基本書vs予備校本 どっちを選ぶべき?

はじめに

予備試験・司法試験の合格を目指すにあたってどの教材を使うかは迷いどころです。教材に関する疑問の中でも「基本書で学習を進めるべきか、それとも予備校本で学習を進めるべきか」という疑問は昔からずっと受験生を悩ませ続けました。

では、基本書と予備校本のどちらを選ぶべきなのでしょうか。この記事では教材に対する考え方や教材の選び方について一般的な解説をし、その上で基本書と予備校本のどちらを選ぶべきかという疑問に対し一定の回答を試みます。あらかじめ結論を記載すると、基本書でも予備校本でもどちらでも構わないので気に入ったほうを使えばいいけど、コロコロと教材を変えるのはやめておくべきということになります。

1 教材の位置づけ

予備試験・司法試験の受験生は各試験の合格を目的として受験対策を行います。そして、基本書や予備校本といった教材は受験対策を進めるにあたって中心的な役割を果たします。つまり、学習の初期段階では各科目の全体像や個別の制度を押さえるために基本書や予備校本を読み進めていきますし、学習の終盤においても疑問点や不明点の解消のために関連部分を読みます。

基本書や予備校本などの教材には以上述べた通りの役割がありますが、どの教材を選ぶかによって合否に影響が出るのであれば教材選びは慎重に行うべきです。しかし、それが合否に影響しないのであれば、教材選びに時間を費やすのは無駄に時間を費やすことに他なりません。

では、教材選びは合否に影響を及ぼすのでしょうか。答えは、定評のある教材を使用している限りは「NO」です。結局、定評のある教材であればその中に書いてある事柄に大差はなく、説明方法に若干の差があるにすぎません。もちろん、細かい部分に着目すれば多数の違いを見出すことは可能です。しかし、予備試験や司法試験の合否に影響を及ぼすかどうかという視点で見れば、そのような細かい部分で合否が決まっているわけではなく、どの本にも書かれてあるような基本事項で合否が決まっているので、大差はないと断言できるのです。ただし、独自説全開のマイナーな基本書や間違いだらけの予備校本を選ぶことは合否に影響を及ぼし得るため、「定評のある教材」という留保をつけています。

2 教材の選び方

さて、ここまでで定評のある教材を選べばいいということはご理解いただけたと思います。とはいっても、①定評のある教材とそうでない教材はどのようにして見分けるのか、②定評のある教材のうちどれを選ぶのかといった疑問が生じたのではないでしょうか。ここではこの2つの疑問に答えていきましょう。

まず、①定評のある教材とそうでない教材はどのようにして見分けるのかについては、売れ筋かどうかを見てください。たとえば、受験新報では過去に「合格者が使った基本書」という企画においてランキング形式で基本書を紹介しているため、これを見ることで定評のある基本書とそうでない基本書を区別することができます。また、予備校本のうち大型書店に行っても置いていないような本は避けるべきです(講座のテキストやレジュメを除きます。)。その予備校本が売れているなら少なくとも大型書店には置いてあることが推測されるからです。

次に、②定評のある教材のうちどれを選ぶのかについては、悩ましいところです。少し読んでみて気に入ったものを選んでもらって構いません。とりあえず、基本書と予備校本の一般的な傾向を羅列しておきますので、参考にしてください。

  • 基本書
    • メリット
      • 体系的理解を得やすい
      • 正確なものが多い
    • デメリット
      • 難解なものもある
      • 理由付けが不十分なものがある
  • 予備校本
    • メリット
      • 網羅的なものが多い
      • わかりやすいものが多い
    • デメリット
      • 誤りが比較的多い
      • 分厚すぎるものがある

この通り、基本書にも予備校本にもメリット・デメリットがあるので、基本書を中心に勧めながらわかりにくいところは予備校本で確認するなど、それぞれのデメリットを補いながら教材を使用していくのがいいと思います。

ちなみに、私のおすすめの基本書は以下の記事にまとめておりますので、興味があればご参照ください。

2021年8月時点 おすすめの基本書は?

3 一冊に絞らないといけない?

合格者の中には「一冊に決めてその本と心中するつもりで勉強しろ」というようなことを言う方がいます。これは、新しい教材が出るたびに教材をコロコロと変えてしまう受験生に対して警笛を吹く意味を込めているはずなので、誤りとは言い切れません。また、メインとして使う教材を決めるべきだという限度で賛同できます。しかし、どの教材にもメリット・デメリットが存在しますので、それを他の教材で補うことを禁止する必要まではありません。

私としては、メインとして使う教材と辞書的に使う教材とがあれば学習をスムーズに進められると考えています。受験生の可処分時間は限られていることから、大量の教材に手を出すことはおすすめできませんが、疑問が生じた際にすぐに調べられるようにしておくことは重要です。

なお、私は薄めの基本書を用いた基礎講座を提供しておりますので、基本書で学習を進めたい方は是非購入を検討してみてください。

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結語

教材選びは悩ましいですが、基本的には合否に影響を及ぼしません。合否を分けるのはアウトプットの質と量です。受験生は一般にインプットに偏りがちなので、答案練習などのアウトプットの回数を増やすことで合格に大きく近づくことができます。そのため、みなさんには教材選びで悩む時間をアウトプットに使っていただきたいところです。アウトプットの教材は答案の付いたものにしてくださいね。

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