はじめに
予備試験や司法試験は資格試験の中でも最難関と言われる試験です。そのため、凡人がこれらの試験に合格することなど到底できないと思われがちです。しかし、私は、凡人でもこれらの試験の突破は可能だと考えています。何よりも、私自身が凡人なのです。私は、天才でもなければ努力家でもありません。入った大学は偏差値40でしたし、勉強をしていてもすぐにスマホをいじってしまうような凡人の一人です。そんな私でも司法試験に合格できたのですから、他の凡人も合格できるはずなのです。
ただし、これまで数々の試験を勝ち抜いてきた猛者達を押しのけて凡人が合格を勝ち取るのは容易いことではありません。凡人が合格を勝ち取るには合理的な戦略が必要なのです。では、どのような戦略であれば凡人が合格を勝ち取ることができるのでしょうか。今回は、凡人が合格を勝ち取るための戦略を①基本戦略、②短答戦略、③論文戦略に分けて記載していきます。
1 基本戦略
凡人が予備試験の合格を勝ち取るための基本戦略は以下の4つです。
- 予備校をフル活用する
- 情報を一元化する
- 学習範囲を小分けにして管理する
- ひたすら弱点潰しをする
(1)予備校をフル活用する
予備試験の対策を進めるにあたって、独学で進めるか、それとも予備校を利用するかの選択肢があります。しかし、凡人が予備試験の合格を勝ち取りたいなら、事実上、予備校を利用するという一択しかありません。予備試験の試験科目となっている各法律は分量が多く、かつ、理解が難しいです。これらを独学で行うことは極めて非効率的です。優秀な受験生ですら独学は厳しいです。ましてや凡人が独学で予備試験の合格を勝ち取れるほど甘くはありません。そのため、予備校を利用して効率的に学習を進めていく必要があります。
次に、予備校のどの講座を受講するかという選択肢が生まれます。ここで、基礎講座は必ず受講して下さい。独学だと基礎の習得に少なく見積もっても1500時間は必要ですが、基礎講座を利用すればおおよそ1000時間程度で一通り習得できます。一日に10時間もの勉強をしている人でも、基礎講座の受講の有無で基礎の習得に50日以上の差を生むのです。一方で、論文講座については必須ではありませんが、なるべく受けたほうがいいです。それは、凡人が一人で答案の型を習得するのは多少の困難を伴うからです。答練についても必須ではありませんができる限り受けてください。なぜなら、強制的に答案を書く機会が生まれますし、他人に読んでもらってフィードバックを受けることが後々の対策に生きます。
このように予備校をフル活用して、効率よく予備試験の合格を目指しましょう。確かにお金がかかってしまうというデメリットはありますが、その分は法曹になってから取り返しましょう。
(2)情報を一元化する
予備試験の対策に使用する教材は最終的には一元化しましょう。つまり、各科目につき教材を1つ決めて、その教材を適宜加筆・修正・削除するなどして加工し、オリジナル教材を作ってください。そして、インプットの範囲をその教材に書かれていることだけに絞ってください。このように学習範囲を絞ることで、正確な知識を身に着けやすくしながら、必要以上に手を広げるのを防ぐことができます。
法律の世界は膨大です。予備校本や基本書に書かれていることは法律のほんの一部の事柄にすぎません。基本書でたった1行しか記載されていないことについて、何百ページもの論文があったりします。これは、手を広げようと思えばいくらでも広げることができることを意味します。しかし、凡人には手を広げているだけの時間は残されていません。情報を一元化し、一元化した教材をもって対策の範囲を絞って、それだけを徹底的に反復することで合格に必要な基礎力を習得するのです。
(3)学習範囲を小分けにして管理する
予備試験の対策は長期にわたります。短期合格者であっても勉強開始から予備試験合格までに1~2年の受験期間を要します。その間、ずっと勉強を継続するだけでも大変です。凡人が予備試験の合格を勝ち取るには、いかに継続できる環境を整えるかが鍵となります。ひとつは、予備校をフル活用することで基礎段階の学習や答案作成の強制的な機会とすべきことは前述の通りです。もうひとつは、学習範囲を小分けにして管理をすることです。
