必要性までは認めがたいというべきである(東京地裁平成2年5月22日)。

その他公開を欲しない状況における姿
告別式での姿告別式は当日(平成八年六月一日)午後一時から執り行われたが、報道陣に対する写真撮影は同日午前一一時から正午までの間と指定され、正午過ぎ以降はマスコミ関係者は告別式会場から退席することとされたこと、しかしながら、告別式参加者の出入りのため、入口の戸が解放されていたため、一部のマスコミ関係者が規制を無視して会場内に立ち入っていたこと、二枚目の写真は、原告が午後〇時半ころ告別式会場へ入場するため建物内へ入り、通路上で、偶々近くにいたカメラマンに対し、マスコミに対する抗議の手紙を交付するべく、その腕をとった場面を撮影したものであり、一枚目の写真は、告別式において悲しみに沈む原告の姿を開放されていた入口の戸付近から撮影したものであることが認められ、右認定に反する乙六、九、証人Zの証言は甲一一に照らしたやすく信用できない。

右事実によれば、右二枚の写真は、原告の意に反して撮影されたと認められるし、ことに一枚目の写真のように悲しみにうちひしがれた姿を他人に公開されることは通常誰も望まないところであることに照らせば、原告が当時渦中の人であったことを考慮しても、このような写真を掲載することについて原告の承諾がない以上、原告の肖像権を侵害するというべきである(東京地裁平成10年9月29日)。

法廷での手錠をされ腰縄を付けた状態での被疑者の姿前記のとおり,被上告人は,本件写真の撮影当時,社会の耳目を集めた本件刑事事件の被疑者として拘束中の者であり,本件写真は,本件刑事事件の手続での被上告人の動静を報道する目的で撮影されたものである。しかしながら,本件写真週刊誌のカメラマンは,刑訴規則215条所定の裁判所の許可を受けることなく,小型カメラを法廷に持ち込み,被上告人の動静を隠し撮りしたというのであり,その撮影の態様は相当なものとはいえない。また,被上告人は,手錠をされ,腰縄を付けられた状態の容ぼう等を撮影されたものであり,このような被上告人の様子をあえて撮影することの必要性も認め難い。本件写真が撮影された法廷は傍聴人に公開された場所であったとはいえ,被上告人は,被疑者として出頭し在廷していたのであり,写真撮影が予想される状況の下に任意に公衆の前に姿を現したものではない。以上の事情を総合考慮すると,本件写真の撮影行為は,社会生活上受忍すべき限度を超えて,被上告人の人格的利益を侵害するものであり,不法行為法上違法であるとの評価を免れない(最高裁平成17年11月10日)。
護送車に乗せられて拘置所から裁判所に護送される途中の車内の被告人の姿本件写真は、東京都足立区千住曙町付近の一般道路において、東京地方裁判所に向かう途上にある護送車の鉄格子のはまった窓から見える原告の上半身部分を撮影したものであり、原告が刑務官三人に前後を囲まれて窓の外を眺めながら座っている姿を撮影されている。

被告が本件写真の撮影及び本件週刊誌への掲載について原告の承諾を得ていないことは、当事者間に争いがなく、しかも、本件写真は、それが原告の容貌及び姿態を捉えたものであると容易に判明するような形で本件週刊誌に掲載されたのであるから、本件写真の掲載及び頒布が原告の肖像権を侵害することは明らかである。

本件写真の掲載は、原告の肖像権を侵害するものであり、原告本人によれば、被告が本件写真を保存が可能な形で本件週刊誌に掲載し不特定多数の者に頒布したことによって、原告は、屈辱感、羞恥感等の精神的苦痛を被ったことが認められる(東京地裁平成5年5月25日)。

通常は公開を欲しないような姿である場合
30年以上前に雑誌に掲載された際の水着姿右二枚の写真の内、水着姿の写真は原告の肖像権を侵害するものと認められる。けだし、たとえ原告がB殺害の容疑で逮捕されたことが公共の利害に関する事実でありその報道にあたって被逮捕者たる原告の写真を掲載することが許されるとしても、原告の昭和三一年当時の水着姿の写真まで掲載する必要性ないしは相当性は認められないからである。
学生時代の少年週刊誌に掲載された際の水着姿肖像権を放棄し、自らの写真を雑誌等に公表することを承諾するか否かを判断する上で、当該写真の公表の目的、態様、時期等の当該企画の内容は、極めて重要な要素であり、人が自らの写真を公表することにつき承諾を与えるとしても、それは、その前提となった条件の下での公表を承諾したにすぎないものというべきである。したがって、公表者において、承諾者が承諾を与えた前記諸条件と異なる目的、態様、時期による公表をするには、改めて承諾者の承諾を得ることを要するものというべきであり、公表自体についての承諾があれば、その公表の態様等に違いがあっても、肖像権の侵害にはならないとする被告の主張は失当である。

