刑事裁判の流れをわかりやすく解説します

1 刑事裁判の全体像

ドラマなどで刑事裁判を見たことがあるという方はいらっしゃると思いますが、実際の刑事裁判を見たことがある方は少ないのではないでしょうか。そこで、今回は、実際の刑事裁判の流れを解説していくことにします。なお、今回解説するのは通常の刑事裁判手続です。重大事件では冒頭手続の前に公判前整理手続という手続が入ってきます。

まずは、刑事裁判の全体像をご覧ください。おおよそこのような流れで刑事裁判が進んでいきます。

  •  冒頭手続
    • 人定質問
    • 起訴状朗読
    • 黙秘権の告知
    • 罪状認否
  • 証拠調べ手続
    • 冒頭陳述
    • 証拠調べの請求
    • 証拠の取り調べ
    • 被告人質問
  • 論告
  • 弁論
  • 判決

2 冒頭手続

(1)人定質問

人定質問(じんていしつもん)とは、裁判官が被告人に対し、氏名・年齢・職業・住所・本籍を尋ねる手続です。これから刑事裁判を進めるにあたって、被告人とされて出頭している人が起訴状に書かれた人と同一人物であるかどうかを確認するための手続です。

住所や本籍を忘れて答えることができない場合には、裁判官が起訴状に書かれている住所や本籍を読み上げて、「さきほど読み上げた住所・本籍でお間違いないですか?」などと尋ねます。そのため、もし住所等を忘れていても問題はありません。

(2)起訴状朗読

検察官が起訴状に書いてあることを読み上げます。ここで読み上げられるのは、公訴事実、罪名、罰条です。公訴事実、罪名、罰条といってもわかりにくいですが、いつ、どこで、被告人が何をして、どういった犯罪行為にあてはまるのかといった事柄のことだと理解してください。

たとえば、以下の表のような文章が読み上げられます。

公訴事実
被告人は、令和元年〇月〇日、神戸市〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号コンビニエンスストア〇〇先路上において、友人であるAに対し、手拳で同人の顔面を3回殴打する暴行を加え、よって、同人に口腔内出血の障害を負わせたものである。
罪名および罰条
傷害   刑法204条

(3)黙秘権の告知

裁判官が被告人に、黙秘権があることを告げます。おおよそ、裁判官は被告人に対し、次のようなことを述べます。
被告人には黙秘権があります。言いたくないことは言わなくても構いません。この法廷で被告人が言ったことは被告人にとって有利な証拠となることがありますし、不利な証拠となることもありますのでご注意ください。

(4)罪状認否

被告人が検察官の朗読した起訴状の内容に対して意見を述べます
起訴状の内容に間違いがなければ、
起訴状の内容に間違いはありません。

と言えばいいですし、間違っていると思えば、たとえば、

私はAを殴ってはいません。
と言えばいいです。その後、弁護人が被告人の罪状認否に補足する形で意見を述べます。たとえば、
被告人と同意見です。被告人はAを殴っておらず、無罪です。
などと言います。

3 証拠調べ手続

(1)冒頭陳述

検察官が、被告人の経歴等、犯行に至る経緯、犯行の状況等の項目ごとに、事件の全体像がみえるような形で、証拠により証明する事実を明らかにします
その後、弁護人も同様の冒頭陳述をおこないます。

(2)証拠調べの請求

まず、検察官が証拠を請求し、これについて弁護人が意見を述べます。刑事訴訟法326条の同意の対象となるような証拠、すなわち被害者の供述調書など誰かの発言が書面化されている証拠の場合、弁護人の意見は次の3つのいずれかになります。
①同意
②不同意
③しかるべく
同意をした場合は、基本的には請求した証拠が採用されます。つまり、その証拠を取り調べて、判決を作成する際の資料となります。不同意の場合には、検察官はその証拠の請求を取り下げて、証人尋問を請求するのが一般的です。すなわち、被害者の供述調書が不同意とされたなら、被害者を証人として証人尋問を請求します。
しかるべくというのはわかりにくいですが、「こちらとしては積極的に賛成するわけではないが、裁判所が採用するなら従う」といった程度の回答です。この場合も、基本的には請求した証拠が採用されます。
他方で、凶器などの証拠物、懸賞、証人尋問、鑑定に関する証拠調べの請求の場合、弁護人の意見は基本的には次の3つのいずれかになります。
①異議なし
②しかるべく
③不必要(ゆえに異議あり)
「異議なし」と「しかるべく」の意見の場合は事件との関連性も高い場合が多く、基本的には証拠として採用されることが多いです。一方で、不必要の意見の場合は事件との関連性と必要性を吟味して裁判所が証拠採用するかどうかを判断することになります。
検察官からの証拠の請求と弁護人からの意見が述べられた後、今度は弁護人が証拠を請求します

(3)証拠の取り調べ

採用された証拠を取り調べます。書面については読み上げる形で、凶器などの証拠物については提示する形で取り調べます。
また、証人については証人尋問という形で、検察官と弁護人と裁判官が証人に対してそれぞれ質問をし、その回答が証拠となります。検察官の請求した証人であれば、
①証人の人定質問
②証人の宣誓
③検察官の主尋問
④弁護人の反対尋問
⑤検察官の再主尋問
⑥裁判官の補充尋問
といった流れで証人尋問が進行します。なお、再反対尋問というのも裁判所の許可があれば可能になります。
証人の宣誓は証言台に用意された紙を読み上げる形でおこなわれます。証言台に用意された紙には、おおよそ、次のような内容が記載されています。
宣誓 良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。
証人が証人尋問の際にわざとウソをつくことは、偽証罪(刑法169条)という犯罪行為です。気をつける必要がありますね。

(4)被告人質問

被告人について、証人尋問とほとんど同じ方法で質問・回答のやり取りをします
証人は宣誓をする必要がありましたが、被告人は宣誓をする必要がありません。これは、被告人は自分の身を守るためにウソをつくことがあるという前提で制度設計されているからです。ウソをついても仕方がないと考えられているのです。
ただし、ウソをつくと他の証拠との関係で矛盾が生じてしまって、発言の信用性を下げてしまう可能性があります。被告人には黙秘権がありますので、ウソをつくよりは黙っていた方がいいかもしれませんね。

4 論告・弁論・判決

(1)論告

検察官が、法廷で明らかになった事実を含めて、事件のあらましと被告人の犯した罪をまとめて述べます。検察官が考えるストーリーが披露されるのです。
そして、検察官は、最後に、
被告人には、懲役〇〇年を求刑します。
などと、被告人に下すべき量刑を裁判所に対して求刑します。

(2)弁論

弁護人が、論告とは異なる部分を述べたり、被告人に情状酌量の余地(有利な部分)があることを述べたりします。これにより、被告人が犯罪を犯していないことや、被告人にはより軽い刑がふさわしいことを説きます。

(3)判決

最後に、裁判所が論告・弁論やそれまでの法廷でのやりとりを踏まえながら、判決を下します

kubota
刑事裁判の流れは以上です。弁護人がいなければ刑事裁判を進めることができない事件も多いですが、そうでなくても弁護人がいることは非常に心強いですね。もしご自身や身内が逮捕されてしまった場合には、弁護士に相談してみてくださいね。