憲法・民法・刑法…と科目ごとに分けるだけでは分量が多すぎてげんなりしますし、完璧にできる気がしません。しかし、たとえば、憲法でも幸福追求権・法の下の平等・思想良心の自由・表現の自由⑴・表現の自由⑵といったように分野ごとに小分けして、一つの分野について短答過去問や論文過去問を解き、その分野については完璧を目指す場合にはどうでしょう。それくらいであればできるような気がします。そこで、小分けにした学習範囲ごとに対策を進めると、当然ながらその分野の過去問についても解けるようになりますので、過去問も解いていきます。そして、「できた!」という小さな達成感を積み上げていくことで、モチベーションの維持に繋げるのです。
(4)ひたすら弱点潰しをする
凡人が予備試験の合格を勝ち取りたいなら、効率よく学習を進めるべきです。そして、予備試験の合格に必要な点数を取得するにあたって、点数の稼ぎ頭である得意分野を伸ばすより、足を引っ張っている苦手分野を伸ばすほうが効率がいいです。これは、小中学校のテストを思い出していただければお分かりになると思います。80点を100点に伸ばす場合には、取りこぼしていた20点分を全問正解する必要がありますが、40点を60点に伸ばす場合には、取りこぼしていた60点分の何問かで20点分を確保できればいいのです。つまり、80点を100点に伸ばすより、40点を60点に伸ばすほうが遥かに簡単です。
以上より、自分の弱点となっている部分を徹底的に強化していくことが合格への近道であることがわかります。そして、弱点を潰すには、まず弱点を把握して、その後に弱点を克服するというプロセスが必要です。まずは、過去問演習等のアウトプットの勉強を通じて自分の弱点を把握してください。そして、弱点を把握したらインプットの勉強を通じて自分の弱点を克服してください。ひたすらこれらを繰り返すことで、効率よく学習を進めます。
(5)小括
ここまで述べてきた基本戦略を徹底することで、凡人が予備試験の合格を勝ち取るための基本条件が整います。もっとも、短答式試験と論文式試験とは性質の異なる試験なので、基本戦略以外にそれぞれについて個別の戦略を打ち立てておくことが必要となります。
2 短答戦略
短答式試験の戦略は、とにかく過去問で9割以上正答できるように取り組むことです。短答式試験では毎回の出題数が多いため、出題につき過去問との重複が生じます。そのため、過去問で9割以上正答できるようになれば、本試験でおおよそ8割程度の点数をとることができるようになります。本試験で8割程度の点数をとることができれば、ある程度余裕を持って短答式試験に合格することが出来ます(※)。本試験で8割以上の得点を狙って対策を進めることも可能ではありますが、それは非効率的なので凡人にはおすすめできません。
※予備試験の短答式試験はおおむね6割正解すれば合格できますが、一般教養についてはあまり対策に時間を割きたくないので、法律科目で8割得点し、一般教養は5~6割程度得点できるくらいの対策に留めるのが一般的かと思います。
3 論文戦略
論文式試験の戦略は、司法試験の採点実感で言うところの「一応の水準」の答案を揃えることです。「一応の水準」とは、配点100点の試験で57点~42点の答案を指します(※)。各年度各科目によってどのような記載をしていれば「一応の水準」となるのかは異なるものの、おおむね「合格レベルの受験生であれば誰しもが書くようなことを書いてはいるものの、出題趣旨との関係で不十分な箇所がある答案を指すもの」と理解してよいと思います。
野球で言えばホームランを狙わずに、ヒットを積み重ねるイメージで答案を作成します。つまり、条文(場合によっては判例)を出発点とし、正確な法解釈を行い、事実を適宜評価してあてはめを行い、可能な限り妥当な解決を心掛けます。これができれば一応の水準に達します。あとは、事案の特殊性に気づいた場合には、制限時間との兼ね合いで特殊性に触れるべきかどうかを検討した上で、触れる場合にも分量的に大きくなりすぎないように気を付けながら記載します。
とにかく、自分が沈まないようにしているだけで勝手に他の受験生が失敗して脱落していく試験なので、「一応の水準」の評価を確実に受けられるような答案を作成すべきなのです。
なお、口述試験については論文式試験までにとってきた戦略を継続すればよく、新しい戦略を必要としませんのでここまでの戦略を参考にして下さい。
※新司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について参照
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