短答対策は肢別本・体系別・年度別のどれを使うべき?

はじめに

予備試験おいて難易度的に最大の壁となるのは論文式試験ですが、合格率的に最大の壁となるのは短答式試験です。令和3年の予備試験では、1万1717人が短答式試験を受験し、これを突破したのは2723人しかいません。つまり、8994人の受験生が短答式試験で苦杯をなめたことになります。したがって、予備試験受験生は短答式試験についてもしっかりと対策をする必要があります。そして、対策を進めるにあたっては、どの教材を用いればいいのかという疑問が湧いてきます。過去問教材だけでも肢別本・体系別・年度別と3種類の教材があり、どれを選ぶかは悩みどころです。今回は、肢別本・体系別・年度別のそれぞれを比較し、どれを使うべきなのかを考察します。

一方、司法試験については短答式試験の受験者数が3424人で、その合格者は2672人と不合格になる人は少ないです。もっとも、司法試験については受験資格が制限されているため、記念受験(法律知識は足りていないがとりあえず受けてみること。)の人が少ないことから、短答式試験でもレベルの高い競争が繰り広げられています。そうすると、司法試験の短答式試験においても決して油断することはできませんので、本記事を参考にどの過去問教材を使うべきなのかを検討していただければと思います。

1 各教材の特徴

まず、各教材についての特徴を見ておきましょう。

肢別本体系別年度別
出題形式一問一答形式本番形式本番形式
問題の並び順体系順体系順本番と同一
分量特大

肢別本の特徴は、出題形式が一問一答形式になっている点にあります。中には少々無理をして一問一答形式にした問題もあります。

体系別の特徴は、本番形式の問題が体系別に並んでいる点にあります。さまざまな資格試験において最も一般的な問題集です。

年度別の特徴は、本番形式の問題が実際の本試験に出題された順番のまま並んでいる点にあります。

2 各教材のメリット・デメリット

次に、各教材のメリット・デメリットを見ておきましょう。まずは、肢別本です。

  • 肢別本のメリット
    • 隙間時間を利用できる
    • 知識を身に着けやすい
  • 肢別本のデメリット
    • 本試験の出題形式に慣れることができない
    • 1周するのに時間がかかる
    • 知識が過剰に求められる

肢別本は一問ごとに解いていけることから、隙間時間の利用に向いています。また、一問一問確実に潰していくことができるため、知識を身に着けやすいというメリットがあります。しかし、本試験の出題形式とは異なるため、肢別本を解くことで本試験の形式に慣れることはできません。また、問題数が多いため1周するのに時間がかかります。そのため、肢別本を使用するなら2周目以降は間違った問題だけを取り組むなどの対策が必要となります。さらに、本来であれば別の肢との兼ね合いで正誤を判断できていたような肢でさえ正確に判断することを求められるため、問題を解き進めるにあたって合格に必要な知識以上の知識が要求されるというデメリットもあります。

次に、体系別です。

  • 体系別のメリット
    • 本試験の出題形式に慣れることができる
    • 網羅的に学習できる
  • 体系別のデメリット
    • 1周するのにかなり時間がかかる
    • 隙間時間に用いるには不向き
    • 知識を身に着けるには工夫が必要

体系別は本試験の出題形式のまま問題文が掲載されているため、これを解くことで本試験の形式に慣れることができます。また、問題が体系別に並んでいるため、1周することで自然と網羅的に学習ができるようになっています。しかし、一問あたりにつき5つの肢の正誤を判断しなければならないことも多く、隙間時間に用いることには不向きな教材です。また、肢別本と同様、1周するのに時間がかかるので、使用するなら対策が必要です。さらに、全ての肢について正確な知識がなかったとしても正解に辿りつくことが可能であるため、知識を身に着けていくためには肢ごとに理由も含めた正誤判断をするなどの工夫が必要となります。

最後に年度別です。

  • 年度別のメリット
    • 本試験と同一の環境で解くことができる
    • 短時間で1周できる
  • 年度別のデメリット
    • 網羅性に欠ける
    • 隙間時間に用いるには不向き
    • 知識を身に着けるには工夫が必要

年度別は本試験の出題形式のままで、しかも本試験に出題された順番で問題文が掲載されているため、制限時間を設けて本試験と同一の環境で解くことも可能です。また、一年度あたりの問題数は比較的少ないので、短時間で1周できるというメリットがあります。しかし、その反面、一年度あたりの問題の網羅性には欠けるため、複数の年度の問題を解く必要性があります。また、一問あたりにつき5つの肢の正誤を判断しなければならないことも多く、隙間時間に用いることには不向きな教材です。さらに、全ての肢について正確な知識がなかったとしても正解に辿りつくことが可能であるため、知識を身に着けていくためには肢ごとに理由も含めた正誤判断をするなどの工夫が必要となります。

3 どのように選ぶべきか?

ここまでの分析から、どの教材も一長一短であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。そのため、あなたの状況と目的にあった教材を選ぶことが重要です。間違っても、「合格者が勧めていたから肢別本にする!」や「講師が体系別以外使うなと言ったからそうする!」といった選び方は避けていただきたいところです。

まず、可処分時間が少ない受験生については年度別がおすすめです。1周あたりに必要な時間が他の教材と比べて少ないので、何回もまわして正確な知識を押さえていくことが可能です。およそ3~5年度分について9割以上正解することができるようになれば短答式試験を確実に合格できるだけの実力が身に着くはずです。

次に、隙間時間を有効利用したい受験生や一問一答形式が好きな受験生は肢別本を選ぶとよいでしょう。その際には、全て解くのではなく優先順位の高いものから解くことで、効率よく合格に必要な知識を習得できるはずです。

最後に、受験にあたっての制約が少なく、かつ、教材にこだわりのない受験生は体系別がおすすめです。資格試験において最もスタンダード形式の過去問教材なので安心感があります。体系別を用いる場合には肢ごとに理由も含めて正誤判断をすることで、自分に足りていない知識を把握し、それをしっかりと補強するように心がけてください。これまでたくさんの合格者が用いた教材なので、しっかりとこなすことで確実に合格レベルの実力を身に着けることができるはずです。


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