N国・立花議員vs小西議員の名誉毀損訴訟の見通しを弁護士が解説

1 なにがあったのか

NHKから国民を守る党の党首の立花孝志の動画でのいわゆる「虐殺」発言について、小西ひろゆき議員が以下のツイートをしました。

立花議員は、小西議員に対して、上記ツイートに関する議論の場を求めましたが、小西議員からの回答がなく、いまだ実現に至っておりません。そんなさなか、立花議員は、上記ツイートが立花議員に対する名誉毀損であるとして、訴訟を提起するとの報道がありました。

2 訴訟の見通しは?

(1)小西議員のツイートは不法行為の要件を満たしている

今回立花議員が予定している訴訟は、名誉毀損を理由とするものです。つまり、立花議員は小西議員の上記ツイートにより名誉を毀損されたとして、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償などの請求をおこなうことが想定されます。709条の条文を確認しておきましょう。

民法第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

不法行為の要件については、①故意又は過失、②権利又は法益侵害、③損害の発生、④因果関係の4つとなります。

このうち、今回の訴訟では、①故意でツイートをしていることは明らかですし、③損害として精神的苦痛を受けたことによる慰謝料を観念できることについても問題はありません。

さらに、参議院議員である立花議員が参議院でのルールである参議院規則に違反していることを指摘する内容のツイートは、立花議員がルールを守らない人だとの印象を一般人に与えるものです。そうすると、品性や信用といった人格的価値についての社会的評価を下げるものとして名誉毀損に該当し、②権利侵害が生じていることになります。

(2)小西議員は反論可能

709条の要件を満たすということで、一見、小西議員は不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになりそうですが、そういうわけではありません。小西議員のツイートは、立花議員の発言内容という事実をもとにした意見を述べているというものです。このような意見については、以下の要件を満たせば不法行為責任を免れます(最高裁平成9年9月9日)。

①「その行為が公共の利害に関する事実に係」ること(事実の公共性)、
②「もっぱら公益を図る目的」であったこと(目的の公益性)
③「意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明」がされたこと(前提事実の真実性の証明)
④「意見ないし論評としての域を逸脱したものでない」こと

小西議員のツイートは、立花議員の発言内容が参議院議員としてふさわしいものなのかを問う内容になっておりますので、①や②の要件は満たしているといえます。また、小西議員のツイートは、毎日新聞社のTwitterアカウントによる立花議員の「虐殺」発言に関するツイートをリツイートする形でおこなわれたものです。立花議員の発言の趣旨はともかく、立花議員が動画で虐殺に言及したことは確かであって、そうすると③の要件を満たすことは難しくはありません。さらに、小西議員のツイートは、立花議員の発言が参議院議員の規則に違反するという内容のツイートであって、何か立花議員の人格を否定したり、あざ笑ったりするような内容が含まれているわけではありませんので、④の要件を満たしています。

(3)訴訟の見通しについてのまとめ

以上のように、709条の要件自体は満たしますが、小西議員が意見・論評の抗弁という反論に成功できる可能性が高いです。すなわち、立花議員が予定している訴訟においては小西議員がかなり優位な状況にあるといえます。そのため、訴訟活動に大きなミスがない限りは、小西議員が勝訴することになるというのが今回の訴訟の見通しになります。

ただし、立花議員は、勝訴が目的というわけではなく、メディアに報道させることが目的だとするならば、立花議員が小西議員を被告として予定している訴訟には大きな意味があります。訴訟を提起したという事実が報道されることは濃厚だからです。その意味では、立花議員は、今回予定している訴訟の結果自体はあまり気にしていないのかもしれません。

解説は以上の通りですが、民事上の名誉毀損についてもっと詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

民事上の名誉毀損とは? 慰謝料の金額はどれくらい?弁護士が詳しく解説します