ストーカーに対する警告とは?ストーカー規制法について解説します

1 ストーカー規制法とは?

ストーカー規制法の正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」です。平成12年にできた法律で、ストーカー行為やつきまとい行為を規制しています。

ストーカー規制法ができる前は、ストーカー行為自体を処罰することはできませんでした。しかし、ストーカー行為が殺人事件などの重大事件に発展することが社会的に問題となり、ストーカー規制法ができるに至りました。

ストーカー規制法が処罰の対象とするのは、大きく分けると、①ストーカー行為と②禁止命令に違反するつきまとい等の行為です。以下では、それぞれの言葉の意味について確認することにしましょう。

2 ストーカー規制法で禁止される行為

(1)ストーカー行為とは?

ストーカー規制法が規制の対象としているのは、「つきまとい等」と「ストーカー行為」です。まずは、ストーカー行為について確認しておきましょう。

第18条 ストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

ストーカー行為は、1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科される犯罪行為です。ストーカー行為の意味については、2条3項に定めがあります。

第2条3項 この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第一項第一号から第四号まで及び第五号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。

要するに、ストーカー行為とは、つきまとい等の行為を繰り返す場合をいうとされています。そのため、つきまとい等の行為の意味を知る必要があります。

(2)つきまとい等とは?

つきまとい等の意味については、2条1項に定めがあります。
第2条1項 この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
三 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
八 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。

とても長い条文なので丁寧に確認していきましょう。

第1に、恋愛感情や恋愛感情が満たされなかったことに対する恨みの感情を満たす目的での行為であることが要件となっています。ストーカーは交際を求めたり、離婚後に復縁を迫るためにおこなわれることが多いので、それに合わせた形の要件になっています。

第2に、一号から八号のいずれかにあてはまらなければなりません。それぞれ例を挙げてみます。

1号 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住所等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。

・尾行してつきまとう
・通勤・通学途中などで待ち伏せをする
・自宅や職場などに押しかける
・自宅や職場などの附近で見張る

2号 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

・帰宅直後に「おかえりなさい」と電話やメールをする
・その日の行動や服装などを電話やメールで告げる
・「お前をいつも監視しているぞ」などと告げる

3号 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。

・拒否しているにもかかわらず、面会・交際・復縁を求める
・贈り物を届けて、受け取るように求める

4号 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

・家の前で大声で「バカヤロー」などと言う
・車のクラクションをうるさく鳴らす

5号 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。

・無言電話をする
・拒否しているのに何度も電話をかけたりメールをする

6号 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

・動物の死体を自宅や職場に送りつける
・自動車に糞尿などをつける

7号 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

・Twitterなどで名誉を傷つけるような悪口を投稿する
・目の前で「ヤリマン」などと名誉を傷つけるようなことを言う

8号 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。

・わいせつな写真を送りつける
・電話などで卑わいな言葉を告げる

以上の第1と第2の要件にあてはまるものが「つきまとい等」です。

(3)つきまとい等をするとどうなる?

以上のつきまとい等の行為は、ストーカー規制法3条により禁止されています。

第3条 何人も、つきまとい等をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならない。

ストーカー規制法3条に違反する場合には、つきまとい等を禁止する命令を出すことができます。

第5条1項 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、第三条の規定に違反する行為があった場合において、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、その相手方の申出により、又は職権で、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、次に掲げる事項を命ずることができる。
一 更に反復して当該行為をしてはならないこと。
二 更に反復して当該行為が行われることを防止するために必要な事項

つまり、公安委員会は、つきまとい等をする者がさらにつきまとい等をするおそれがあると認めるときに、つきまとい等を禁止する命令を出すことができるとされています。

そして、禁止命令違反は犯罪とされています。

第20条 前条に規定するもののほか、禁止命令等に違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(4)処罰の対象となる行為まとめ

ここまでストーカー規制法で禁止される行為を丁寧にみてきましたが、分量が多くて頭がこんがらがっているかもしれませんので、処罰の対象となる犯罪行為をまとめておきます。なお、ここまでに解説していなかった類型も出てきます。

ストーカー行為1年以下の懲役または100万円以下の罰金(18条)
禁止命令違反のストーカー行為2年以下の懲役または200万円以下の罰金(19条1項)
禁止命令前のつきまとい等と禁止命令後のつきまとい等を合わせるとストーカー行為と評価できる場合2年以下の懲役または200万円以下の罰金(19条2項)
禁止命令違反のつきまとい等6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金(20条)

