モラハラとは?モラハラ夫の特徴との対処法を弁護士が教えます

1 モラハラ(モラルハラスメント)とは

モラハラとは、モラルハラスメントの略で、言葉や態度で繰り返し相手を攻撃し、人格の尊厳を傷つける精神的暴力のことをいいます。そのひとつひとつをみたときには些細な言葉や態度であったとしても、それが繰り返されることで、被害者を苦しませ、さらには被害者の人格を破壊し、死に追いやることすらあります。

夫婦のモラハラのほかにも、家族間でのモラハラ、職場でのモラハラ、学校でのモラハラなどさまざまな場所で問題となりますが、今回は夫が妻に対しておこなうモラハラを取り上げつつ、その特徴や対策などをお伝えします。

2 モラハラ夫の特徴は?

あなたの夫が以下の項目のうち5つ以上の項目にあてはまるようなら注意が必要です。

① 夫は、自分が偉くて重要人物だと思っている
② 夫は、自分が成功したり、権力を持ったりできるという幻想を持ち、その幻想には限度がない
③ 夫は、自分が特別な存在だと思っている
④ 夫は、いつも他人の賞賛を必要としている
⑤ 夫は、すべてが自分のおかげだと思っている
⑥ 夫は、人間関係のなかで相手を利用することしか考えない
⑦ 夫は、他人に共感することができない
⑧ 夫は、他人をうらやましがることが多い

モラハラの加害者のひとつの特徴としては、自己愛が深いことが挙げられます。実は、上の項目のうち5つ以上の項目ににあてはまる人は、自己愛性人格障害でして、モラハラ加害者が持つ特徴の1つを持っていることになります。

モラハラ加害者のもうひとつの特徴は、自分の身を守るために他人の精神を平気で破壊することです。うまくいかないことはすべてほかの人に押し付けたり、罪悪感がなかったり、相手を傷つけることによって自分が偉いと感じたりします。

あなたの夫がこれらの特徴を持つようでしたら、あなたが夫から受けた理不尽な行為はモラハラだと疑ってみることをオススメします

3 モラハラの事例

では、実際にモラハラとされるのはどういったケースでしょうか。以下では、モラハラの典型的な例をあげておきます。

  • 怒鳴る。強い口調で命令する。
  • 何時間もしつこく説教する。問い詰める。反省文を書かせる。
  • 土下座を強要して謝らせる。
  • あなたが大切にしている物を壊す。勝手に捨てる。
  • あなたが病気になっても看病しない。病院に行かせない。
  • 財布・携帯を取り上げ、部屋に閉じ込める。
  • 「殺すぞ」「死ね」などと脅す。
  • 「出ていけ!」という。家から閉め出して、なかに入れない。
  • 何を言っても無視して口をきかない。
  • 大きな音を立てて(ドアを閉めるなどして)威嚇する。
  • あなたの実家や親戚、友達をばかにして悪口を言う。
  • あなたが人前でした発言、行為についてダメ出しをする。
  • 「頭が悪い」「役立たず」「何をやらせてもできない」などと言って侮辱する。
  • 異常な嫉妬をする。
  • 料理に不満を言う。作っても食べない。
  • 服装・髪型・体型などの好みを押し付け、従わないと怒る。
  • 自分のメールにすぐ返信しないと(電話にすぐ出ないと)怒る。
  • 生活費を渡さない。またはわずかしか渡さない。
  • あなたには極端な節約を強いるが、自分の趣味にはお金を惜しまない。

出典:本田りえほか「『モラル・ハラスメント』のすべて 法の支配から逃れるための実践ガイド」29~32頁(講談社・2013年)

いかがでしょうか?あなたが夫から以上のような行動や態度を受けているのであれば、まずは自分がモラハラを受けているということをしっかりと認識し、一刻も早く対処法を考えるべきです。なぜなら、モラハラは放っておけばどんどんとエスカレートするおそれが強いからです。あなたがモラハラを放っておくことで、矛先が子どもに向くことすらあります。

4 モラハラ夫への対処法

(1)DV防止法による保護・相談・カウンセリング

もし、夫からあなたが受けたモラハラが暴力や人格を否定されるような行為を伴っていて、さらにそれが続くことにより生命または身体に重大な危害を受けるおそれが大きい場合には、DV防止法(配偶者からの暴力の防止および被害者の保護等に関する法律)により、裁判所に申し立てることで、モラハラ夫に対して6か月間のあなたへの接近禁止や2か月間の退去命令を命じることができます。以下、条文を掲載しておきます。

第10条1項 被害者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫(被害者の生命又は身体に対し害を加える旨を告知してする脅迫をいう。以下この章において同じ。 )を受けた者に限る。以下この章において同じ )が、配偶者 からの身体に対する暴力を受けた者である場合にあっては配偶者からの更なる身体に対する暴力(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。第十二条第一 項第二号において同じ。)により、配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた者である場合にあっては配偶者から受ける身体に対する暴力(配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。同号において同じ。)により、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、当該配偶者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者。以下この条、同項第三号及び第四号並びに第十八条第一項において同じ )に対し、次の各号に掲げる事項を命ずるものとする。ただし、第二号に掲げる事項については、申立ての時において被害者及び当該配偶者が生活の本拠を共にする場合に限る。
一 命令の効力が生じた日から起算して六月間、被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この号において同じ )その他 の場所において被害者の身辺につきまとい、又は被害者の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないこと。
二 命令の効力が生じた日から起算して二月間、被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること及び当該住居の付近をはいかいしてはならないこと。

