予備試験・司法試験で不合格になる人の特徴3選

はじめに

予備試験・司法試験に落ちる人には共通の特徴があります。もっとも、「それを知ってどうなるんだ!それより合格に役立つ情報をくれ!」と思うかもしれません。しかし、予備試験・司法試験に落ちる人の特徴を見ると、受験勉強にはさまざまな罠がはびこっていることがわかります。この記事を読むことで、受験勉強に潜む数々の罠をくぐり抜けることができるようになりますし、また、自分のやり方が間違っていないか確かめることができます。

はじめに結論を示しておきますね。予備試験・司法試験に落ちる人の特徴を3つ挙げるなら以下の3つだと分析しています。

  1. 答案を書かない
  2. 細かい内容にこだわりすぎる
  3. 丸暗記してしまう

では、それぞれについて見ていきましょう。

1 答案を書かない

予備試験・司法試験に落ちる人の特徴の1つ目は、答案を書かないことです。これはインプットとアウトプットの比率を誤るという失敗です。多くの受験生はインプットに偏りがちですが、そんな中でも頑なに答案を書かない人が一定数います。そんな人は以下のような言い訳をすることが多いです。

kubota
答案を書いていますか?
生徒
いえ、まだです。基礎知識が定着して答案を書けるレベルになったら書こうと思っています。
生徒
私もまだです。過去問が解けるレベルになったら書きます。

確かに、これらの言い分も正しい側面があります。基礎知識が定着した後のほうが論文学習の効率も上がるでしょうし、限りある過去問という教材を最も有効に用いるためには過去問を解けるレベル至ってからそれに取り組んだほうがよいのです。しかし、これらの言い分には大きな問題点があります。それは、答案を書かないと答案を書けるようにはならないということです。

たとえば、野球では、ずっと素振りをしていても、ピッチャーの球を打てるようにはなりません。実際にピッチャーの球を打つという練習をしてはじめてその球を打てるようになります。基礎知識の習得のための勉強は野球にいう素振りみたいなものなのです。それらの知識を使いこなすために答案練習をしなければなりません。過去問については過去問の答案を書くことで過去問を解けるレベルにもっていくのです。

しかも、基礎知識を使ってみることではじめて基礎知識の意味を理解できることが結構あります。ここで一例として僕の経験を挙げます。民法の不法行為の要件のうち「過失」は客観的注意義務違反(結果回避義務違反)を意味するというのは基礎知識です。しかし、「結果回避義務違反」が具体的にどういう状態のことを指すのかについてはあまりピンときていませんでした。これについては過失のあてはめを答案上で表現することではじめて自分の中で落とし込めました。このように、答案を書くことで基礎知識の理解が深まることもあるのです。

ここでアドバイスです。基礎講座が終わったらあるいは基本書一周終わったら、すぐに答案を書きはじめてください。テキスト見ながらでも構いません。早めに過去問にも手を付けてください。心配しないでも過去問はたくさんあります。答案を書くことで自分の実力のなさに自信を失うことがありますが、合格者は通った道です。答案を書くことから逃げずに頑張ってください。ちなみに、答案を書く練習をするのに判例百選講座がおすすめです。判例百選掲載の判例の事実を事案として用いているので、判例学習と兼ねることができ、一石二鳥ですね。

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2 細かい内容にこだわりすぎる

予備試験・司法試験に落ちる人の特徴の2つ目は、細かい内容にこだわりすぎることです。これは優先順位を誤るという失敗です。法律は学問の1つとして扱われています。そのため、深入りすればいくらでも潜っていけるような領域なのです。基本書は薄いもので300頁くらい、分厚いもので1000頁を超えます。その基本書のたった1~2行に対して数十頁~数百頁の論文があります。

さて、ここで計算をしてみましょう。細かい内容にこだわりすぎるとこのような勉強をしなければならなくなるはずです。

基本書1行よむ → 論文読む = 解読に1週間かかる ⇒ 4行読むのに1か月かかる

なるほど、時間がいくらあっても足りませんね。特に、刑法は学説上の議論が熱いです。たとえば、結果無価値や行為無価値など根幹部分で大きな対立があります。このような対立は哲学的な思想にもかかわっています。刑法の学説を学んでいるとついつい楽しくなってきます。

