はじめに
予備試験・司法試験の論文式試験では文章で答案用紙に解答しなければなりません。答案にはさまざまなルールがあります。それらのルールの中には、守らなければ零点になってしまうものもあります。そのため、答案でやってはいけないことを知っておくことは受験生としての義務と言っても過言ではありません。この記事では、答案でやってはいけないことをまとめるとともに、受験生が疑問を持ちがちな事柄について1問1問形式で回答しています。それでは、論文式試験の答案でやってはいけないことから見ていきましょう!
1 左側を空ける
答案の左側を大きく空けて文字を書き始めてはいけません。以前は、予備校の模範答案の中にそうした形式をとったものがあったため、それを真似して答案の左側(答案用紙の5分の1くらい)は空白の答案がありました。しかし、司法試験の採点実感において以下の指摘がなされました。
「常に多くの文字数分も行頭を空けていて(さらには行末も空けている答案もある。),1行全てを使っていない答案が,多く見受けられた。答案は,レジュメでもレポートでもない。法科大学院の授業で,判決原文を読んでいるはずである。それと同様に,答案も,1行の行頭から行末まできちんと書く。行頭を空けるのは改行した場合だけであり,その場合でも空けるのは1文字分だけである。」
つまり、文字は字下げという例外を除いて答案の左端から書き始めなさいという指摘です。あまりひどい場合には受験者を特定できるような答案(=特定答案)として零点にもなりかねませんので、大げさに行頭や行末を空けるのはやめておきましょう。とはいえ、字下げで2文字分空いたり、左側が少し空いたら特定答案になるというわけではなく、極端なもののみ特定答案の可能性があるのみなので、あまり神経質になる必要まではありません。
2 一行おきに書く
答案で行を空けてはいけません。たとえば、令和3年司法試験予備試験に関するQ&Aには次の通り記載されています。
A 1行おきに空けて解答を記載した答案は,特定人の答案であると判断される答案として無効答案と判断される場合があります。
3 シャーペンで書く
シャーペンで答案を書いてはいけません。答案への記載は黒インクのボールペン又は万年筆に限られています。令和3年司法試験予備試験に関するQ&Aには次の通り記載されています。
注意していただきたいのは、以前は青のボールペンでも許容されていたのですが、現在では青のボールペンは使用できなくなっていることです。また、上記Q&Aには以下の記載もありますので、極細の筆記具は避けるのが賢明です。
4 訂正のために文字を塗りつぶす
訂正のために文字を塗りつぶしてはいけません。正式な方法ではないため、特定答案と認定されるおそれがあります。文字を削除したい場合、同一の行内にとどまるときには削除したい文字に二重線を引きます。複数の行に渡るときには削除したい部分に大きく×をつけたり、スラッシュを引きます。
これに対して、文字を追加したい場合には、既に記載された文章の間にニョキッと下向けの【 { 】を書いて追加する箇所を明示し、そこに追加する文字を記載します。この場合、余白部分に追加の文字を書きたくなりますが、令和3年司法試験予備試験に関するQ&Aは以下の通りそれを認めていませんので注意してください。
A 解答欄の枠外の着色部分及びその外側の余白部分に記載した場合には,当該部分は採点されません。解答は,必ず,解答欄内に記載してください。
追加文字数が多くなる場合には、下向けの【 { 】の部分に「末尾に追加分を記載。」とし、末尾に「追加分」と記載した上で追加したい文字を書きましょう。
5 文字を小さくしすぎる
小さすぎる文字で答案を書いてはいけません。これは伝聞ですが、採点委員は答案用紙を実際の4分の1サイズにコピーしたものを読んで採点を行うようです。そうすると、もともと小さい文字がさらに小さくなって判読が困難になります。この点に関しては、司法試験の採点実感において以下の指摘がなされました。
「従来から指摘しているとおり,試験の答案は,人に読んでもらうためのものである。司法試験はもとより字の巧拙を問うものではないが,極端に小さな字や薄い字,潰れた字や書き殴った字の答案が相変わらず少なくない。各行の幅の半分にも満たないサイズの字を書いているのでは小さすぎ,逆に,全ての行を文字で埋め尽くしている答案も読みづらい。」
つまり、大きすぎてもダメだし、小さすぎてもダメだということです。目安としては枠の8割程度を使って漢字を書き、ひらがなは漢字よりやや小さくすると文字のサイズ的には読みやすい答案になります。
6 漢字を略字で書く
漢字を略字で書いてはいけません。たとえば、「権利」の「権」という感じを「木又」というように略して書いてはいけません。予備試験や司法試験では正式な文章を書くことを求められているからです。この点に関しては、司法試験の採点実感において以下の指摘がなされました。
「法律家が書く文章ということでは,さらに裁判書や準備書面は,当然と言えば当然のことであるが,他人に読んでもらうものである,という前提がある。自分が手控えとして残しておくメモとは異なるものであり,答案も,それらと同じであるべきであるから,その観点からの注意も要る。「債ム」などという略記や略字,時的因子を示す際に「平成」を示す記号であると見られる「H」という略記などは,いずれも自分のみが読むメモであるならばあり得ることであるが,答案などにおいては好ましくない。」
つまり、略字はダメということなのです。漢字だけでなく、「平成」を「H」を略すことについても言及されていますので注意してください。これに対して、長い法律名を略したい場合は「〇〇〇〇法(以下、「法」と記載する。)」などと断りを入れた上で略すことは問題ありません。
7 これってどうなの?答案Q&A
決まりがあるわけではありません。もっとも、こだわりがないのであれば、公文書にならって第1、1、(1)、ア、(ア)、a、(a)を使用すべきです。
そのような決まりはありません。とある採点委員は、「『以上』を書く余裕があるなら他のことを書け」と言っていたので、書く必要はないと思います。もっとも、修習中の起案では末尾に「以上」を書きなさいと教わるので、予備試験・司法試験でも書いても問題はないように思います。
一般的によく使われる接続詞を使うべきです。平成22年度民事訴訟法採点実感19頁では以下のように述べられています。
また、平成24年度民法採点実感9頁でも以下のように述べられています。
しかし、したがって、そこで、よって、なぜなら、そして、まず、次に、そのため、以上より、などの一般的な接続詞を使いましょう。
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