法学入門5 「とき」と「場合」と「時」の違いと使われ方

1 はじめに

法律の条文を読み解くにあたっては、法律用語の意味や使われ方を知らなくてはなりません。法律用語の意味や使われ方を知らずに条文を読み解こうとすると、そもそも読み解くことができなかったり、間違った読み解きをしてしまうことになりかねません。

しかし、こうした法律用語の意味や使い方について教わる機会はそうそうありません。そこで、弁護士である私が、初学者向けに法律用語の意味と用法を解説していきますので、この機会にみなさんも法律の読み解きができるように法律用語を学びましょう!今回取り扱うのは「とき」と「場合」と「時」です。

2 「とき」の意味と「場合」の意味

「とき」と「場合」はいずれも仮定的な条件を表します。英語でいえば“if”の意味です。たとえば、次の2つの文章をみてください。

  1. 雨が降ったときは、ベランダに干してある洗濯物を部屋の中に入れます。
  2. 雨が降った場合には、ベランダに干してある洗濯物を部屋の中に入れます

この2つの文章はどちらも雨が降ると仮定した場合に洗濯物を取り込むことを意味します。

3 「とき」と「場合」の違い

「とき」と「場合」の違いは、その使い方にあります。同じ条文の中に大きな仮定的条件と小さな仮定的条件とがある場合には、大きな条件には「場合」を、小さな条件には「とき」を用いるのです。たとえば次の条文をみてください。

民法32条の2 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。

この条文は、「数人の者が死亡した」という大きな仮定的条件と「そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでない」という小さな仮定的条件を満たす場合に、同時死亡を推定しています。

4 「時」の意味

「とき」と同じ読み方の用語として「時」がありますが、その意味は異なります。「時」は時点を表す用語です。時期や時刻を表す場合に用いられることが多いです。

民法116条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

この条文は、追認が契約時に遡って効力を発生させることを定めています。契約締結時という一時点に着目していることがわかります。なお、この条文には「とき」と「時」が用いられていますので、使い方の違いを確認しておいてくださいね。

 

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「とき」と「時」は意味が違いますので、法文書上も使い分けが大切になります。たとえば、契約締結時や実行行為時など一時点を表す場合には「時」を用いて、日常用語の「場合」でも代用できる場合には、「とき」や「場合」を用いるようにしましょう。

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