新しいことを学ぶのは楽しいです。これも僕の経験ですが、ロースクール既習の1年目のときどうしても法律の勉強が嫌になりました。そんな折に、マイケルサンデル教授の「これからの哲学の話をしよう」という本を読んだらめちゃくちゃ楽しく感じました。あまりに楽しかったので田中成明教授の「現代法理学」を読みました。これは法哲学の分野の本で、大変面白かったです。でも、司法試験の合格には一切役に立ちませんでした。法哲学は法律に関係のある事柄もたくさん載っているのですが、それでも役に立たなかったのです。法律の各科目について深入りするのもこれと同様に「関係あるけど役に立たない」という状態に陥ってしまいがちです。

結局、答案上に表現できるのは学んだことのうちのごくわずかでしかありません。なぜなら、予備試験や司法試験の本番では時間制限があるし、答案用紙の数も限られているからです。そうだとすると、答案上表現できることを中心に穴をなくしていったほうが効果的ということになります。

ここでアドバイスです。インプットが楽しくなりだしたら注意してください。この場合、試験の合格に必要な知識以上に知識を追い求めている可能性があります。インプットの勉強は基礎知識を定着させるものです。つまり、何度も同じことをやるからしんどいはずなのです。それでもやり続けると道が開けてきます。同じことの繰り返しから逃げずに頑張ってください。

3 丸暗記してしまう

予備試験・司法試験に落ちる人の特徴の3つ目は、丸暗記してしまうことです。これは現場思考のトレーニング不足という失敗です。同じ問題を解きすぎてもう解答を覚えてしまっているような人を指しています。受験歴が長い人に多い傾向ですが、全体の割合からするとあまり多くはありません。まずは、これまでの努力量に敬意を表したいです。これまで本当によく頑張ってきました。

その上で、この特徴を持つ場合の問題点を記載します。この場合の問題点は、自分の実力を計りづらいことにあります。つまり、過去問の解法の丸暗記をしてしまうと、当然にその過去問を解くことができます。しかし、それは自分の法律の力で問題を解いているのではなく、解答筋を覚えてしまっているから問題が解けるに過ぎません。そうすると、過去問は解けるのに試験本番では太刀打ちできないということが起こり得るのです。

そして話をややこしくするのが、以下の2つの事情です。

  1. 短答式試験は丸暗記で9割近く正答可能
  2. たくさんの問題について解法の丸暗記をして合格した人が、そうした物量作戦の勉強法を指導することがある

①の事情により、丸暗記戦略は有効と錯覚してしまうことがあります。受験歴の長い人が短答式試験で高得点をたたき出すのはこの事情があるからです。しかし、論文ではなかなか通用しないという問題点があります。

②の事情は、みなさんを惑わせます。確かに、圧倒的物量でも合格は可能ですが、非効率的です。みなさんにはもっと合格への近道を通ってほしいと思います。

ここでアドバイスです。自分の知らない問題を解いてみてください。それで正しく解答できるかを試すのです。そして、暗記する知識を絞ってください。必要以上に知識をつけることを避けて、現場で考えないと問題が解けない状態にもっていくことで現場思考力を鍛えましょう。受験においては何かを諦めることも大切です。覚えることを絞るのは不安と戦いになってしんどいですが、頑張ってください。

これらの特徴にあてはまってしまった場合には…?

さて、ここまで予備試験・司法試験に落ちる人の特徴をみてきましたが、実は僕も受験生時代は1と2の傾向がありました。つまり、僕は受験生時代に答案をあまり書きたがらなかったし、論証の細かい部分が気になって仕方がなかったのです。でも、多少インプットとアウトプットのバランスが悪くても問題ないし、細かい部分を煮詰めていく作業も多少なら大丈夫です。

試験本番までは意外と時間がありません。試験本番まであと何日残されているのか、そしてあと何回答案を書けるのかをしっかりと把握することが重要です。たとえば毎日1通答案を書いても1か月で30通しか書けません。そのため、あと何回答案を書けるのかをしっかりと数値化して、常に見えるようにしておいてください。そうすることで、勉強の内容が試験の合格から遠のくことは少ないはずです。上記3つの特徴のうち1つでも自分にあてはまるなと感じた場合には、方向性を微修正すればいい方向に向かいます。受験勉強は苦しいですが引き続き頑張っていきましょう。