3 ストーカー規制法による救済を受けるためには

(1)警告の申出

公安委員会は、つきまとい等をする者がさらにつきまとい等をするおそれがあると認めるときに、つきまとい等を禁止する命令を出すことができるとされていることについては、上で確認した通りです。

そのほかに、ストーカー規制法には、「警告」という制度があります。

第4条1項 警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長(以下「警察本部長等」という。)は、つきまとい等をされたとして当該つきまとい等に係る警告を求める旨の申出を受けた場合において、当該申出に係る前条の規定に違反する行為があり、かつ、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、当該行為をした者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、更に反復して当該行為をしてはならない旨を警告することができる。

つきまとい等の被害者が警察署でつきまとい等の被害を申告し、警告を求めることで、さらにつきまとい等が繰り返される恐れがある場合に、警察のほうから加害者に対してつきまとい等をしてはならないとの警告をおこなうことができるとされています。

警告を求めるためには、認印を持参して最寄りの警察署などに相談に行き、「警告申出書」を提出します。警告申出書には、以下の内容を記載します(ストーカー規制法施行規則第1条、別記様式第1号)。

①申出人の住所・氏名・性別
②つきまとい等をした者の住所、氏名、人相、体格、特徴、服装等
③つきまとい等の行為の態様及び目的と思われる事項
④その他参考事項

(2)禁止命令の申出

公安委員会は、つきまとい等をする者がさらにつきまとい等をするおそれがあると認めるときに、つきまとい等を禁止する命令を出すことができます。被害者の申出がなくても公安委員会が単独で禁止命令を出すことができるのですが、基本的には、被害者の申出によりつきまとい等の被害が発覚し、禁止命令を出すかどうかを検討することになります。

禁止命令を求めるためには、認印を持参して最寄りの警察署などに相談に行き、「禁止命令等申出書」を提出します。禁止命令等申出書には、以下の内容を記載します(ストーカー規制法施行規則第4条、別記様式第4号)。

①申出人の住所・氏名・性別
②つきまとい等をした者の住所、氏名、人相、体格、特徴、服装等
③つきまとい等の行為の態様及び目的と思われる事項
④その他参考事項

禁止命令申出書が提出されると、その後の処理は3つに分かれます。

  • 禁止命令を出す
  • 仮の命令を出す
  • 禁止命令も仮の命令も出さない

仮の命令とは、緊急の必要があると認められる場合に、加害者の意見を聞く手続きをすっ飛ばして、先に禁止命令を出してしまうというものです。禁止命令を出す場合には、先に加害者の意見を聞く手続きをしなければなりませんが、仮の命令ではそれをとばせるので、より早く禁止命令を出すことができるのです。

(3)援助の申出

つきまとい等やストーカー行為の被害にあった初期の段階では、住所や連絡先もわからなかったり、どのように対応すべきかわからない場合も多いと思います。そのような場合には、警察本部長等の援助を申し出ることができます。援助を申し出ることにより、援助が相当と認められる場合には、以下の援助を受けることができます。

  • 被害防止交渉を円滑に行うための必要な事項の連絡
  • ストーカー行為等をした者の氏名および連絡先の教示
  • 被害防止交渉に関する事項についての助言
  • 被害防止交渉をおこなう場所としての警察施設の利用
  • 被害の防止に資する物品の教示または貸出し
  • 警告、禁止命令等または禁止命令等有効期間延長処分を実施したことを明らかにする書面の交付
  • 被害を自ら防止するための措置の教示
  • その他

援助を求めるためには、認印を持参して最寄りの警察署などに相談に行き、「援助申出書」を提出します。援助申出書には、以下の内容を記載します(ストーカー規制法施行規則第12条、別記様式第10号)。

①申出人の住所・氏名・性別
②ストーカー行為等をした者の住所、氏名、性別
③受けたい援助の内容
④その他参考事項

4 ストーカーなどの被害にお悩みの方へ

ストーカー行為等の被害は放っておくと重大な被害を生むことになりかねません。実際にも、ストーカー行為から殺人事件に発展したようなケースも存在します。ストーカー行為等の被害にお悩みの方は、警察署に相談に行ったり、弁護士に相談するなどして、早めの対策を立てるようにしてくださいね。その際に、この記事がお役に立てば幸いです。