Q&A 刑事裁判で「異議あり!」をいえるのはどんな場面?

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刑事裁判で「異議あり!」をいえるのはどんな場面ですか?
①証拠調べに関し法令違反がある場合、②証拠調べに関し相当でない場合、③裁判長の処分に法令違反がある場面の3つです。
逆転裁判というゲームでは、弁護人や検察官からガンガン「異議あり!」が飛び交います。しかし、実は、実際の裁判では「異議あり!」をいえる場面は限られています。すなわち、刑事訴訟法上、異議を出せるのは、次の場面に限られるのです。
  • 証拠調べに関し法令違反がある場合(刑事訴訟法309条1項)
  • 証拠調べに関し相当でない場合(刑事訴訟法規則205条1項)
  • 裁判長の処分に法令違反がある場合(刑事訴訟法309条2項)
このうち、証拠調べに関し相当でない場合については、証拠調べに関する決定に対してはできません。つまり、証拠決定、証拠調べの範囲・順序・方法を定める決定には、相当でないことを理由に異議を出すことはできないのです。
また、裁判長の処分に法令違反がある場合については、裁判長の法定警察権に基づく処分(刑事訴訟法288条)と裁判長の訴訟指揮権に基づく処分(刑事訴訟法294条など)に対するものに限定されます。
ところで、異議を出せる場面としてみなさんがイメージするのは、証人尋問の場面ではないでしょうか。証人尋問にはさまざまなルールがあるため、異議を出せる場面も必然的に多くなります。証人尋問でしてはいけないとされているのは次の尋問です。
  • 誘導尋問
  • 誤導尋問
  • 威嚇的または侮辱的尋問
  • 重複尋問
  • 意見を求める尋問
  • 議論にわたる尋問
  • 直接経験しなかった事実についての尋問
  • 伝聞供述を求める尋問
それぞれ解説していきますね。
誘導尋問

誘導尋問とは、質問者が希望しまたは期待している答えを暗示する質問をいいます。たとえば、

証人は令和元年〇月〇日午後3時頃、神戸市〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号のJR三ノ宮駅でAがXをナイフで刺すところを見ましたね?

という質問は誘導尋問にあたります。

こうした誘導尋問は、主尋問では原則として禁止されます。なぜなら、これを許してしまうと、証人が認識・記憶していることを法廷の場に証言として出すことによって真相に近づいていくという証人尋問の意味が失われてしまいます。

誤導尋問

誤導尋問は、証人が認識・記憶していることとは異なった証言をする危険性が高い誘導尋問のことをいいます。たとえば、犯人らしき人物の特徴が被告人の特徴と一致しているのかどうかが重要な争点だったとすると、まだ証人が犯人らしい人の特徴について何にも証言していない段階で、

証人が神戸市〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号のJR三ノ宮駅で上は茶色の革ジャンパーで下はジーパンの男をみたのは何時頃ですか?

という質問は誤導尋問にあたります。たとえば、証人が「15時頃です。」と証言すると、証人が三ノ宮駅で上は茶色の革ジャンパーで下はジーパンの男をみたということになってしまいます。これでは、証人が意図せず場所や特徴について自分の記憶と異なることを証言してしまうおそれがあるのです。

威嚇的または侮辱的尋問

威嚇的な尋問や侮辱的な尋問については文字通りの意味です。たとえば、

証人は一度見た人の特徴をすぐに忘れてしまうくらい馬鹿なのですか?

という質問は侮辱的な尋問にあたります。これらの尋問が禁止されている理由は、威嚇的な尋問は証人が委縮してしまって証言がねじ曲げられてしまうおそれがありますし、侮辱的な尋問は証人に質問をして証言という形で証拠を法廷に提示するという証人尋問の趣旨から逸れていることにあります。

重複尋問

重複尋問は同じことを複数回尋問することをいいます。たとえば、上は茶色の革ジャンパーで下はジーパンの男は何をしていましたか?と尋ねた後に再度

上は茶色の革ジャンパーで下はジーパンの男は何をしていましたか?

と質問することは重複尋問にあたります。限られた時間の中で尋問をおこなう必要がありますので、重複尋問を禁止しています。

意見を求める尋問

意見を求める尋問も文字通りの意味です。たとえば、

証人が男を目撃したのが午後8時、そして死亡推定時刻は9時ですから、私は被告人に犯行が可能だと思いますが、証人はいかがお考えですか?

と質問をすることは意見を求める尋問にあたります。意見を求める尋問が禁止されるのは、証人尋問はあくまで証人が見聞きしたことを事実として法廷に提示するものであって、証人に意見を求める場ではないからです。

議論にわたる尋問

議論にわたる尋問も文字通りの意味です。たとえば、

被害者が最後に残した言葉の意味について、証人Bはダイングメッセージの一種とおっしゃってますが証人はどのようにお考えですか?

と質問をすることは議論にわたる尋問にあたります。意見を求める尋問と同様の理由により禁止されています。

直接経験しなかった事実についての尋問

直接経験しなかった事実についての尋問とは、たとえば、

Aさんは被告人が被害者を殺害するところを目撃したのですね?

というように証人が経験したことではなく、証人以外の者が経験した事実を尋ねる質問のことを指します。証人尋問はあくまで証人自身が見聞きしたことを事実として法廷に提示する場であって、証人以外の人の見聞きしたことを質問する場ではありません。

伝聞供述を求める尋問

伝聞とは又聞きのことをいいます。たとえば、
Aさんは「被害者が被告人に対して『早く金を返せコラ』と言っているのを聞いた」と言っていたのですね?
と質問することは伝聞供述を求める尋問となります。又聞きは言い間違いや記憶ミスなどの誤りが生じやすいので、この場合は直接聞いたAさんを証人尋問して証言をしてもらうべきだと考えられているのです。