また、このことは、本件写真2のように、一度、当初の企画のとおりの掲載がされた写真を再度掲載する場合にも同様に当てはまるのであって、再掲載された雑誌において、当初掲載された雑誌の誌面を紹介するために、当該写真を再掲載する場合にはなお、当初の企画の際にされた承諾の範囲内にあると考える余地もあるものの、それを越えて、当該写真を当初のものと異なる目的、態様の下に公表することは、当初約束あるいは留保された公表の範囲を超えているものであるから、このような場合には、当該再掲載について、改めて肖像権を有する者の承諾を必要とすると解するのが相当である。

そして、本件においては、証拠(甲9)によれば、本件写真2が再掲載された本件雑誌4の該当部分の誌面は、確かに、当初、本件雑誌5に掲載された際、本件写真2上に印刷された活字ごと本件雑誌4に掲載したものであるから、一見すると当初掲載された本件雑誌5の誌面を紹介するものであるかのようにも思われるが、本件写真2の下に印刷された本文部分には、原告Aが「法政大学時代に六本木の”夜の店”で働いていた」との本件記事の内容及びその公表に伴う原告Aによる本件訴訟の提起について触れ、「タレントなどにまじり、その見事な肢体を惜しげもなく披露している。」との記載もあることが認められ、これらの事実からすると、本件写真2の再掲載は、本件写真2が本件雑誌5に掲載された事実を紹介するものではなく、実質的には本件写真2それ自体の再掲載が主たる目的であると認めることができるから、本件写真2の再掲載についても、肖像権を有する原告Aの同意、あるいは肖像権の放棄等の事実が認められない限りは、肖像権侵害の不法行為を構成するものというべきである。

スワッピングパーティに参加した際に撮影された裸姿人は、一般にその裸体を撮影した写真、特に性器部分に修整を施していない写真をみだりに公表されることによって、当該写真が無断撮影されたものであるか否かにかかわらず、不快、羞恥等の精神的苦痛を受けることはいうまでもないから、法的に保護される人格的利益の中には、承諾なしに性器部分を露出した自己の全裸写真をみだりに公表されないという利益も含まれるというべきである。本件写真は、後記のようにいわゆる隠し撮りをしたものではなく、原告がいわゆるスワッピングパーティーに参加した際にその場に居合わせたフリーのフォトライターによって撮影されたその全裸写真であるが、被告松尾及び被告鈴木がこれを性器部分に何ら修整を施すことなく本件雑誌に掲載して公表した行為は、自己の性器部分まで撮影した裸体写真について、一般人がその公表を欲しないことは明白であるから、原告の右人格的利益を侵害したもので不法行為を構成するというべきである(東京地裁平成2年3月14日)。
掲載方法に問題がある場合
ソープランド内の女性の全裸写真と並べて写真を掲載ソープランド内の女性の全裸写真と並べて掲載されていることを考えると、原告…の承諾を得ることなく掲載することは、原告…の肖像権を侵害するものと認められる(東京地裁平成15年7月15日)。

3 肖像権侵害の効果

(1)はじめに

肖像権を侵害した場合には、不法行為が成立し、損害賠償責任が生じることがあります。それ以外にも、原状回復処分として謝罪広告の掲載義務が生じたり、差止請求が認められることがあります。

  • 損害賠償請求 → お金の請求
  • 差止請求   → 出版禁止・出版停止・記事や書き込みの削除など
  • 原状回復処分 → 謝罪広告など

(2)損害賠償請求権

プライバシー権の侵害を侵害する行為が不法行為(民法709条)の要件を満たす場合には、慰謝料などの損害の賠償を請求することができます。

民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

つまり、①故意又は過失、②権利又は法益侵害、③損害の発生、そして④因果関係という要件を満たす場合に、損害賠償の請求が可能となるのです。プライバシー権が侵害されている場合は、②の要件を満たしていることになりますので、残りの①③④の要件を満たす必要があります。

不法行為の要件についての詳しい解説は以下の記事をご参照ください。

不法行為とは? 日常生活のトラブルで例えながら解説します

(3)慰謝料の額

では、肖像権が侵害された場合の慰謝料額はいくらくらいになるでしょうか。裁判における認容額をながめると下は3万円から上は400万円までと幅が大きいです。公開されたくないような写真等であればあるほど慰謝料額が高額になる傾向にあります。特に、犯罪に関連する写真や水着や全裸の写真などに関しては、慰謝料額が高額となっています。

