1 法律のパーツを知る意味
さまざまな法律をながめると、法律の名前があって、目次があって、そこから条文がはじまって…というように法律のパーツは共通していることがわかります。こうした法律のパーツを知っておくと、法律を読み解くにあたって非常に役に立ちます。そこで、今回は、各法律に共通する法律のパーツについて学ぶことにしましょう。
2 それぞれのパーツについて
(1)題名
法律の正式な名前を指して「題名」と呼びますが、この言葉を使う機会はあまりありません。それよりも、法律をみたときに一番上に記載されている名称が正式な法律の名称であることが重要です。
たとえば、一般に「DV防止法」と呼ばれている法律の題名は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」だったりします。六法全書等の六法には題名で法律が並んでいますので通称と正式名称とが異なることがあるということを知っておかないと、今後、六法全書等の取り扱いで苦労するシーンがでてくるかもしれません。
(2)目次
条文数の多い法律には目次がつけられていることがあります。たとえば、日本国憲法では以下のような目次がつけられています。
- 前文
- 第一章 天皇(第一条~第八条)
- 第二章 戦争の放棄(第九条)
- 第三章 国民の権利及び義務(第十条~第四十条)
- 第四章 国会(第四十一条~第六十四条)
- 第五章 内閣(第六十五条~第七十五条)
- 第六章 司法(第七十六条~第八十二条)
- 第七章 財政(第八十三条~第九十一条)
- 第八章 地方自治(第九十二条~第九十五条)
- 第九章 改正(第九十六条)
- 第十章 最高法規(第九十七条~第九十九条)
- 第十一章 補則(第百条~第百三条)
民法や会社法など条文数の特に多い法律では、まずは目次をみて目的の条文がどのあたりにあるという目星をつけてから条文を探すことがあります。また、目次にざっと目を通すことで法律の全体像がわかるので、上手に使うと強力な武器になります。
(3)本則・附則・別表
法律の本体部分を本則、経過措置や施行期日などを定めた部分を附則といいます。附則といっても重要な情報が記載されていることがあることに注意が必要です。たとえば、消費者契約法の附則には次のような条文があります。
第1条 この法律は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行する。ただし、附則第三条及び第五条の規定は、公布の日から施行する。
(4)編・章・節・款・目
本則を内容ごとに整理するために、「編」「章」「節」「款」「目」が使用されます。このうち「編」が最も大きなまとまりで、「章」「節」と右にいくほど小さなまとまりとなります。たとえば、民法の目次の抜粋をご覧ください。
- 第三編 債権
- 第一章 総則
- 第一節 債権の目的(第三百九十九条―第四百十一条)
- 第二節 債権の効力
- 第一款 債務不履行の責任等(第四百十二条―第四百二十二条)
- 第二款 債権者代位権及び詐害行為取消権(第四百二十三条―第四百二十六条)
- 第三節 多数当事者の債権及び債務
- 第一款 総則(第四百二十七条)
- 第二款 不可分債権及び不可分債務(第四百二十八条―第四百三十一条)
- 第三款 連帯債務(第四百三十二条―第四百四十五条)
- 第四款 保証債務
- 第一目 総則(第四百四十六条―第四百六十五条)
- 第二目 貸金等根保証契約(第四百六十五条の二―第四百六十五条の五)
- 第一章 総則
まず、「債権」という「編」のまとまりがあることがわかります。次に、「総則」という「章」のまとまりがあり、その中に「債権の目的」、「債権の効力」、「多数当事者の債権及び債務」といった「節」のまとまりがあります。さらに、「多数当事者の債権及び債務」には、「款」というまとまりがあり、第四款の「保証債務」の中には「総則」や「貸金等根保証契約」といった「目」のまとまりがあります。
こういったまとまりは、今どこを学習しているのかを示す貴重な情報のひとつですので、意識をするように心がけてくださいね。
(5)条・項・号・イロハ・枝番
第5条1項 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
第5条2項 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
第220条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書
ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの
ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書
ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。)
ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書
第98条の2 意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、その法定代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない。
(6)前段・後段
とある条項の文章を複数の部分で区切る場合には、句点(「。」)で区切られます。文章が2つに区切られた場合、その前半部分を「前段」、後半部分を「後段」といいます。たとえば、次の条文をご覧ください。
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
このうち、「すべて国民は、個人として尊重される。」という部分が前段、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」という部分が後段にあたります。
(7)本文・但書
文章が区切られる場合でも、後段が「ただし」ではじまるときには、その前半部分を「本文」、後半部分を「但書」といいます。単に文章が並列しているわけではなく、本文部分が原則を、但書部分がその例外を定めていることが多いです。次の条文をご覧ください。
第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
このうち、「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。」という部分が本文、「ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。」という部分が但書です。民法93条は、本文で真意でない意思表示も有効であるという原則を定めつつ、一方で相手方が悪意有過失である場合には意思表示を無効とするとの例外を定めています。
(8)柱書
第111条 代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
一 本人の死亡
二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
このうち、「代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。」という部分が柱書です。代理権の消滅事由が1号と2号に列挙されています。
(9)括弧書
条文内に括弧が用いられている場合に、その括弧内の文章を「括弧書」といいます。括弧書には文言の定義が記載されていたり、例外が記載されていたりしますので注意が必要です。
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