2021年8月時点 おすすめの基本書は?

はじめに

今回は2021年8月時点でのオススメの基本書を紹介します。この記事を最後まで見ることで、司法試験の合格者がどういう視点で基本書の善し悪しを判断しているかがわかります。また、この記事を参考にすることで基本書選びで無駄に時間を使わずに済むようになります。

なお、おすすめの基本書を紹介とともに、疑問点を調べるにあたって使いやすい本も紹介します。つまり、勉強を進める上でたくさんの疑問点が出てきますが、その疑問点を解消するために関連する部分のみ読むという辞書的な使い方をするのにおすすめの本も紹介します。

1 憲法

  • 基本書
    • 憲法学読本 第3版 安西 文雄、巻 美矢紀、宍戸 常寿
  • 辞書
    • 憲法Ⅰ 第5版 野中 俊彦 、中村 睦男、高橋 和之、高見 勝利
    • 憲法Ⅱ 第5版 野中 俊彦 、中村 睦男、高橋 和之、高見 勝利

憲法学読本は、非常にコンパクトなのに意外と網羅性が高いです。たとえば、政教分離の近時の判例の分析に関する記述など割と突っ込んだ記載もあります。基本書選びにあたっては、基本書を読んでいても答案は書けないことに留意する必要があります。これは憲法以外の科目についても同様のことが言えますが、憲法については特にあてはまります。そうだとすると、基本書を読む時間をできる限り短くして、どんどん演習問題をしたほうがいいので、コンパクトであることは強みの1つと言えるのです。

ちなみに、芦部先生の憲法もおすすめですが、判例についての意識がより強いのは憲法学読本ですね。

2 行政法

  • 基本書
    • 基本行政法 第3版 中原 茂樹
  • 辞書
    • 行政法Ⅰ 第6版 塩野 宏
    • 行政法Ⅱ 第6版 塩野 宏
    • 行政法Ⅲ 第4版 塩野 宏

正直、基本書は定評のあるものであればなんでもいいというのが本音ではあります。ところが、行政法に関しては基本行政法が一歩抜きんでていると思います。基本行政法は判例を簡略化した事例が設問化されていて、それに対してしっかりと解答の道筋を示してくれています。つまり、行政法の答案の書き方がわかる本なのです。

設問なしで情報量の多いものが好きなら櫻井先生・橋本先生の行政法(通称サクハシ)をオススメしますが、合格に近づけるのは基本行政法だと思います。

3 民法

  • 基本書
    • 民法(全)潮見 第2版
  • 辞書
    • 民法の基礎1 第5版 佐久間 毅
    • 講義 物権・担保物権法 第3版 安永 正昭
    • プラクティス民法 債権総論 第5版補訂 潮見 佳男
    • 基本講義 債権各論Ⅰ 第3版 契約法・事務管理・不当利得 潮見 佳男
    • 基本講義 債権各論Ⅱ 第3版 不法行為法 潮見 佳男
    • 家族法 第4版 窪田 充見

民法(全)は民法の基本書の中では圧倒的にコンパクトです。その割に網羅性が高いこともおすすめポイントの1つです。この本はわかりやすいとまでは言えないけど、よくまとまっているという印象を受けます。実は、何気に具体例も豊富だったりします。

民法はできる限り早く全体像を頭に入れておくことが重要となります。たとえば、不法行為がわからないと権利濫用がわからないなど、あの部分がわからないとここの意味がわからないということが民法ではよくあります。その意味ではコンパクトにまとまっているというのはこれ以上ない利点と言えるでしょう。

1冊でまとまっている本で選ぶなら、民法(全)かLECの択一六法の二択だと思います。しかし、択一六法は予備校本ですので、基本書では民法(全)をおすすめします。

4 会社法

  • 基本書
    • 会社法 第5版(LEGAL QUEST)  伊藤 靖史、大杉 謙一、田中 亘、松井 秀征
  • 辞書
    • 会社法 第3版 田中 亘

リーガルクエスト会社法は非常にわかりやすいです。会社法は無味乾燥なテキストが多い中で、割と味わい深い基本書です。この本は設問が付いており、その考え方を示してくれています。まさに隙のない本と言えるでしょう。会社法は条文と向き合いつつ飽きずに勉強し続ければ得意になれる科目です。この本はずっと付き合っていける基本書だと思います。

ちなみに、高橋先生ら4人で書いている本は説明が丁寧ですが、かなり分厚いという難点があります。

5 民事訴訟法

  • 基本書
    • 民事訴訟法 第3版 長谷部 由起子
  • 辞書
    • 新民事訴訟法 第6版 新堂 幸司

長谷部先生の民事訴訟法は網羅的だし、理由付けがしっかりしています。メリハリのついた基本書と言えるでしょう。民事訴訟法は要件効果だけでなく、違反した場合に裁判所がどう対応すべきかを含めて学習する必要があります。この本はその部分についてもしっかりと記載があります。

ちなみに、リーガルクエスト民事訴訟法もおすすめではありますが、かなり分厚いという難点があります。

6 刑法

  • 基本書
    • 刑法 第3版 山口 厚
  • 辞書
    • 基本刑法Ⅰ総論 第3版 大塚 裕史、十河 太朗、塩谷 毅、豊田 兼彦
    • 基本刑法Ⅱ各論 第2版 大塚 裕史、十河 太朗、塩谷 毅、豊田 兼彦

山口先生の刑法は刑法の中ではコンパクトな基本書です。学説の記載は最小限度にとどめているのが素晴らしいです。刑法は学説を勉強しだすと沼にはまってしまってなかなか抜け出せません。どの科目でもそうですが、特に刑法では学説の勉強はほどほどにして問題演習をすべきです。その意味で、この本は最適解だと言えます。この本は判例の掲載数が豊富で整理の仕方も秀逸です。

7 刑事訴訟法

  • 基本書
    • 刑事訴訟法 第6版(有斐閣アルマ) 田中 開、寺崎 嘉博、長沼 範良
  • 辞書
    • 判例講座 刑事訴訟法〔捜査・証拠篇〕 川出 敏裕
    • 判例講座 刑事訴訟法(公訴提起・公判・裁判篇)  川出 敏裕

刑事訴訟法アルマは非常にコンパクトでわかりやすいです。刑事訴訟法は判例が特に重要ですが、これを基本書でカバーしようとすると非常に分厚くなってしまいます。判例は判例集などでカバーすればいいので、基本書はコンパクトにまとまっているものを選ぶべきです。その意味でこの本はベストだと思います。

ちなみに、リーガルクエスト刑事訴訟法もおすすめですが、やや分厚いという難点があります。

結語

最初にも記載しましたが、基本書を読んだからといって答案が書けるようになるわけではありません。そうすると、基本書を読むということに多くの時間を割くべきではないことは明らかです。それよりも答案を書いたり、答案構成をしたりなどのアウトプットに多くの時間を割くべきです。

ですので、分厚い基本書を選んだり、何冊も基本書を読んだりすべきではないと言えます。また、基本書を選ぶのに時間をかけるのは本末転倒です。ぶっちゃけ、定評のある本なら何でもいいのです。基本書選びは合否にほとんど影響しません

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