1項については括弧が多すぎるので、本文だけ読みたい人のためにマーカーで線を引いております。このような保護命令に違反をすることは犯罪とされておりまして、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

モラハラにより生命または身体に重大な危害を受けるほどの程度には至っていなくても、モラハラ夫に悩まされている場合には、配偶者暴力支援センターに相談をしたり、カウンセリングを受けたりすることができます。

配偶者暴力相談支援センター一覧

(2)ストーカー規制法による警告・禁止命令

モラハラ夫とあなたとが別居している場合、ストーカー規制法による警告や禁止命令を出してもらうことも検討すべきです。ストーカー規制法にいう「つきまとい」にあたれば、このような対処も可能になります。以下、条文を掲載します。

第2条 この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
三 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
八 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。
つきまといにあたるというためには、好意の感情やそれが満たされないことによる恨みの感情を満たすために、一から八に記載されているようなことをしている必要があります。別居中のモラハラ夫が待ち伏せをしてきたり、あなたの行動を監視するなどしているようでしたら、警察署に行ってモラハラ夫に対して警告や禁止命令を出してもらいましょう

(3)離婚

あなたはこれから先もずっとモラハラ夫とやっていきますか?

この質問に対して、「はい」と即答できるなら、離婚を考える必要はありません。しかし、この質問に対して、「いいえ」と回答したり、「はい」と回答した場合したとしても一瞬でも戸惑ったのであれば離婚を考える必要があります。

モラハラが「婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条1項5号)にあたるとして、離婚を認める裁判例があります。

横浜地裁小田原支部昭和26年2月5日
妻の夫に対する「この家は私がいたからこそ買えたのだ、半分は自分の物だから壊して持っていく」という発言や、夫の母に対する「鬼婆」「今に見ていやがれ」などといった発言が婚姻を継続しがたい重大な事由にあたるとして、夫からの離婚請求を認めました。
横浜地裁昭和59年2月24日
妻に夫に対する「いじめられた」「結婚をして損をした」「馬鹿」「威張るな」などの発言や、夫の母に対する「ばばあ、早く死んでしまえ」などといった発言が婚姻を継続しがたい重大な事由にあたるとして、夫からの離婚請求を認めました。
大阪高裁平成21年5月26日
夫が生活力をなくし生活費を減らしたのと同時期から、妻が夫に対して、朝食・昼食の準備をしなくなり、長年仏壇に祀っていた夫の先妻の位牌を勝手に親戚に送りつけたり、夫の青春時代からのアルバムを燃やしたりしたことが婚姻を継続しがたい重大な事由にあたるとして、夫からの離婚請求を認めました。

これらは夫からモラハラ妻に対する離婚請求ですが、その逆のケースである妻からモラハラ夫に対する離婚請求を考えるにあたっても参考になる裁判例です。

(4)損害賠償

あなたがモラハラ夫から受けたモラハラ行為が不法行為(民法709条)に当たる場合には、あなたはモラハラ夫に対して損害賠償(慰謝料など)を請求することができます。以下の裁判例をご覧ください。

東京高裁昭和54年1月29日
夫が長男のことを「自分の子ではない」と発言したり、離婚をしようとして昼夜問わず執拗に妻方に嫌がらせ電話をしたり、妻の母の名前が「しま」であるのに宛先を「死魔」としたハガキを出したり、自分の印鑑を妻に盗まれたと虚偽の主張に基づき訴訟を提起したりしたことが不法行為にあたるとして、慰謝料として500万円を認定しました。

この裁判例では500万円という高額の慰謝料が認められています。残念ながら、モラハラにより高額の慰謝料を請求できるケースは多いとはいえませんが、このようなケースもあるということをご理解いただければと思います。不法行為についてもっと詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてくださいね。

不法行為とは? 日常生活のトラブルで例えながら解説します

5 モラハラ夫の対処にあたって重要なこと

モラハラ夫の対処法は以上の通りですが、対処をするにあたっても、モラハラの証拠を握っておくことが重要です。モラハラの証拠としては、まず、モラハラの事実を証明するために以下の証拠を集めましょう。

モラハラ現場の録音・録画

モラハラの現場を録音または録画してください。直接的な証拠として非常に有効です。

日記によるモラハラの記録

いつどこで何をされたのかを詳細に記録してください。日記は毎日つけているものほど重視されますので、モラハラを受けていない日でもその日あったことを記録しておくことをオススメします。

メールやLINEのデータのバックアップ

メールやLINEでもモラハラを受けているなら、その内容についてバックアップをとりましょう。

書類やメモの保存

書類やメモでモラハラの指示を受けている場合には、それらの保存しましょう。後に捨てるよう指示されるかもしれませんので、コピーをとって別に保管しておくことをオススメします。

 

次に、モラハラの時期や損害を受けたことを証明するために以下の証拠を集めましょう。

病院に行き、診断書を入手

心療内科や精神科に行き、うつ病などの診断を受けた場合には、診断書を作成してもらいましょう。

誰かに相談

既に紹介した配偶者暴力相談支援センターや、弁護士に相談をし、その日相談をしたことを書面にしてもらったり、自分で書面にしたりしましょう。

 

kubota
中途半端にモラハラ夫への対処をしようとすると、それがモラハラ夫の怒りの原因になって、モラハラがエスカレートすることもあります。自分だけで対処するにも限度がありますので、弁護士など専門家と連携しつつしっかりと取り組む必要があります。