なぜ答案を書かなければいけない?

はじめに

予備試験・司法試験の論文対策においては、講師や合格者から「答案を書きなさい」と言われます。とはいっても、答案を書くことは時間的にも精神的にも大きな負担を伴います。そのため、答案を書くべき理由がなければ答案を書かずに対策を進めたいところです。それでは、講師や合格者が「答案を書きなさい」と言う理由は何にあるのでしょうか。今回はその理由をみていくことにしましょう。

1 答案を書くことの意味

答案を書くのはアウトプットの勉強に位置づけられます。これに対して、基本書や予備校本を読んだり、基礎講座を受講することはインプットの勉強に位置づけられます。インプットとアウトプットでは、インプットのほうが学習効率は良いはずです。たとえば、基本書を2時間読めば40ページほど進めることができて法の下の平等などの章を読了することができますが、2時間使って答案を書いても法の下の平等のうちの投票価値の平等などの限られたテーマしか取り扱うことができません。それなのに答案を書くことの意味は何にあるのか気になりますよね。私は、答案を書くことの意味は以下の3つにあると考えています。

  1. 合格までの距離を確かめる
  2. アウトプットの練習
  3. 弱点探し

受験勉強は試験の合格を目的としています。そのため、合格までの距離を常に意識して取り組む必要があります。しかし、インプットをおこなっても合格までの距離を測ることができません。それは、合格に必要な知識が本当に頭に入っていて、それを使いこなすことができるかどうかがインプットだけではわからないからです。他方で、このことは答案を書けばすぐにわかります。答案を書いた上で合格者の答案と自分の答案を比べることで、自分の答案の欠けている部分を見つけることが可能となります。これにより、合格までの距離を測ることができます。

また、本試験では実際に答案を書かなければなりませんので、インプットにより習得した知識を答案に反映できるようにトレーニングをする必要があります。つまり、アウトプット自体の練習が必要となります。その練習として答案を書くことが重要となります。

さらに、アウトプットを通じて、インプットで培った知識を自分のものにできているかを確かめたり、自分に足りていないものを分析する必要があります。つまり、アウトプットにはインプットの穴を探すという弱点探しの役割があります。

このように、アウトプットの勉強には、アウトプット自体の練習になるほか、インプットの勉強の成果を確かめたり、今後のインプットの勉強の方向性を見定めるという目的があります。答案を書くことはアウトプットの代表的な勉強法なので、これを通じてインプットの質を高めることが重要です。まさに、インプットのためのアウトプットなのです。

2 答案を書くだけではダメ

アウトプットがインプットの質を高めるのだとすると、答案を書くだけで終わってしまってはもったいないです。もちろん、答案を書くだけでもアウトプットのトレーニングにはなります。しかし、答案を書くだけで終わってしまっては、合格までの距離の確認や、弱点探しが不十分なままとなってしまいます。答案を書いたのであれば、その答案を分析することが重要です。もっと言えば、自分だけで分析するのではなく、合格者や講師の添削を受けることが望ましいです。なぜなら、他人の添削を受けることで、自分では気づけなかった問題点について指摘を受けることがあるからです。

以下では、答案を書いた後にチェックすべき事柄を箇条書きしておくので参考にしてください。

  • 問題の事実関係を踏まえた問題提起をしているか
  • 条文(場合によっては判例)を出発点としているか
  • 法解釈は正確か
  • 論点ごとの分量配分は適切か
  • 事実を適宜評価してあてはめをしているか
  • 妥当な解決となっているか
  • 適切な表現をしているか

3 インプットとアウトプットのバランス

予備試験・司法試験の受験生は一般にインプットに偏る傾向にあります。そのため、一般的な受験生においては、いかにアウトプットの割合を増やせるかどうかが合格への鍵を握っていることが多いです。そこで、自分が一般的な受験生であるとの自覚がある場合には、意識的にアウトプットの割合を上げるようにしてください。

逆に、アウトプットだけ行っているのも非効率です。なぜなら、基本的にはインプットのほうが勉強効率が良いからです。アウトプットから逃げるのと同様に、インプットから逃げていても合格は遠のきます。定義やキーフレーズなど暗記が必要な事柄を暗記しないことは絶対に避けるようにしてください。

以上の通り、受験勉強にあたってはインプットとアウトプットのバランスを常に意識するように心がけてください。


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