最適な勉強方法は目的によって異なる

はじめに

予備試験・司法試験の合格発表後のこの時期には、多数の合格者が自身の勉強方法を公開します。また、受験生側から合格者に勉強方法を尋ねる機会も多くなります。ここでは、合格者の勉強方法に追随することの危険性を述べたいと思います。

2 勉強方法と目的

(1)問題点―合格者の勉強方法から得られるもの

合格者の勉強方法から得られるのは、合格者がその勉強方法により合格したという事実に関する知識と、そのような勉強方法が存在するという知識のみです。それをまねたところであなたが合格するという保証はありません。さらにいえば、その勉強はあなたにとって不要かもしれませんし、学習段階によっては有害である可能性すらあります。

(2)解決法―目的を理解する

上記のような弊害を回避し、合格者の勉強方法を一資料として有効に活用するためにはどうすればよいのでしょうか。それは、合格者がそのような勉強方法をとったことには理由があるということを理解することです。つまり、勉強方法はそれだけで意味のあるものではなく、目的との関係で意味を持つのです。

例えば、ある合格者Aは自身の弱点が短答にあることを認識し、短答の点数を向上させるために薄い基本書を何回も読み返したとしましょう。しかし、あなたの弱点が論点抽出にあるとすれば、このような勉強方法をとる必要性は低くなります。逆に、あなたの弱点がAと同じであれば、Aと同じ勉強方法を採用することに意味を見出すことができます。

(3)小括

以上より、目的を看過して合格者の勉強方法に追随することは高度の危険を伴います。仮に勉強方法を合格者に尋ねるのであれば、「どういう勉強方法を採用していたか」と「なぜそのような勉強方法を採用したのか」をセットで尋ねる必要があるでしょう。

2 具体論

さて、目的と勉強方法の密接関連性及び目的の重要性を理解したところで、目的の定め方をみていきましょう。勉強方法の決定の際には目的の決定を先行させるべきであるのは勉強方法の位置づけから明らかでしょう。では、その目的はどのように決定するのでしょうか。この目的は自己分析を踏まえて決定すべきものであって、大なる目的に沿うものでなければなりません。わかりづらいと思いますので、図式化してみますね。

大目的→(傾向性)
   →自己分析→小目的→勉強方法
<例>
司法試験に合格→(司法試験に向けられた勉強)
       → 短答が弱点→短答を強化する→薄い基本書をまわす

自己分析は、大目的を達成するにあたって自分に欠けているものは何かという観点から行います。司法試験の合格が大目的であれば、本試験の短答及び論文問題を時間をはかって解答することが自己分析に必要不可欠でしょう。また、他人に答案をみてもらうことも重要といえるでしょう。そうすることで、現在の自分に足りないものがみえてくるはずです。そうすると、小目的はその弱点の補強ということになるでしょう。そして、そのための勉強方法というのも限定されるはずです。さらに、小目的から導出される勉強方法は大目的の傾向との合致も求められます。

ここで、重大な問題は、司法試験の時期が決まっており、回数制限があるということです。ゆえに、勉強方法の決定には時間的な観点からの制約を伴います。例えば、その年の司法試験を受験するにもかかわらず、5月になってから、法学の基礎的な分野の理解が足りないことを理由に法学入門のテキストを読むのはいかがなものかと思います。これは、時期的に優先すべき他の勉強方法があるだろうとの考慮から、このような感想を抱くのでしょう。他にも、金銭的制約(本を買えない。予備校にいけない)や環境的制約(田舎でゼミを組めない)など、さまざまな制約が存在します。したがって、最終的な図は以下の通りになるでしょう。

大目的→(傾向性)
   →自己分析→小目的→勉強方法(傾向性と不一致)
            →勉強方法(傾向性と一致)→制約→採用
            → 勉強方法(傾向性と一致)→制約→不採用

3 結論

これだけ詰めていけば合格者の勉強方法を聞かずとも勉強方法はおのずと決まってくるのではないでしょうか。むしろ、合格者の方には、定期的に論文答案をみてもらったり、不要な書籍をもらったりするほうが有益でしょう。もっとも、人間ですから、他人のことが気になることはありますし、合格者としても自分のしてきた勉強方法を語るのに悪い気はしない(自分は正しかったという自己肯定感情に由来するはず)ですので、「合格者に勉強方法を尋ねるな」、あるいは「参考にするな」とはいいません。しかし、「合格者がしていた勉強法だから」という理由のみでその勉強方法を採用するのは控えたほうがよいでしょう。それは、上位合格者の勉強方法であっても同じです。

 


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