ロースクールの講義は試験の役に立つか

はじめに

ロースクールの講義は試験の役に立つのでしょうか。この疑問は、ロースクールに通っていない受験生はもちろんですが、ロースクールに通っている受験生でも抱くことがあります。今回は、この疑問について深堀していこうと思います。

結論的には、役に立たないことが多いけど、役に立つこともあると言えます。では、詳しく検討していきましょう。

1 ロースクールの講義の中身

既にご存知かと思いますが、ロースクールの講義はソクラテスメソッドを用いて進められることが多いです。ここでいうソクラテスメソッドとは、教員が学生に対し一方的にレクチャーするものではなく、教員と学生とが対話をしながら進めていく双方向的なものであるとされています。しかし、その実態は、教員が学生をあててケースブックなどの設問の回答をさせるというものであり、本来教員が解説すべき事柄をクイズ形式で学生に解説させているだけの講義となってしまっている傾向があります。このような講義は、広く浅い講義になりがちなので教員の講義科目に対する深い理解を講義に反映することが難しく、また学生にとっては予習負担が増大するので、教員にとっても学生にとってもいいことはありません。

もちろん、例外的に素晴らしい講義もあります。私は京大ローに所属していましたが、山本敬三先生の民法や土井先生の憲法の講義は素晴らしい講義でした。司法試験の受験勉強を進める上でも一定程度役に立ったと感じています。また、会社法の講義で用いたテキスト「会社法事例演習教材」は会社法の問題点を網羅的に取り扱っており、試験対策でも有用でした。しかし、それ以外については司法試験に役立ったかと言われると微妙なところです。

2 自学自習との比較

ロースクールの講義は試験対策のために実施している講義ではありません。そのため、ロースクールの講義を予備試験や司法試験に役立てるためには、ひと工夫が必要となります。つまり、論文試験対策としては、講義で得た知識を答案に反映できるような形で整理する必要があります。このことから、講義を試験に活かせるかどうかは受講者側の工夫次第という側面もあるのです。

ロースクールの講義の多くは予備試験・司法試験で出題される科目を扱っていることから、まじめに受講することで何かしら得ることはあるでしょう。しかし、ロースクールの講義が役に立つかどうかは、その講義時間を自学自習にあてた場合と比較する必要があるでしょう。もう少し正確に言えば、その講義を受講する時間とそれを試験対策用にアレンジする時間とを合わせた時間分を自学自習にあてたときよりも役に立つと言えなければ、ロースクールの講義が役に立つとは言い難いのです。なぜなら、わざわざ高い授業料を払って受けている講義が自学自習に劣ってはならないのは当然だからです。

このように考えると、ロースクールの講義はかなり不利な状況に追いやられます。ほとんどの場合、最初から試験対策に特化した教材を用いて自学自習を進めていった方が試験対策としての効率性が高いと言えるからです。その意味で、役に立たないことが多いと言えます。

3 試験合格後とロースクール生活

では、ロースクールは全く役に立たないかというと、私はそうではないと考えています。私は、ロースクール生活での膨大な予習量に耐え抜くことができる人は、実務家になってからも膨大な仕事量をこなす素養があると思います。つまり、私は、ロースクール生活は実務家の適性を問う試金石になっていると考えています。

実務家になると日々大量の仕事に追われます。そのような仕事をこなせるかどうかは実務家としての適性を左右する重要な要素と言えるでしょう。そして、仕事をこなせるかどうかは可処分時間をいかに有効に利用するかが大切です。ロースクール生活においても、限られた時間の中で多数の科目の予習をこなし、講義を受講し、しかも試験対策まで行う必要があるのですから、時間を有効に利用する能力が問われます。

私はロースクール生活での膨大な予習量に耐え抜くことができなかったため、ここでいう実務家の適性がありませんでした。そして、案の定、弁護士になってからも受任する仕事の量を抑えなければ仕事を回しきれない状態になりました。もちろん、可処分時間を有効に利用できるかどうかはロースクール生活以外であっても試すことが可能ですが、法律に関連する事柄を高速処理しないといけないという意味でロースクール生活は実務家の適性を試すのにふさわしい場だと思います。


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