(4)原状回復処分

肖像権侵害に基づく原状回復処分としての謝罪広告請求については、裁判例上、肯定例と否定例があります。肯定例は東京地判平成2年5月22日です。

東京地裁平成2年5月22日判決
民法は、名誉侵害については、侵害の態様が広く将来に渡って継続し、かつ、損害の内容につき金銭的評価が困難であることに照らし、その損害の回復には現実的な損害回復方法である特定的な救済を認めるのが適切、かつ、合理的である場合があるとして、これを許容しているものと解される。したがって、侵害の態様や損害の性質・内容に照らし、特定的な救済が適切、かつ、合理的であると認められる場合には、名誉侵害と同様に、金銭賠償に代えまたはこれと共に特定的な救済を認めるのが相当である。
本件の肖像権及びプライバシー侵害の原因事実の本体は、本件写真を多数の読者が認識するというところにあるから、例えば、本件写真を掲載した雑誌を回収することにすれば、物理的に読者の認識を遮断することになり、将来の損害の除去という点からすれば効果的なものといえる。ただ、頒布後長期間経過した現段階では、これを回収することは困難であり、実効性のある特定的な救済とはなりえない。しかし、雑誌自体の回収によらなくても、本件写真がXの肖像権及びプライバシーを違法に侵害するものであり、雑誌に公表することが法律上本来許されないものであることを読者に認識させる方法を採用すれば、読者の本件写真に対する認識の仕方を変えることにより本件写真の社会的な意味を質的に変容させ、もって本件肖像権及びプライバシーの侵害の原因を相当程度減少させることができるものというべきである。そして、そうすることによって、将来の侵害ばかりでなく、過去の侵害によるXの精神的な損害をも一定程度軽減することができるものと考えられる。このようにみてくると、本件においては、民法七二三条を類推適用して被告らに謝罪広告を命ずるのが、損害の原状回復の方法として、有効、適切、かつ、合理的であり、また公平の理念にも合致するというべきである。

否定例は、東京地判平成元年6月23日です。この裁判例は、週刊誌の肖像権侵害を認めつつも、警告文を図書館に送付し貼付を求める請求を認めませんでした。

東京地判平成元年6月23日
本件フライデーは不特定多数の読者、その他第三者の手に行きわたることで、既に被告の管理支配下から離れているのであり、被告が本件フライデーの回収、付箋貼付を実現しようにも、第三者に対しこれを求め得る権利関係にはなく、その任意の履行に期待する他はない。しかも、本件フライデーのような週刊誌は、その性格上、一般読者において読後長期間保存することは通常多くないものと推測され、仮に原告の求めるような措置がなされても、一般読者が回収に応じる可能性は現実的には低いものといわざるを得ない。また、各図書館に対し前記措置がとられたとしても、各図書館がどのような対応をとるのかも不確定なものにとどまる(……)。
右のとおり、原告の肖像が他人の目に触れる事態を排除、予防する方法として、原告の求める措置は、甚だ不確実で実効性に欠けるものといわざるを得ないのであって、法的救済方法として適切かつ相当なものとはいい難い。
したがって、本件においては未だ原告に前記のような措置を求める権利を認めることは困難といわなければならず、原告主張の将来にわたる不利益は金銭賠償額の決定にあたり斟酌することをもって足りるものというべきである。

プライバシー権侵害の場面とは異なり、謝罪広告をすることが新たな肖像権侵害を生むわけではないので、謝罪広告命令をより認めやすい状況にあるとはいえるでしょう。もっとも、個別的な判断になりますので、肖像権侵害があっても必ずしも謝罪広告命令が認められるわけではありませんのでご注意ください。

(5)差止請求

肖像権侵害については、数は少ないですが、裁判例上差止請求が認められています。ただし、その要件を一般的に示したものは見当たりません。次の2つの裁判例をみてください。

東京地裁平成3年9月27日決定
一般的に、人格的利益の一つとして、人は自己の肖像を無断で制作、公表されない利益を有し、これを侵害され又は侵害されるおそれのある者は、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は、将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる場合があると解される。いかなる場合に可能かは、肖像の制作、公表によって蒙る本人の不利益、被害感情などと、これにより得られる肖像の制作、公表をする者及び公共の利益とを比較衡量して決すべきであり、これは肖像の形態(写真、彫刻、絵画等)、展示の目的(特に公共の利益の有無)、展示の形態その他の具体的事情に基づき判断すべきである。
東京地判平成21年8月13日
人の裸体を撮影した写真が一般に公表されて公衆の目に触れることになった場合には、被撮影者の羞恥心が著しく害され、これを事後的な金銭賠償で回復することは著しく困難である。したがって、人の裸体を撮影すること、また、人の裸体が撮影された写真を公表することは、被撮影者の同意があるなど、特段の事情がない限り許されず、被撮影者は、人格権としての肖像権に基づき、撮影された裸体の写真が公表されようとする場合には、これを事前に差止めすることができるものと解するのが相当である。

基本的には、平成3年決定が述べるように、本人側の不利益と侵害者側の利益を比べて判断することになるかと思います。そして、平成21年判決が述べるように、裸体に関しては公表されることによる本人の不利益が著しい以上、特段の事情がない限り差止請求が認められるのだと整理することができるでしょう。